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310話 妖精王の忠告




   声のするほうを向けばそこには

   ミョウケンがいた。その後ろから

   ユーがひょっこり顔を出している。


   「もしや……貴方は夏の妖精王?!」

   「夏の妖精王と同盟を組んだとは聞いてた

   けど、まさか御本人が来たかあ」

   「えっ! ミョウケンさん? ユーは一緒に

   いたはずじゃ……」


   アストは目を見開き、アマポセドは

   ヘラっと笑った。

   郁人はいつの間にかミョウケンの後ろ

   にいたユーに驚いているとミョウケンが

   説明する。


   「儂のことはじいじと……いや、今は

   その姿じゃから仕方ないかの。儂が

   ここへ来たのは、此奴が余計な世話を

   焼こうとする奴がおると教えてくれた

   からでの」


   ミョウケンはユーに視線をやったあと

   アストを見て忠告する。


   「そこの魔王の若造。貴様の魔眼は

   とても凄まじいものだ。それで見えた

   ものに対処しようとするのも貴様の自由。

   しかし……あの国の呪いに関わるのは

   やめておけ」


   忠告するミョウケンの雰囲気は真剣

   そのもの。普段の和やかな空気がガラリ

   と変わり、張り詰めている。

   空気を張り詰めたままミョウケンは続ける。


   「あれはどうしようもない。

   自業自得ゆえの結果。あそこが自ら

   気づかなければならぬ業、呪であるぞ。



   ― 他者が手を出す領域ではないと知れ」



   ピリピリと肌を刺し、禁域に踏み込んだ

   と思わせ、妖精王の風格の一端を感じ

   取れるものだ。

   風格をまとうミョウケンにアストの額に

   汗が流れる。


   「……どうやら、とんでもないものを

   僕は知ってしまったようですね。

   かしこまりました。アスト・ハッカ・

   イーヴィルムは我が名に誓い、この呪い

   に関わらないことを誓いましょう」


   アストは自身の胸に手を当て宣言した。

   その言葉にミョウケンは頷く。


   「汝は聡いようじゃの。それは大切に

   するがよい。じゃが、汝がその手紙の

   主と今までのように関わることは別に

   構わぬ。好きにせい」

   「ありがとうございます」


   アストはミョウケンに一礼した。

   その光景を見て、ライコは呟く。


   〔あの夏の妖精王、普段と雰囲気が

   変わったからびっくりしたわ!

   本当に触れちゃいけないのね、

   その呪いには……!!〕

   <そうだね。もし妖精王が来なかったら、

   僕も止めてたぐらいだもの。

   アレは、触れてはいけない。君も触れ

   ちゃダメだよ。君になんかあったら

   旦那様が悲しんじゃうからさ。

   ちゃあんとわかった?>

   (はい。絶対に触れませんし、近寄り

   たくないので)


   アマポセドの忠告に郁人は断言した。


   (あきらかに危なそうですし、やばそうな

   気配がすごいしますから……)

   〔夏の妖精王の逆鱗に触れそうな予感も

   するものね……〕

   <わかってるならいいよ。まあ君の周囲、

   とくにあの真っ黒くんが近寄らせる気は

   さらさら無いだろうけど。あの子が1番

   君の安全に気を配ってるようだし>


   あの子はヤバいからねえとアマポセドは

   笑った。

   それをよそにミョウケンはアストに

   また忠告する。


   「汝の周囲にも伝えとくようにの」

   「はい。徹底させていただきます」

   「よろしい。儂も面倒事は起こしたく

   ないゆえな」


   アストは頷き、ミョウケンは用を終えた

   と郁人の方を見る。


   「で、儂の孫は変装時はこのような姿

   なのか! うむ! じつに愛いのう〜!」


   先程の真剣さは霧散し、初孫を愛でる

   祖父のように頬を緩める。


   「髪は魔術かなにかで伸ばしておるのか?

   なら、こちらを使うほうが良いぞ。

   髪もさらに艷やかとなるでな。ほれ、

   爺ちゃんが用意してやろう」

   「あー、ミョウケンの旦那。できるだけ

   ぬし様とこの姿のぬし様との繋がりを

   勘ぐられないようにしてるんで。

   その辺で頼むわ」


   空間に手を突っ込んで次々と物を取り出す

   ミョウケンに待ったをかけたのはレイヴン

   だ。


   「この姿のぬし様はあんたのお気に入り

   として通すが、ぬし様と同じくらいに

   貢がれたら悟られそうで困るんだわ」

   「そこは問題ない。我が孫用はこっち

   じゃからの」

   「えっ……? わあああああああっ?!」

   「旦那様っ?!」


   ミョウケンが指を鳴らすと、郁人は

   プレゼントの山に埋もれた。

   いや、埋もれそうになった郁人を

   守るようにエンウィディアが自分の

   腕の中に引き寄せて庇ったから無事だ。


   〔この俺様人魚、あんたを守ったわよ!

   こいつひねくれてるからこんな感じで

   守るとは思わなかったわ!〕


   ライコは思わず声をあげた。

   郁人は少し目をぱちくりさせながら

   腕の中から顔をあげてエンウィディアに

   感謝する。


   「助かったよ。ありがとう、

   エンウィディア」

   「………」

 

   エンウィディアは郁人に視線をやった

   あとミョウケンを睨みつける。


   「おい。渡すにしても場所を考えやがれ。

   こいつは鈍臭えノロマだ。テメェより

   上から降ってくるものに気づくかよ」

   「すまんな、少し汝を試したかった

   のでな」


   ミョウケンはすまんすまんと笑い、

   レイヴンが説明する。


   「いやあ、俺様が手前はぬし様を守る

   から大丈夫ってもミョウケンの旦那が

   疑ってな」

   「儂の部下からあまり態度がよくない

   と聞いていたもんでの。だから試して

   みただけじゃ。我が孫が傷つかぬように

   施してはおるから汝が守らなくても問題

   なかったぞ。体験した汝ならわかると

   思うがの? ほれ、痛みなどなかったろ?」

   「………それでかクソジジイ」


   庇ったエンウィディアはわかったのか

   鋭い舌打ちをした。

   レイヴンはエンウィディアから郁人を

   奪い取る。


   「ってことで、手前はぬし様を離しな」

   「我が孫もすまんな。びっくりさせたの。

   ほれ、飴ちゃんじゃ」

   「えっと、ありがとう……ございます」


   ミョウケンの渡した飴はまるで宝石の

   ように輝いている。そのため、飴とは

   思えなくて郁人は戸惑ってしまう。

   アストは飴を見て目を輝かせる。


   「綺麗な飴ですね。キラキラと輝いて

   素晴らしいです!」

   「それ、妖精界のエリクサーと呼ばれ

   てるやつだよ。口にするのはオススメ

   しないかな? 人間の枠から外れるかも?」

   「えっ?!」

   「そうなんですかっ?!」


   アマポセドの言葉に郁人は驚き、アストも

   目を丸くした。ユーはやっぱりと言いたげに

   ミョウケンを見た。

   ミョウケンは心外だと声をあげる。

 

   「そんなものではないわ! ちょっと

   健康になって寿命が10年ちょいと

   延びるだけじゃ!」

   「ちょっとでも十分すごいんだよ、

   人間の基準ではさあ。

   あ〜妖精王ともなると価値観ズレてて

   怖いわ〜怖い怖い」


   アマポセドは自身の肩を抱き、こわ~い

   とヘラっと笑う。ユーも同意するように

   頷いている。


   「君も気をつけなよ。でないと、

   旦那様がわざわざ動かないといけなく

   なるでしょ? 妖精から受け取ってもすぐに

   口に入れないようにしなきゃ」

   「それを儂の前で堂々と言うか、

   普通?」


   アマポセドは忠告し、ミョウケンは

   口の端を引きつらせた。


   「同意するのは癪だがテメェは口に入れる

   前に確認しろ。いいな?」

   「ふぁい。わきゃりまひた」


   エンウィディアも郁人の両頬を片手で

   掴みながら注意し、郁人は頷いた。

   エンウィディアはレイヴンを睨む。


   「テメェはわざと見逃したろ? こいつが

   人間卒業したらどうする気だ?」

   「えー、それ手前が言うのか?

   手・前・が〜?」

   「…………」


   レイヴンはエンウィディアが神殿で

   郁人にしようとしていたことを知って

   いるので、煽るように告げた。

   エンウィディアの額に青筋が走る。


   「2人共……」

   「おっ、そうじゃった! 我が孫に言わねばと

   思っておったのじゃ」


   ピリピリした空気に郁人が止めようと

   入ったが、ミョウケンに遮られる。


   「汝の従魔、獣人の国アニンナの王子に

   決闘を申込まれとったぞ」

   「………なんで?」

   〔どういう状況になったらそうなる

   わけ?!〕

   「君の従魔、なにしたらそうなるの?」


   郁人の頭上にはてなマークしか 

   浮かばなかった。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

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