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第18話:この世界をもっと知りたい(その2)

煥之の孤児院記録は十歳だが、身長は既に170センチに達していた。

  

身長だけ論じれば、閔千枝は人生の高さで5センチ負けている。

  

「若者よ覚えておきなさい、思想の巨人たることこそが人生の到達点を決めるのよ」

  

煥之は閔千枝を一瞥し、少し気取って言った。「私は啓蒙期から大儒者・黎巫礼(れいふれい)に直々に教えを受けた。君子の徳と行いは既に模範たる水準だ」

  

閔千枝は彼に親指を立てた──その弁舌の見事さは、今すぐディベート部へ送り込みたいほどだ。黎巫礼の書物を数冊学んだだけで、二千年前に亡くなった歴史の巨匠から直伝を受けたと公言するとは。

  

この大風呂敷は国連規模ですら足元にも及ばない広大さだ!


「さあさあ、出かけよう」閔千枝は玄関でローヒールの靴を選んだ。

  

煥之は彼女がまた車を運転するのだろうと推測し、心底うんざりした。昨日の「鉄の箱」で味わった苦痛が反芻(はんすう)のように蘇り、ことさら鮮明だった。

  

ところが予想に反し、警戒態勢でずいぶん歩いたが、鉄の箱は見当たらない。

  

道中、閔千枝は周辺の環境を説明していた。「この別荘地には住人が数えるほどしかいない。でも警備員に顔を覚えてもらわないと、君は入れなくなるからね」

  

「ここは都心から少し離れてるけど、すぐ近くに大型ショッピングモールがあるの。団地を出て地下鉄で一駅だから便利よ」

  

「別荘群の後ろに山があるの。朝早く起きられるなら、登って運動するのも悪くないわ」

  

煥之は雲の中を歩くような気分だった。だが質問するつもりもない。どうせ数日もすれば、彼はこの地を去ってしまうのだから。


ちょうど15分歩いて、二人はようやく地下鉄駅に着いた。


煥之は独木舟に来てから遠出する機会がなく、地下鉄に関しては未知の世界だった。

  

恥をかくのを恐れ、彼は黙って閔千枝の影のように従った。

  

改札機の前で、閔千枝が小さな円板を鉄の箱に差し込むと、彼女の前を塞いでいた柵が自動で開いた。


この技術はまったく……神業の如く不思議だ。

  

煥之の顔は静かな水面のように平然としていたが、心は激しい嵐に揺れていた。


この世界への興味が日に日に増していく。見るもの聞くもの、全てが未体験の驚異に満ちている。


二人が地下へ降りた時、煥之はさらに息を呑んだ。


操作もせずに開閉する自動ドアは、彼にとって神業の領域だった。

  

疾風のように駆け抜ける地下鉄に、彼は異世界に巻き込まれたような衝撃を受けた。畏敬の念と少しの恐怖が入り混じっている。

  

閔千枝の「鉄の箱(車)」がもたらしたのが衝撃だとすれば、地下鉄が与えた知覚は圧倒的な破壊力だった。

  

彼が生涯誇ってきた学識の全てが、バリバリと粉砕され、木っ端みじんに押し潰されていく。

  

無論この時、煥之は飛行機やロケットといった更なる「巨大鉄塊」の存在を知る由もなかった。

  

地下鉄体験を経て、煥之は経済番組や歴史ドキュメンタリーだけを見続けるのはやめようと決意した。もっと現代の実践的な知識を学ぶ必要がある。


地下鉄でのわずか三分間が、煥之の人生に幾筋もの分岐路を生み、彼の学覇(がくは)としての生涯の幕開けとなった。

  

彼は十歳の童子らしい口調で数々の質問を投げかけ、閔千枝の胸に憐憫(れんびん)の情が渦巻いた。彼女は誤解していた──煥之が幼少期に愛情を受けず育ったため、常識を欠いているのだと。

  

その瞬間、閔千枝は決意した。良き姉となろう、と。衣食を保障するとともに、人生の滋味(じんせいのあじわい)をも体感させようと。

  

地下鉄を出ればショッピングモールだった。煥之がまだ地下鉄の衝撃から抜けきらぬうちに、眼前の光景に魂が抜けるほど震撼(しんかん)した。

  

まるで後頭部を鈍器で殴られたかのよう。脳裏を駆け抜ける波動は、全てが息を呑む驚異に満ちていた。

  

露天商(ろてんしょう)が一堂に集う豪華絢爛(ごうかけんらん)な建築物など、彼は見たことがなかった。


更に彼は、これほど多種多様な商品を見たこともなかった。この時代の衣服や靴には既に概念があったが、閔千枝が話していたドローン、奢侈品(ぜいたくひん)、化粧品、ダイヤモンド、眼鏡、スーパーマーケットには目を奪われ続けた。

  

閔千枝は火鍋にも連れて行った。この鍋は王朝時代のものとは違い、スープは痺れるような辛さだが、つけダレはごま油とニンニクだけの一皿。

  

鍋に入れる食材も、かつて彼の前に出されることのなかったものばかり。だがこの鍋で煮ると、実に痺れる辛さと深い風味が広がる。

  

彼は鴨の腸と鴨の血塊が最も好きで、閔千枝はそれを知って両方おかわりを注文した。

  

汗だくになりながら食べたが、非常に爽快だった。どうやら「エアコン」という装置が冷気を放つため、真夏の火鍋でも暑くないらしい。

  

閔千枝は鍋に向かって誓った──必ず煥之を深センに連れて行き新天地を開拓すると。美食ランキングの店を、一つ残らず制覇すると。


煥之は驚いて箸の上の鴨の血塊を落としそうになった。その瞬間、彼は閔千枝の本性を悟った──彼女の言動は大概がデタラメなのだ。さもなくば、誰が鍋に向かって誓いを立てるというのか?

  

関係性を理解すると、煥之は何事もなかったようにまた鴨の血塊を挟み、ごま油にくぐらせた。鴨の血塊はすぐに冷め、口当たりが熱くなく、香り高く滑らかだった。

  

閔千枝はトイレに立つふりをしてレジで支払いを済ませた。

  

煥之が女に奢られるのは初めての経験で、胸中に複雑な味わいが広がった。

  

しかし考え直せば、自分は閔千枝に養われている身、今後こうした状況が数えきれないほど起こるだろう。彼は静かに誇りを折り畳んだ。

  

夕刻五時、閔千枝が「昼食」と言う食事を終えた。


火鍋店を出ると、彼女は煥之をデパートのキッズフロアへ引っ張っていった。

  

店内に並ぶキャラクターものの服を見た瞬間、煥之は踵を返した。閔千枝が後ろで引き止めようとしても、全く効かない。

  

「私を愚弄しているのか?ここの服は全く…着られる代物ではない」煥之はエスカレーターを一人で降りられないため、少し距離を置いて立っていた。

  

閔千枝は悪趣味を否定した:「違う違う」

  

「十歳ってことしか頭になくて、身長を完全に忘れてたわ」彼女は即座にプランBに切り替えた。「よし、カジュアルブランドを探そう」

  

煥之はようやく怒りを鎮め、彼女について行った。

  

閔千枝の素顔は既に七割方の美人で、肌のトーンが明らかな欠点だが、少しお化粧すれば並みの女性を凌ぐ美貌となる。

  

一方の煥之は、その中性(ニュートラル)な美貌だけで接客の女性店員の胸をときめかせた。


さらに骨格のバランスが絶妙で、数着のカジュアルウェアを、無理やり仙人めいた趣に着こなしてしまった。

  

微笑まなければ、その気質はさらに冷冽(れいれつ)となり、禁欲的でありながら官能的でもあった。

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