表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不良桜  作者: 嫁葉羽華流
PR
10/11

九話目。

「火事だー!!」

「空き家から火が出たぞー!!」

「火を消せー!! 早く火を消すんだ!」

「消防はまだなのか!?」

「衛生兵ー!!」

等というような阿鼻叫喚のまぁ、騒がしかった。

そしてその中に相模喜助がいた。

「喜助! 何ぼ〜っとしてんだ!! はやくバケツリレーに参加しろ!!」

「兄貴、早く!!」

そういいながらも体を動かしていた。

そして喜助はぽつりと。

「一ノ瀬…」

一言つぶやいた。

「はぇ!?」

「喜助、何してんだ! さっさと火を…!」

言っている間にその辺にあったバケツの水を頭からかぶり、ずぶ濡れとなった。

黒く改造された学ランは水を吸い込み、余計に黒くなった。

「き、喜助!?」

「兄貴!?」

そういって二人が呆然としている中、喜助は燃えている家の中へと駆け込んでいった。


くらい。

くるしい。

こげくさい。

どこなんだろう。ここは。

なにがあったんだろう。わたしに。

きが…とおくなる…。

「…ちのせ…」

あれ…?

「…一ノ瀬…」

この声は…?


「一ノ瀬!!」

そうやって見つけたのは打撲傷がたくさんある一ノ瀬だった。

ひどく衰弱している。

その傍らにはもはや命はないのだろう、一人の人が転がっていた。

肉が焼ける、人の肉が焼ける、いやなにおいがあたりに漂っていた。

「大丈夫か!? 一ノ瀬!」

「喜助、くん…?」

「よ〜し、まってろよ…今すぐ助けてやっから…」

そういって喜助は適当に壁を選んでそこに体当たりをしていた。

一ノ瀬はかすむ視界でそれをみていた。

そして一言。

「…どうして…あなたはそんなに…」

「あぁ!?」

「どうしてあなたはそんなに、がんばれるの…? あかの他人のために…」

そして喜助は反応した。


「好きなやつのために体張らない男がどこにいんだよ!?」


そして一ノ瀬を抱き起こし、そのまま抱きしめた。

「一ノ瀬。今しかいえねーけど、言うぞ。…おまえが好きだ」

そういった後、また壁に体当たりをして通路を開こうとした。

その間、一ノ瀬は周りの炎のせいか、顔が赤くなっていることに気づいた。

しかし、そうじゃない、と言うこともわかった。

そうやっているうちに、壁を壊して通路を造った。

「一ノ瀬、脱出するぞ!」

そういってお姫様だっこをして、そのまま脱出通路に突撃した。そして、もう一歩で外というところで、

朱く燃えた木の支柱が、二人の頭上に落ちてきた。

「!!」

「ふんごらぁああぁあぁああああぁ!!!!」

喜助は渾身の力で一ノ瀬を外へ投げた。そして最後に一ノ瀬がみた喜助の顔は、



「……んお? ここはどこだ?」

「気づいたかい? 喜助君」

そこは、船の上だった。

死期石が船を棒状のもので押して、どこかに進めていた。

そう。自分がいるのは、川だった。

どこの川かはわからない。ただ。

寒く、暗く、そして、すべてが見えない。

そんな川を進んでいた。

「ああ…おれ、死んだんだな」

「うん」

「…なぁ、俺の気持ち、届いたかなぁ…あいつに」

「さぁて? どうだろうね…?」

「…俺ってさ、どっちに行くんだ?」

「…………」

死期石は答えなかった。

しかし、そんなことは意に介さず、喜助は話し続けた。

「おれってさ、人に迷惑かけてばっかりの人生だったんだよな。いろんなことで俺のために頭を下げられたし、いろんなことで、注意とか、怒られたりした。

正直、いきていてもさ、あんまりいいことはないと思ってたんだよ。てきとーにいきて、てきとーに死ぬ。それが、人間ってもんだろ? でもさ…」

死期石がみたとき、喜助の肩は震えていた。若干、涙声にもなっていた。

喜助はそのまま話し続けた。

「でもさ…俺、今初めて、生きてぇ、って思うんだ。この一週間、生きていることが苦痛なんて…っつーか、つまんねーなんて、思わなかったんだ。すんげー幸せだった。この一週間。……でもさ…




生きてぇよ。

向こうでで待ってる人がいるんだよ。

俺の帰りを、待ってる人がいるかもしれねーんだよ…」

死期石はそこまで聞いた後、おもむろに語り出した。

「じつはね、喜助君。

僕らはとんでもないミスを犯していたんだ。

君が死ぬのは一週間後、僕はそういったよね。

でも、日付のうちでは一週間はまだすぎてはいないんだ。

だから、この船が向かっているところは…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ