表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/377

38話 兄妹の再会



リナリアの言葉に郁人の鼓動は

激しくなる。


そんな郁人の様子は露知らず、

リナリアは訴える。


「初めてお会いした時から感じて

おりましたが、お話しをしている内に

確信しました……。

貴方様からは……

“ジークス・フォン・ドラケネス“……!!

お兄様の力を、魔力を感じるのです!!

この名前に聞き覚えはありませんか

イクト様!!」


郁人のパーソナルスペースに入り、

目をじっと見る。


「もし、聞き覚えがあるのでしたら

お教えください!!

お兄様はご無事なのですか?!

今はどこにいらっしゃるのですか?!」

「それは……」


首の後ろをこすりながら郁人は

考える。


(もしかして……

ジークスの尻尾の肉とか食べてるから、

それを感知したとか……?!

だとしても……どう答える?

素直に答えるべきなのか……)


どう答えようか頭を捻らせていると、

背筋が急に冷たくなる。


(この感覚は……?!)


脳が答えを出す前に、口が勝手に動く。


「チイト!やめて!!」

「え?」


突然の叫びにリナリアが目を丸くすると、

自身の首筋に冷たいものが

当てられているのがわかった。


目線を下にした瞬間、

喉から空気が漏れ、言葉にならない。



ーなぜなら首筋に深い闇の刃が

当てられていたからだ。



少しでもリナリアが動けば、

赤い華が咲き乱れることに違いない。


「よくわかったね、パパ」


リナリアの背後には、気付いて貰えたことに

上機嫌で目を細めるチイトがいる。

刃はチイトのマントが変化したものだ。


「いつからそこにいたんだ?

それより、リナリアさんを……」

「はーい」


チイトは刃の変化を戻すと、

リナリアの背後から郁人の側へと

影で移動した。


自分は助かったのだと、首に触れ

脳が理解した瞬間、リナリアは

立っていられず、地面に倒れる。


が、郁人はリナリアの腕を掴み、

そのまま地面に倒れるのを防いだ。


「大丈夫?!」


リナリアは呼吸もままならなかったので、

荒い呼吸を繰り返し、額には汗が

浮かんでいる。


「はっ……はい」


郁人の手を借り、フラフラしながらも

なんとか立ち上がる。


「喉笛をかっ切ろうとしただけなのに

大袈裟なものだ」


チイトは鼻で笑いながら郁人の

背中に抱きつく。


「そんなの物騒過ぎるし、怖いから!

リナリアさんにちゃんと謝る!」

「ちぇー……

ごめんなさい……」


郁人に怒られ、しぶしぶ頭を下げた。


「……謝罪をお受けします」


“歩く災厄“と恐れられるチイトが

素直に謝罪したことにリナリアは

目を見開く。


“歩く災厄“とは傲岸不遜(ごうがんふそん)、残虐非道。

逆鱗に触れれば国1つが跡形も無く

消えてしまう。

表情や瞳は氷のように冷たく、

全てを見下している。

人を人と思わず、気に入らなければ

簡単に殺める。

……などと、ドラケネス王国にも噂が

流れていたからだ。


「パパ、俺ちゃんと謝ったよ!偉い??」

「うん。謝れて偉いよ」

「俺は良い子だからね!」


そんな“歩く災厄“が子供のように甘え、

柔らかな瞳を郁人へ向けて、無邪気に

撫でられる姿は噂を聞いていたリナリアには

衝撃的だ。


「父上!どうかされましたか?!」


郁人が遅い為迎えに来たヴィーメランス、

ポンド、ジークスが駆けつける。


「陛下!どうされたのです?!」


用件を済ませたサイネリアもリナリアの

様子に駆けつける。


「陛下、顔色が……」

「大丈夫ですよ、サイネリア」


心配するサイネリアにリナリアは微笑む。


「イクト、どうかしたのか?」


駆け寄り、心配するジークスに

小声で謝罪する。


「……ごめん、勘づかれた」

「そうか……」


勘づかれた事に目を見開くジークスに、

郁人は尋ねる。


「話してもいいか?」

「勘づかれたのなら、話すしかないだろう。

しかし……どうして勘づかれたんだ?」

「俺の体にジークスの魔力を感じるらしい」

「……俺の血肉が原因だな」


自身の行動が原因とわかると、

ジークスは肩を落とす。


「パパ!

ここにずっといたら風邪ひいちゃうよ!」

「そうです。

夜風は当たりすぎると御身に障ります。

早く戻りましょう」


チイトとヴィーメランスはジークスが

見えているのかと思うくらいに

綺麗に2人の間に割り込む。


「とりあえず、戻ってから話そうか」

「そうですね」


リナリアが郁人の言葉に頷くと、

全員、1室へと戻っていった。



ーーーーーーーーーー



戻った全員が席につく。


チイトは小瓶を取り出すと、

中身を手の平に出す。


「ー遮断せよ」


中身は部屋一帯に舞い、

オーロラのような幻想的な光景を見せる。


「……綺麗」

「これは……魔術かな?

こんなにも綺麗な魔術は初めて見るよ」


リナリアとサイネリアが目を奪われるなか、

郁人は思い出す。


「前に見たやつだ!」


死霊魔術の件でチイトが行使した、

周囲から認識させなくするものだと。


「貴様はあいつのが使えるのか」


ヴィーメランスが目を見開く。


「いつの間にか使えるようになっていてな」

「……そうか。

だが、この魔術があると助かるのは事実だ。

ついでに俺もしておこう」


席を立つと、ヴィーメランスは壁に手を当て、

少し唱える。


ヴィーメランスの手が赤く光り、

炎のように揺らめくと、光が部屋の壁1面に

行き渡る。

それを確認したヴィーメランスは

手を離した。


(今更だけど、ヴィーメランスも

魔道具無しで使えるんだな)

<パパが設定してくれた属性なら無しでも

使えるから>

(そうなんだ。

じゃあ、ヴィーメランスが使ったのは……)


「ヴィーメランス、それは炎属性なのか?」


気になった郁人が尋ねると、

席に戻ったヴィーメランスは快く答える。


「はい。

今使ったものは、この部屋に聞き耳を

たてようとした者、覗こうとした者は

耳もしくは目が焼け(ただ)れるものです」

「……物騒過ぎないか?」


あまりの内容に顔を青ざめる郁人に、

ヴィーメランスは首を横に振る。


「これぐらい普通ですよ、父上。

あいつの存在は少し厄介ですので……。

よし、解除しろ」


ヴィーメランスが言うが、

ジークスは解除しようとしない。

少し戸惑いがみられる。


「どうかしたのか?」


右隣に立つジークスに小声で尋ねた。


「……あの者は信頼出来るのだろうか?

流れでついてきているが、内容を

理解していない」


ジークスはリナリアの後ろに控える

サイネリアをチラッと見た。


心配を理解した郁人は問いかける。


「ヴィーメランス。

サイネリアは内容を知らないけど、

大丈夫なのか?

それが気になってるみたいだ」


問いに、ヴィーメランスは答える。


「サイネリアは見た目は軽いかも

しれませんが、他言無用と言えば

問題ありません。

サイネリア、今からの事は他言無用だ。

言えば……わかっているな?」


ヴィーメランスの言葉と鋭い視線に

サイネリアは背筋をピシッと正す。


「勿論!絶対に言わないよ!

ヴィーくんの信頼を失いたくないからね!」


胸を拳で叩きながら答えた。


「で、何を話すのかな?」

「貴様なら見てわかるだろうよ」

「解除してもらっていいか?」

「了解した」


郁人に促されたジークスは解除し、

頭巾を脱いだ。


「え?幽霊?

……いや、違う!!

本物のジークス王子ではないですか!?」

「……お兄様!!」


ジークスの登場に目をこすり凝視した後、

腰を抜かすサイネリアに、

声を上ずらせながらリナリアは

席を立つとジークスへ駆け寄り、

勢いよく抱きつく。


「お兄様……!

ご無事でよかった……!!

お会いできて本当に……嬉しいです!!」

「……ここまで喜ばれるとは

思いもしなかった。

怖がられていると思っていたからな」


口をポカンと開けるジークスに

リナリアは首を横に振る。


「怖がるだなんて……!

とんでもございません!!

会えて喜びしかありませんわ!!

それに……私のせいでお兄様は……!!」

「気にすることはない。

あれは俺が勝手にしただけのことだ。

君が元気にしている姿を見れて安心した」

「お兄様……!」


瞳を潤ませるリナリアの頭を

おそるおそるだが、ジークスは

優しく撫でる。


「……お会いできてよかったですね、

陛下」


腰を抜かしていたサイネリアだったが、

リナリアの様子を見て頬を緩ませる。


「ジークスから聞いてた話では、

あまり接点が無かったみたいだけど……

仲良さそうで安心した」

「接点が無かったというか……

会うのがダメだったからね」


サイネリアは顔をうつむかせる。


「どういう意味だ?」

「それは……

お2人を待ってからでいいかな?」

「勿論」


問いに郁人が頷くと

しばらく、兄妹の再会を見守った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ