第87話:未来へ(その4)
皇帝は顔色ひとつ変えずに言った。
「群臣や世族たちが承知するまい」
智之は堂々と言い放った。
「父皇がお許しくだされば、兒臣には群臣や世族たちを黙らせる手立てがございます」
皇帝は興味を示した。
「どうするつもりだ?」
「彼らに嫡出の娘を皆、宮中に差し出させます。一年後、その中から太子妃を選びます」
皇帝の目が輝いた。どうやら長子はすでに朝堂の均衡をとる術の真髄を掴んだらしい。
焕之は父皇の態度が軟化したのを見て、さらに進み出て一言申し上げた。
「兒臣はこのような言葉を聞いたことがございます。『聡明さは天から授かりしもの、しかし優しさこそが選択である』と」
この時、皇帝は深く心を動かされた。
「良い言葉よ。『優しさこそが選択』とな。しかし我が子よ、お前のその娘が、果たして喜んでお前の太子妃になってくれるかどうか」
二人は皇帝の心が開かれたのを聞き取った。智之はこの上なく喜んだ。
「父皇、ご安心ください。兒臣が必ずや、彼女を心から我が李家に嫁ぎたいと思わせてみせます」
避難してきた皇帝は、上機嫌で御書房へと戻っていった。
群臣たちはこれを聞きつけて詰めかけたが、ただ一道の口諭を得たのみだった。
「太子妃はすでに人選あり。諸卿、引き上げよ」
大臣たちは団結して互いに探り合い、一体どこの家の嫡出の娘が太子妃に選ばれたのかと尋ねた。しかし、幾日も過ぎたというのに、まったく噂すら聞こえてこなかった。
太子妃が選定されたという知らせは瞬く間に都中に広まり、形ばかりの謹慎を課されていた麗美人でさえ、思わず太子を呼び寄せた。
智之は相変わらず麗美人に対しては敬意を払っていた。
「母上、兒臣をお呼びになるのは、何事でございますか?」
麗美人は降格され称号を剥奪されて以来、終日経文を書き写し、祈りを捧げていた。一見すると雲のようにのんびりと暮らしているようだが、実際は身を潜め、機会をうかがっているのである。
「お前の父皇は、どこの家の令嬢を太子妃に選ばれたのか?」
あの日、東宮で焕之は厳しく言い含めていた。晉蘭一が無事に東宮に嫁いでくるためには、口を閉ざしておけ、と。
結納の品が送られてしまえば、皆もはや妨げる力はない。
智之もまた波風を立てたくなかった。
「母上、新婦がお茶を捧げに参りましたら、その時にご覧くださればよろしいかと」
麗美人は不快に思った。
「私たち母子どの間に、他人のために心が離れるということがあってよいものか?」
智之はひどく頭を悩ませた。
「母上、焕之は私の同母弟で、母上の身から出た血肉でございます。過去のことはさておき、今後は焕之にもっと良くしてあげてください」
麗美人はついに激怒した。「その者の話はやめよ。あれが私から后の位を奪い、今また私を誰にでも虐げられる小さな美人に落としたのだ」
智之は争いを望まず、恭しく跪拝の礼をとるとその場を辞した。
背後から麗美人がどんなに叫んでも、彼は振り返らなかった。彼はついに悟ったのだ。母上は肉親の情よりも、むしろ権位を重んじるのだと。
数日後、彼は都を出て晉蘭一を尋ねた。
出発前、焕之は彼に妻を追う四字の秘訣を与えた――「死纏爛打」(しつこく食い下がれ)。
また三つの錦の袋を贈った。それぞれ、女性が怒った時の初歩的な対処法、再攻の対処法、最終的な対処法が記されていた。
智之は三つの錦の袋を見て舌を巻いたが、それでも弟の進言に従った。
ついに美人を手に入れると、彼はいても立ってもいられず、晉蘭一を連れて寧城へと急いだ。
医仙は一人娘が皇家に嫁ぐことを望まず、求婚の一行が寧城に到着する前に山を封鎖してしまった。
しかし、智之はとっくに予見していた。
だからこそ、晉初一が山の麓の入り口で道を塞いだ時、智之は普通の医家では手に入れ難い皇家の医術秘本を差し出したのである。
晉初一は秘本を抱えて大喜びで、恥ずかしげもなく何度も「良き義弟よ」と叫んだ。その後、浩浩蕩たる送聘の一行を率いて、師匠が一月かけて設計した新しい阵法を破り、一直線に山荘へと到着した。
大門の前に着くと、晉初一は孤本を手に入れた喜悦から覚め、自分はきっと師匠の怒りに耐えられないだろうと思い、さっさと逃げ出した。
門を開けに来た午時は、晉蘭一と智之を見るや、山荘に向かって大声で叫んだ。
「大変だ、晉初一が裏切ったぞ。晉蘭一を上げてしまった!」
晉蘭一は開け放たれた大門に手をかけて、腹を抱えて笑った。
午時は中に向かって叫びながら走っていくが、大門ははっきりと左右に開け放たれたままだった。
晉蘭一は確信した。
「この門が開いているのは、入れってことだよ。行こう!」
智之は晉蘭一について、岳父の休憩室の門の外まで歩いていった。庭にはすでに大勢の人が集まっていた。これらの人々は脇で真面目ぶって噂話をしており、その声は一向に小さくしようとしない。
「蘭一はあの男の見てくれに惚れたんだよ!」
「俺だって構わないぜ!」
「慎めよ、蘭一はもう手遅れだ。お前たち小娘は、この哀れな道を繰り返すでないぞ」
「体つきもなかなか良いな。蘭一より頭一つ分高く、手足がすらりと長くて、しかも蘭一より色白だぞ」
「太子は日に焼ける必要もないし、きっと全身すべすべで柔らかそうだな」
「蘭一は苦労するな。自分より色白の男に嫁ぐなんて、一生どれだけ『七子白』の薬粉が必要になるんだ?」
晉蘭一は、この大声での噂話の風潮には慣れっこになっているようだ。彼女は聞こえないふりをして、直接親父の部屋の戸を叩いた。
「父ちゃん、帰ったよ。門を閉ざして会わないって、どういうこと?」
部屋の中からは答えがないが、外はますます賑やかになる。
「言うまでもないさ。祖師様が戸を開けたら、娘は嫁いでしまう。戸を固く閉めておくに決まってるだろ」
「蘭一、お前、結婚に飢えすぎだろ。婚約者を連れて戸を蹴りに来るなんてな」
庭ではあれこれと騒がしい。师弟师妹たちは、三日以上ぶっ飛ばされていないようだ。
晉蘭一の両目は嬉しそうに三日月のように細められた。
「父ちゃん、お前の弟子や孫弟子たち、私がぶっ飛ばしちゃうよ!」
「蘭一のこの気性じゃ、嫁ぎ先に行ったら、やっぱりぶっ飛ばされるだろうな!」
「そうだ、そうだ!」
「あいつに毒粉をいくつか用意してやろうぜ!誰かがぶったら、その者を毒で殺してやれ!」
「良い考えだ、痒み止めの粉もいるか?」
「俺は新しく作り出した断腸九日散を持っている。丸九日苦しみ抜き、まったく解毒剤がない。宮中の争いに一番適している!」
智之は隣で面白そうに聞いていた。彼は今や、なぜ晉蘭一がこんな性格なのか、少しも不思議に思わなかった。
晉蘭一の二度の呼びかけは、無言の拒絶にあった。智之は進み出た。
「岳父様、私と蘭蘭が結婚した後、都で蘭蘭の名義で無料診療所を開き、世の中の医学の才能のある者を広く受け入れたいと思います。小婿は岳父様に夫子を務めていただき、ご生涯に学ばれたことを世に伝え教えていただきたく存じます」
部屋の中から二度の咳払いが聞こえた。晉蘭一が合図する。
「鉄は熱いうちに打て」
智之はさらに声を高めて続けた。
「岳父様がもし蘭蘭に会えなくなるのをご心配なら、宮中に勤めて太医院にご奉公ください。それに、皇宮には多くの医薬の孤本がございます。岳父様は宮中で珍しい書物を広くお読みいただけます。例えば、私は今、外科医学の孤本を持参しております。これには人体の五臓六腑に関する多くの詳細な記載と、治療法が記されております」
「祖師様、行きましょうよ、弟子たちも一緒に連れて行って」
「その本、まずちょっと見せてくれ」
「俺に、俺に!」
智之が言い終わるか終わらないうちに、多くの者が外科医学の本を求めて群がってきた。外の騒ぎがついに部屋の中の医仙を動かし、扉を開けさせたのだ。




