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0時1分の欠落  作者: リョーシリキガク
午後編 愛

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20/24

20時 エキシビション

 一ノ瀬は保安省本部のルネサンス建築から、大通りへ飛び出した。

 冬宮の緑白を火炎瓶が照らし出し、広場へと面した正門には人々が押し寄せ、そこへ鋼鉄の巡洋艦が砲口を向けていた。川にかかる大橋が、凍てついた川面に影を落とす。

 対岸には灰色の監視塔。大通りをさらに進めば、スケート会場や劇場、絢爛なホテル、路地裏の花屋、そして水族館が、都の英華を歌う。

 彼女は歴史のただ中を駆け抜けた。砕けた石畳の割れ目、黒ずんだ壁面、火炎に焼かれた痕。その一つひとつが、街が歴史と共に生きた証を響かせていた。


 『レイグラードは溶鉱炉のように、都市全体が赤熱していた

すべてのものは変わりゆく。変わらぬものは、この川の流れのみである。』

——世界を揺るがした12日間


 民衆の暴動が最高潮に達した20時。

 川の合流地点、凍てついた氷面へ、たった一人、滑り込む少女の姿があった。


 街灯の代わりに浮かぶランプが氷を幻想的に照らし、その光の中で彼女の影が揺れる。

 群衆の視線が一斉に注がれ、燃え上がっていた革命の炎が、ほんの一瞬だけ静まりを見せた。


──私は滑る。自分の意思で、この国の皆んなのために。


 サン=サーンス《死の舞踏》が、どこからともなく流れ出す。


 音楽が彼女の身体を包み込む中で、彼女は思った。


 神宮の心だけは、私にも読めない。

 答えが分からないからこそ、自分の意志で、信じることを選びたかった。

 しかしそれは、都合よく形を変えて、自分の欠落を埋めようとしているだけなのだろうか。

 確かなのは、私は彼が欠けているからこそ愛したのだ。


 大勢の人々が橋の上からこちらを指さして立ち止まった。その背後、冬宮の方角からは大きな爆発音が聞こえてくる。


 心が見えないから、人は何かを信じる。

 未来を信じること。その行為に何か名前をつけるなら、私はそれを愛と呼びたい。

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