第34話 街の財政火の車
選定選から1か月が過ぎ、ベルガ中央広場付近に設けられたベルガ十傑会議場では連日大量の報告が飛び交っていた。
「物資の流通量が先週と比べて5%増加したよ。キトスなどからのルートも確立しつつあるね」
「喧嘩が6件、ひったくり等が14件、その他トラブルが9件報告されているでござる。多少減りはしたものの、まだまだでござるな」
「街の修復はそれなりに進んでいるけど、そろそろ木材が限界だよ。援助できる金額も限られているし、財源を確保しないと厳しいね」
現状、カーニバル、春風が物流と外交を、刀匠団、ワールド・ハンターが治安維持を、カーヴィングが建物の修復をそれぞれ担当している。それぞれアキネ、シグレ、マリが事実上代表となっている。秋雨、避寒地は規模が小さいため適宜サポートに回り、エレクセリアは自身やベルガのイメージアップと士気向上を兼ねてイベントを企画している。街全体の雰囲気は以前とは比べ物にならないほどよくなってきている。治安の面等はまだ改善の余地を多く残すが、大分ましになっている。一番の問題はマリが言った通り、財源だ。生産ギルドが本格稼働するために時間とお金が全然足りない。そのため交易がうまく行えていない。当然経済は停滞し、復興が遅くなる。
これを解決するためにキトスをはじめとする周辺地域に援助もしくは融資を求める必要があるのだが、ついこの前まで独裁恐怖政治が敷かれていたベルガではそれも難しい。エレクセリアのイベントや十傑会議の設立でイメージは改善の兆しがあるものの、大規模な援助・融資を引き出すには至っていない。
「レイさんはどうすればいいと思う? 」
「やはりベルガの復活を外部にアピールすることが一番じゃろうな。大きな決闘でいい成績を残したり、この世界に関する新発見をしたりの」
「ワールド・ハンターはどうなっている? 新緑の森探索は進んでいるか? 」
「悪いがそれどころではない。刀匠団も頼りになるが、それだけでは足りないからな。進めてないわけではないが、期待しないことだ」
「なら、決闘で勝つしかないのでしょうかっ」
「そう簡単にいかないだろう。大規模決闘に田舎の弱小ギルドを呼ぶ必要がないだろうしな」
「じゃあ、俺たちが招待したらどうだ? そういう企画も一部では上がっているんだけど」
「大規模ギルドがそんな誘いに乗ってくるか? 」
十傑の全員が積極的に参加していて、よい傾向であるのは確かだが、決定的な解決策が見つかっていないのも事実だ。最後の俺の一言で会議場に沈黙が訪れる。そんな中飛び込んできたのはピカールだ。
「すごいもの見つけたよ」
「いちいちこっちに来るなよピカール。情報は一度ギルド内でまとめてからって決まってるんだが」
「まぁいいじゃない。緊急なんだろうしさ」
「アキネの言う通りだ。新緑の森に少しだけ偵察をしてみたらフィールドを発見したんだよ」
フィールドというのは森などに存在するダンジョンのようなもので、誰かが作ったものから、自然に出現したものまでさまざまある。RPGなどと同じく、道中やクリア時にアイテムやアビリティを入手できることがある。フィールド挑戦も決闘として認められ、そこに複雑なルールがある場合もあるらしい。未開のフィールド踏破は相当の報酬と名声が手に入る。今の俺たちにはぴったりというわけだ。
「ルールの確認は簡単だったよ。総勢9名での参加で、全員が英雄の資質を認められなければならないんだそうだ」
「英雄ってなんのことだ? 」
「詳しくはわからないけど、心、力、絆の何れかが必要だって書いてあったよ」
「じゃ、私パス」
ピカールが答えた途端、マリが降りた。
「だって9人しか入れないんだし、そのどれも持ってる自信ないからね。やった方がいいと思うけど、私は参加できないよ」
「本人がそう言うならそれは尊重するよ。さて、議長として多数決を取ります。このフィールドを攻略するべきだと思う人は挙手」
手を上げたのはレガード、シグレ、マリ、ザーク、リク、そして俺。危険だ、治安維持が先だという意見も出たが、この結果は変わらず、フィールド、『英雄の遺跡』の挑戦が決定した。




