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40話 夜食と案内したい場所



広間にて、解放された郁人は、

ソファに座り、胸をさする。

横に座ったチイトは心配そうだ。


「……肺が苦しかった」

「パパ大丈夫?

あのジジイ掃除していい?」


子供がお菓子をねだるノリで、

物騒な発言をするチイト。


郁人は手でバツマークを作る。


「絶対にダメ!!」

「マスター。

ジークス殿は大丈夫でしょうか?」


斜め後ろに控えるポンドは

向かいのソファで倒れるジークスを見る。


「大丈夫。

寝たら酔いも覚めてると思う。

前もそうだったから」

「ユーだったな。

よくやった。

働きには、相応の報酬が必要だ」


郁人の後ろでは、

空間魔術から果物を取り出し、

ヴィーメランスは室内を飛ぶ、

ユーに渡した。


ーあれから、5人は塔に戻っていた。


拗ねたユーがジークスに対して、

動いたからだ。


尻尾の蛇を花に変え、ジークスを

花粉で眠らせる。


そして、背中のチャックから、

触手や蛸足等を出して、

無理矢理、引き剥がしたのだ。


あまりに突然の出来事に、

郁人は身をこわばらせた。


そんな事など露知らず、

ユーはジークスを引き剥がした後、

悠々と左胸ポケットに入っていった。


ユーの行動でお開きになり、

ポンドがジークスを運んで、

今に至る。


ユーはヴィーメランスから

果物を貰い、尻尾を揺らしてご機嫌だ。


口内で転がして、味を楽しんでいる。


ヴィーメランスも口にする、

人差し指と親指で、つまめる大きさの

白いものに、郁人は首を傾げる。


「初めて見るけど……それは?」

「これは"クリームフルーツ"

と呼ばれております。

とても甘く、甘味として

女や子供に好かれているものです。

よろしければ、

父上も1つどうぞ」


質問に答えたヴィーメランスは、

クリームフルーツを渡す。


「ありがとう」


郁人は受けとり、口に入れ噛んだ瞬間、

体がうずく。


(これ……

生クリームじゃないかっ!?)


果汁はまさにミルクそのもの。

濃厚でコクが深く、甘さも後に

引かない為、何度でも

食べられそうだ。


(もしかして……?!)


郁人はホルダーから、ライコに貰った

パンフレットを取りだし、広げる。


パンフレットには、

"クリームフルーツ"について

きちんと、書かれていた。


「パパはスイーツを作ろうとしてるの?」


覗きこみ、肩に頭を乗せるチイトが、

パンフレットを見ながら尋ねた。


「うん。

作ってみようと思ってさ」


後ろから覗きこんだヴィーメランスは

顎に手をやる。


「こちらに載ってある材料の

位置など把握しております。

明日、案内いたしましょう」

「ありがとう!助かるよ!!」


ヴィーメランスの言葉に

郁人は目を輝かせる。


「父上の助けになるのですから。

むしろ当然です」


胸に手を当てるヴィーメランス。


郁人はソファで倒れる

ジークスを見た後、尋ねる。


「……あと、キッチンと食材を

借りてもいいかな?」

「今ですか?

構いませんが、足りませんでしたか?」


不思議そうなヴィーメランスに

郁人は言い辛そうに説明する。


「その、ジークスはなにも

食べてないだろ。

だから、作ろうかと思ってさ」

「……あいつにですか」


ジークスの名が出た途端、

眉をあげた。


(やっぱり、嫌そうだな……)


ジークスを良く思っていないのは、

態度でわかっていた。

想像していた通りの反応だ。


「なんで、パパがジジイに、

作らないといけないの?!」


チイトが頬を膨らませ抗議した。


「お腹空かせたままはキツいだろ?

作ってもらうとしても、

バレたりしたら大変だし……」

「なら、俺も食べる!!

あいつにだけっていうのが嫌!!

だから、俺にも作って!!」


チイトは郁人の腕をとり、訴えた。

訴えに郁人は頷く。


「わかった。

じゃあ、酔っ払った件は

誰にも言うなよ。

また、穴を掘り出したら大変だし、

チイトが原因だからな。

勿論、酒を飲ませるのも禁止だ」

「……わかった。

俺、いい子だから約束する」


チイトは郁人の言葉に、

しぶしぶ頷いた。


「……父上」

「ん?どうした?」


声をかけられ、郁人が振り向くと

ヴィーメランスは不自然な程、

押し黙る。


「ヴィーメランス……?」

「……俺にもいいでしょうか?」


やっと口を開いたが、

声にいつもの自信満々さはない。


「俺も……父上の料理を……

その……食べてみたいのですが……」


口ごもらせながら

物欲しげな視線を郁人へ向けた。


お願いを郁人は快諾する。


「いいよ。

ヴィーメランスの食材を使うんだし。

当たり前だ」

「……ありがとうございます!!」


瞳の奥が輝きに包まれ、

柔らかく微笑んだ。


「キッチンに案内してもらっていいか?」

「喜んで!!」


郁人を案内するヴィーメランスの

足取りは軽く、全身から喜びの

オーラを出していた。



ーーーーーーーーーー



「だから、彼は歓喜に満ちているのか。

あまりの嬉しさに泣いているな」


起きたジークスは、郁人が作った

ハンバーグを食べながら、

現在の状況を整理していた。


郁人は人数分のハンバーグを作った。


食材を見て判断したのもあるが、

ポンドも初めての料理に興味を持ち、

ユーも食べたそうにしていたからだ。


ヴィーメランスとチイトが

提供した食材を使って、

ハンバーグやサラダ等が作れた頃に

ジークスが起きたのだ。


全員が美味しそうに食べるなか、

1番顕著なのが前に座るヴィーメランスだ。


「父上……!!

とても美味しいです……!

この俺に、このような美味なる

ハンバーグを作ってくださり、

誠に感謝いたします!

これからも誠心誠意、

尽くさせていただきます!!」


涙を溢れさせ、

称賛の声を郁人に浴びせている。


「彼の気持ちもわからないでもない。

君の料理は絶品だからな。

俺も食べられて嬉しい。

しかし……

なぜ俺の記憶が、

途中から無いのだろうか?」


頭上にはてなマークを

浮かべるジークス。


郁人は左肩を、ポンと叩く。


「気にしてもしょうがない。

今はご飯に集中してほしいかな。

サラダにマヨネーズをかけてるから、

美味しさが増してると思うし」

「そうだな。

君の料理をじっくり味わうとしよう」


ジークスは頭を捻るが、

郁人の言葉に、料理に集中した。


「このまよねーずとやら、

初めて食べましたが……

とても美味しいですな!マスター!!」


左前に座るポンドは、お手製の

マヨネーズをサラダにかけながら

話しかける。


余程気に入ったのか、

かける量が多いくらいだ。


しかし、郁人にはそれ以上に

気になることがある。


(鎧ごしに食べれるんだな……)


ポンドの食事風景についてだ。


礼儀良く、1口サイズに切りながら

口に運んでいるのだが……

鎧に当たる直前、霧のように

消えていくのだ。


(なんだろう……?

鎧に吸い込まれてるように見える……)


目の前の光景に、

首を傾げながら凝視する。


「どうかされましたかマスター?」

「いや、なんでもない。

俺も食べようかな」


ハッとした郁人は、

ハンバーグにナイフを入れる。


姿を見て、ジークスは

口をポカンと開ける。


「君がまだ食べれるとは……

少し驚いた。

晩餐時にも思ったが、

以前より食べれる量が増えている。

君の食は細すぎて心配だった。

だから、とても嬉しく思う」


郁人の食べている姿を見て、

ジークスは頬を緩ませる。


「もしかしたら……

私が影響しているかもしれませんな」


ポンドは一旦フォークを置く。


「私が今ここにいるだけでも

魔力は消費されています。

魔力を使うことで体力を使い、

空腹になるのでしょう」


食べれる訳について説明する。


「私も出来るだけ消費は

抑えておりますが、

これから何が起こるかわかりません。

ですので、お菓子等を持っていたほうが

いいかもしれませんな」


ポンドの説明に、郁人は頷く。


「成る程。

だから、お腹が減るのか。

……食べ物は必ず持参してた

ほうがいいな」

「その方が良いよ。

魔力を消耗しすぎたら

倒れちゃう可能性もあるからね」


左に座るチイトが、ハンバーグを

頬張りながら、危険性を伝えた。


(だとすれば、腹持ちがいいほうが

いいな……

米とかあれば良かったんだが……)


ここに来てから、郁人は探してみたのだが

米は見つからず終い。

ライラックやジークス達にも

協力してもらったが、さっぱりだった。


故郷の味が懐かしくなる。


「あと、ご飯をいただければ魔力の

消費を抑えれますな。

このように、ご相伴いただれば

ありがたいです。

マスターの料理は絶品ですからな」


ポンドが声を弾ませた。

郁人の料理が気に入ったことがわかる。


「わかった。

これからは、一緒に食べよう」

「はい!」


良い返事をしたポンド。

喜びのオーラ全開だ。


「ん?」


突っつかれて見ると、

ユーも食べたいと目で訴えていた。


「勿論。

ユーも一緒に食べような」


撫でる郁人の手に、

嬉しそうに喉を鳴らし、すり寄る。


「御馳走様でした」


食べ終えたヴィーメランスは、

手を合わせた後、

口元をペーパーナプキンで拭う。


「素晴らしいハンバーグを

振る舞っていただき、

感無量の思いです。

感謝の気持ちを込めて、

この後に、案内したい場所が

ございます」


郁人へ視線を向けた。


「案内したい場所?」

「父上ならきっと、

お喜びになられる場所です」


きょとんとする郁人に、

ヴィーメランスはとろける笑みをみせた。




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