21話 客将の経緯
「マジかよ?!お前が?!」
フェランドラは斜め前に座る
ジークスを指差した。
いつもの1角にフェランドラが混ざり、
大樹の木陰亭でヴィーメランスを待ちながら
4人で食事を楽しんでいた。
フェランドラは混ざるつもりはなかったが
ジークスから話があると言われ、
席についていた。
話とは、ジークスの身の上についてだ。
「話してよかったのか?」
「いいんだ。
所属する以上、いつか話さないと
いけないと考えていたからな。
君に話したことで踏ん切りがついた」
ジークスは郁人に微笑みかける。
ジークスは隠し事が苦手な性分で、
大切な親友に隠している事をストレスに
感じていた程だ。
所属しているギルドに隠していた事も
ストレスに感じていたようである。
〔英雄候補はギルドに義理を
感じてたようだし、打ち明けたことで
スッキリしたみたいね〕
ライコは微笑みを見て感想を呟いた。
「もやしが一気に体力とか
安定したのもわかった。
竜の肉食えばそりゃ良くなるわ」
竜の肉について知っていた
フェランドラはフライドポテトを
口に放り込む。
「おかしいと思ったんだよ。
脆弱、貧弱、病弱な死にかけもやしが
少しの間で普通寄りになる訳がねえ」
フェランドラは納得しながら、
次にステーキを豪快に頬張った。
「ひょれにしても」
頬張りながら1言……
「お前、気色悪いな」
「なっなにがだ?!」
直球過ぎる罵倒にジークスは
面を食らう。
フェランドラは理由を語る。
「勝手に自分の肉を食わせるか?
しかも、不法侵入した挙げ句、
血を飲ませようと口に指突っ込むとか
鳥肌ものだ。
オレだったら、為になるとはいえ
張り倒すぞ」
「俺も同感だ」
〔普通はそうするわよ〕
フェランドラの意見に
チイトも深く頷き、ライコも同意した。
「もやしも合鍵没収しとけ。
こいつがまた仕出かすかもしれねえし」
「ジークスは危害を加えたりしないし、
没収しようとしたら絶望した
表情されたから……」
「お前優し過ぎ……いや、甘過ぎる……
心が広いっていうのかこれ?」
頭をかき、フェランドラは
ため息を吐いた。
フェランドラはフォークで
ジークスを指す。
「お前もよかったな。
絶交されててもおかしくねえ
行動をしたんだからよ」
「血肉をあげる事が
そんなに変わっているのか……」
「……こりゃ文化の違いだな」
顎に手をやるジークスを見て、
フェランドラは呆れた視線を向けた。
「竜人はいろいろ重いと聞いたが、
今、証明された訳だ」
「聞いたって?」
ため息とともに漏れた言葉に
郁人が尋ねた。
「聞いたことねーか?
竜人の血肉を食らえばの話と並んで
有名だぜ?
竜人族は戦闘能力も高く、忠義も厚いから
お偉いさんにとっちゃ、
喉から手が出るくれー欲しい存在だ。
けどよ、個人的にとなりゃまた別でな」
フェランドラはステーキを頬張り、
口を開く。
「相手の為なら命を平気で投げ出すとか、
友人関係を超えて色々やり過ぎちまうし。
一途過ぎて、添い遂げるまで一生相手を
追いかけたりとな。
あのローダンがどれだけの巨乳美人でも
竜人と分かれば話かけもしない程だ」
「あのローダンが?!」
フェランドラの話を聞き、
郁人は思わず声を上げた。
「そうだぜ。
あのクズすら敬遠しちまうくらい
"超"重いんだよ竜人は。
実感してるお前ならわかるだろ?」
「たしかに……」
郁人はジークスの今までの行動を
振り返り、納得する。
(ジークスが俺の世話を焼き過ぎたり
命にかえても守ると言うのも
種族的な特徴だったんだな……)
〔英雄候補はその特徴が顕著に
現れてるもの〕
ライコも郁人に同意した。
「イクト……
俺は……重いのか?
君に迷惑をかけてしまっていたのか?」
捨てられた子犬のように
郁人を見つめるジークス。
「いや、その……ジークスが
世話をやいてくれるのは嬉しい。
血肉の件はびっくりしたけど。
迷惑とは思ってない」
落ち込む姿を見て、郁人は首を
横に振る。
ジークスはそれを見て胸を撫で下ろす。
「そうか……!よかった!
俺もその話を聞いたことがあるから
本当はもっと君の世話をしたいが、
俺なりに我慢していたんだ」
ほっとした表情を浮かべ、
ジークスは口を開く。
「実は、丈夫になるには血を浴びるのも
効果があると聞き、寝ている時に
君に血を浴びせようと悩んだ事もあった。
これからは我慢しなくても……」
「それは我慢してくれ、頼むから」
〔起きたら全身血塗れとか……
とんだホラーね〕
想像してしまい、郁人の顔から
熱が引いていく。
ライコも想像したのか、
声が震えていた。
「世話とか今まで通りでいいよ。
むしろ、控えてもいいくらいだから」
「……善処しよう」
口ごもらせながらジークスはうなずく。
渋々といった様子が見てとれた。
「ジジイ本当に面倒……
来たな」
チイトは話を止め、すぐ扉の方向を
見据えた。
同時に扉が勢いよく開き、
炎のような紅が目に入る。
「なんだあいつ……貴族か?」
「貴族であんな凄い雰囲気のが
いるわけないだろ」
「スゴい格好いいわね。
ジークス様や災厄様とは違った
イケメンだわ」
「あの人を見ると背筋を真っ直ぐにしないと
いけない気がするわ……。
どこかの偉い方なのかしら?」
「頬の鱗……まさか竜人じゃないか?!」
周囲の視線や意識を一身に受けながら、
それをものともせず足取りは
真っ直ぐ郁人へ向かう。
「オレはそろそろ失礼するぜ」
ヴィーメランスを確認し、
フェランドラは席を立つ。
「もう行くのか?」
「明日の用意もあるし、
親父の手伝いもしねーといけねーからな。
もやしも早く寝とけよ!」
「わかった。また明日!」
背凭れにかけたジャケットを
手に取り、フェランドラは片手を
ヒラヒラさせ去っていった。
入れ違いでヴィーメランスは
郁人の元へたどり着く。
「お待たせしてしまい申し訳ございません」
「全然待ってないから大丈夫。
一緒に食べながら話そう」
「父上と相席させていただけるとは……
有り難き幸せ。
では、失礼いたします」
深々と礼をし、ヴィーメランスは、
郁人の正面の席についた。
「ヴィーメランス。
予定では明日迎えのはずだが?」
チイトは肘をつき、斜め前に座った
ヴィーメランスを睨み付ける。
「父上に拝謁出来るのだ。
即行動に出るのは当然だ」
睨み付けられているヴィーメランスは
気にする素振りはなく、逆に睨み返すほど。
見ているほうが肝を冷やしてしまう。
その内の1人である郁人は、
空気を変えようと話しかける。
「ヴィーメランスは客将と呼ばれてたけど
いつから客将に?きっかけは?」
「3年程前になります。
きっかけは、終戦に貢献したからです」
「終戦ってことは、戦争してたのか……?!
一体どうして?!」
郁人は顔を青ざめ、
ジークスも同じ反応をする。
「理由は、第1王子に対する行為や
他にもある王の目も当てられぬ行動を
もう看過できぬと第1王女が
立ち上がったからです」
ヴィーメランスは郁人の質問に
答えていく。
「王が既にドラゴンと化していた
こともあり、ドラゴン対第1王女と
王女に付き従う者達の戦いになりました。
端から見れば、ドラゴン対国の戦争です。
今では“邪竜戦争“と呼ばれております」
「邪竜戦争……」
(ライコは知ってた?)
郁人は尋ねたが、返事はない。
(どうしたんだろ……?)
いつもはすぐ返事してくれるのにと
首を傾げていると、ジークスが
ヴィーメランスに暗い面持ちで尋ねた。
「それで……国は……?」
「貴様は……成る程。
貴様がドラケネス王国に秘して
行かねばならぬ訳か」
ヴィーメランスはジークスの身の上を
察して冷笑し、郁人へ視線を戻す。
「王が早々に国を去っていたので、
すぐに終わると判断していたようですが、
長引かせたのは退治された邪竜です」
忌々しそうな口調で話す。
「邪竜は相討ちで終わったようですが、
死んでも邪竜の気は強かったらしく、
その気にあてられたワイバーンや
他のドラゴン、魔物が血気盛んになり、
国へ襲いかかってました。
俺はその頃に来国し、魔物が
五月蝿かったので消し炭にしました」
結果的に助力した形になったと、
説明するヴィーメランス。
「そんな事が……?!」
話を聞いたジークスは顔を
更に青ざめた。
自身がきっかけで戦争にまで
発展したことに筋肉をこわばらせている。
気付いた郁人は、安心させようと
ジークスの肩を叩く。
「ジークスが気にすることはない。
悪いのは封印を解いた王様だ。
戦争に発展するなんて誰も
想像できないしさ。
だから深く考えなくていいぞ」
「……すまない。
君に心配をかけてしまったな」
ジークスは体の硬直を解き、
郁人に笑いかけた。
「別にいいよ。
今は大丈夫なのか?」
郁人はヴィーメランスへ問いかけた。
「はい。
まだ血気盛んなものはいますが
問題ありません。
第1王女が国を治めてからは
安定してますから。
俺は結果として国に貢献したので
客将として暮らしております」
返答するも、心配されるジークスに
不満があるのか睨み付けている。
チイトもヴィーメランス同様
睨み付けていた。
「そうか。
ヴィーメランスもスゴいな。
客将に迎えられるほど貢献したんだから」
「父上に誉めて貰えるほどの事は
しておりません。
……父上はこいつの為にドラケネス王国へ
行くのですか?」
ヴィーメランスは咳払いしつつ、
ジークスを横目で見る。
剣呑な光が瞳から伺えた。
「それもあるけど、俺が行ってみたくてさ。
空に浮かぶ国を見てみたいんだ」
郁人はそれだけじゃないから
と答えた。
(空の国とかファンタジー感満載だし、
行きたいのも本当だ)
郁人は期待に胸を膨らませる。
言葉が本当だと理解したヴィーメランスの
瞳から剣呑な光は消える。
「そうでしたか。
でしたら、案内はこの俺にお任せを。
是非、父上に見てもらいたい場所も
あります」
「ありがとうヴィーメランス。
期待してる」
「恐悦至極」
郁人の言葉にヴィーメランスは
頭を下げる。
言葉尻から嬉しいことがすぐにわかった。
「あと、行きたい理由はこれなんだよな……
チイト、他の人に見えないように出せる?」
「あぁ、あれね。任せて」
チイトはヴィーメランスの
近くの空間を歪ませた。
「覗いてみろ。
貴様なら分かる筈だ」
「なにがだ?
……成る程な」
ヴィーメランスは覗いたあと、
納得する。
「たしかに、これは渡したほうが
いいだろう。
……名目はこれを渡すこととする訳か。
それなら気づかれずに入国できるだろう」
顎に手をやった後、ジークスを見据えた。
「バレずにいけるように
協力してほしいんだ。
お願いしてもいいかな?」
「お任せください!」
郁人は手を合わせ頼むと
ヴィーメランスはその手を勢いよく取る。
「父上の願いとあらば、
上手く事を進めてみせましょう!」
「あ……りがとう」
あまりの勢いに思わず
口ごもらせてしまった。
ヴィーメランスをよく見ると、
笑みをこらえているのがわかる。
「嬉しいからって五月蝿いぞ貴様。
あのねパパ!
こいつだけだと不安だから
俺も協力するね!!」
チイトがヴィーメランスの手を
無理矢理剥がし、郁人の手を取り笑う。
対して、ヴィーメランスは
目尻を尖らせる。
「それはどういう意味だ?」
「貴様は戦闘にしか特化されてないからな。
指揮はとれても、こういった隠密行動は
戦馬鹿には無理だろうと俺なりの
配慮をしただけだ。
パパの前で恥をかきたくないだろう?」
「随分な口を聞くようになったな。
父上に願われた俺がそんなに羨ましいか?
貴様はひたすら破壊するだけしか脳がない
お子様だから頼りにされないのだろうよ」
口火を切った途端、場の雰囲気は
一気に重くなる。
マントは怪しげに蠢きはじめ、
ヴィーメランスの周囲には火の粉が
舞いはじめた。
「2人共ストップ!」
このままではマズイと郁人が制止する。
「チイトも協力するなら、
相手の神経を逆撫でる発言はしない!
ヴィーメランスも挑発しない!!
火の粉が舞って危ないから!
2人共頼りにしてるから喧嘩しない!!」
「そんなに慌てなくても
大丈夫だよパパ」
「これは俺達なりの交流ですから」
郁人の慌てた様子に宥める2人。
きょとんとした様子からいつもの事だと
察することができた。
「心臓に悪い交流だな」
ジークスは大剣に手をかけていたが、
その手を下ろしホッと息を吐く。
「パパに心配かけさせる貴様に
言われたくないな」
「自身がきっかけと知って青ざめるような
情けない奴に言われる筋合いはない」
「あっ!そういえばあの首飾りは?
俺どんなのか知りたいなあ!」
2人の先程とは比べ物にならない
冷たい目に郁人が注目を変えようと
話しかけた。
「これですか?」
ヴィーメランスは懐から首飾りを
取り出す。
「これはドラケネス王国の
宝の1つ。
宝石に一定の魔力を込めれば
壊れた物を元に戻せる魔道具です」
首飾りについてヴィーメランスは
説明する。
「これを使えば壊される前に戻すことが
できる便利な物ですが、時間が
経過した物は完璧に戻せないのが
難点ですね」
「十分スゴいと思うけどなぁ。
でも、国の宝ってことは……」
「察しの通り国宝だ。
王族の者以外持ち込むことはおろか、
触れることすら禁じられている筈だが」
ジークスが問いかけると、
眉をしかめながらヴィーメランスは
答える。
「父上に疑われるようなことを
言うのはやめろ。不愉快だ。
これは第1王女が俺に貸し出し、
それを活用してるだけにすぎん」
「第1王女……
今更だけど、ジークスに兄妹いたんだな」
「腹違いの上、数回顔を会わせた
ぐらいしか交流がなかったがな。
妹は面に立つことが苦手な印象
だったんだが。
今は国を率いているとは……
少し驚きだ」
懐かしそうにジークスは呟く。
(妹か……)
妹の話題が出たことで、
双子の妹はどうしているのか
郁人も思いを馳せた。
「父上はいつからこちらで
過ごされていたのですか?」
ヴィーメランスの言葉に意識を戻す。
「俺はここに1年くらい前に来たんだ。
ここの女将さんは俺の母さんで、
一緒に暮らしてる。
体のこともあって色々あったけど、
母さんは勿論、ジークスやフェランドラ、
たくさんの人に助けてもらいながら
過ごしてるんだ」
「それだけじゃないよね、パパ」
良い人ばかりだと笑う郁人に
チイトが反論した。
「パパの体はすごく弱くなってるし
なにより……」
「なんだ?
父上になにかあったのか?」
言葉を濁すチイトにヴィーメランスが
尋ねた。
「これを見たほうが手っ取り早い」
チイトが空間を歪ませ、
ある物を取り出した。
それに郁人は目を奪われる。
「VRゴーグルだ!
1度でいいから使って見たかったんだ!!」
「ぶいあーるごーぐる?」
郁人は間近に迫り、目を輝かせる。
ジークスは頭上に疑問符を飛ばす。
「これなら臨場感とかあるし、1人用に
最適かと思ってモデルにしたんだ!」
「作ったのか?!すごいなチイト!」
「パパに誉められるとやっぱり嬉しいな。
あとで使わせてあげるからね」
頬を緩ませながら、チイトは準備をし、
ヴィーメランスに渡す。
「つけてみろ。そしたら分かる」
「お前は名の通り、何でもありだな」
ヴィーメランスはため息を吐きながら、
VRゴーグルを装着した。
「始めるぞ。
先に言っておくが、今から見るものは
実際に起きた出来事を映しただけに
過ぎない」
「どういう事だ?」
問いに答えず、チイトはVRゴーグルの
スイッチを押した。
「……………」
ヴィーメランスは集中したのか
無言になる。
「なにを見てるんだ?」
「反応見たらわかるよ」
後でわかるから
と、チイトは答える気はないらしい。
「初めて見る魔道具だが、
どういったものなのだ?」
「どう説明すればいいか難しいけど……
360度、臨場感ある映像が見れるんだ。
ジークスもあとで見せてもらえば
わかるかな」
「そうか。
後で使わせてもらおう」
ジークスも興味を示したのか、
VRゴーグルを見ていた。
ーーーーーーーーーー
しばらくして見終わったヴィーメランスは
VRゴーグルを取り外した。
「ヴィーメ……ランス……」
常に眉をしかめた表情は、
凍った仮面のようになり
郁人の背筋が凍る。
「…………」
何も言わないヴィーメランスに
尋ねる。
「どうかしたのか……?」
ヴィーメランスはゆっくりと
口を開く。
「最近、左脇腹や両足ともに殴打され
完治しておらず、古傷が増えていくばかり。
服で隠れるところを重点的に狙い、
聞くに耐えない罵詈雑言の数々……」
聞いた郁人は体を硬直させた。
ーなんせ、身に覚えがあるからだ。
ヴィーメランスの体から火の粉が舞う。
「女が欲しいからと自身をろくに
磨きもせず、側にいる父上を妬み、
蛮行に及ぶとはなっ!!」
全身に怒りという炎をまとい、
耐えきれず爆発したように叫び、
拳を固く握りしめる。
「見せたのってまさか……?!」
「パパが今まで受けてきた暴力だよ。
パパったら酷い目に遭ったのに
伝えもしないんだもん」
ヴィーメランスの様子に郁人が聞くと、
頬を膨らませながらチイトは
あっさり答えた。
「磔にした時に、塵から
記憶を読んでVRに移したんだ。
パパの記憶からも少し読ませて
もらったから再現率は高いよ」
「なんでそんな事……!?」
「パパ。
俺はパパが止めて欲しいと
言ったから止めただけだよ。
ー許してる訳ないじゃん」
虚ろな瞳はあまりに冷たく、
何も映していない。
「パパに自分がどれだけ思われているか
自覚してほしいから見せたんだ。
それに、パパもイジメに対して
怒ってたけど、俺達より怒ってないのも
問題なんだよ。
自分に対してあまり関心がないのも
考えものかな」
ため息を吐いたチイトは、
郁人の耳元で囁く。
「覚えておいてねパパ。
俺達はパパしかいらないし、興味がない。
パパ以上に深く大切に思っていること。
だから、自分を大切にしてね。
じゃないと……
ー閉じ込めちゃうかもしれないよ」
チイトの表情は微笑みを貼り付けたまま、
ツルンとした硝子のような瞳を郁人に
向けていた。
「なんてね」
瞬きの間に、いつもの無邪気な笑顔に
変わっている。
「チイト、その塵はどこにいる?
すぐに案内しろ」
「いいだろう」
ヴィーメランスに呼ばれ、
チイトが席を立つ。
「ちょっと待って!」
チイトの変化に呆然としていたが
2人の裾を掴み、出るのを止める。
「十分罰は受けているから!
ジークスも止めるのを手伝って……」
人手がいると判断した郁人は
ジークスを見ると、いつの間にか
VRゴーグルを装着していた。
そして全て見終わったのだろう、
VRゴーグルを外す。
「……………」
ジークスもヴィーメランス同様
無表情になり、なにも話さない。
大剣を携え、2人に同行した。
「せめてなにかしゃべろう!!
お願いだから!!すごく怖い!!」
騒ぎを聞き、駆けつけたカランが
来るまで郁人の必死の制止が続いた。
「イクトちゃん……
私が知らない件もあるわ。
詳しく説明してちょうだい」
「母さんもいつの間に見てたの?!」




