第9話 対黒雷戦線:開戦
今更だが、ギルドに対して決闘を仕掛けることも可能だ。――――ギルドマスター、サブマス、幹部権限を持った人間に直接申し込むか、ギルドホームの目の前もしくは内部で宣言するかすれば受理される。対ギルドの決闘には特別ルールが存在する。申し込まれた側は断ることができない。受理されてから12時間後に開戦する。受理から開戦まではアビリティやアイテム等を相手ギルドのメンバーと所有物に対して使用することは不可能。唯一の例外が受理後双方の幹部以上の権限を持つ者に与えられる『協議会への招待』というアビリティだ。これは双方最低1名以上の同意の上に発動し、参加に同意したメンバーが会議室のような特殊な空間に転送される。罠などを気にすることなく話し合うことができ、ここでは和解の成立や特殊ルールの追加が可能だ。基本的に対ギルド決闘は戦闘不能あるいは死亡した場合それ以降の決闘参加資格を失う。つまりは失格だ。この場合も特殊な空間に飛ばされて終了まで待機することになる。特殊ルールを制定すればこのルールを変更できる。また、今回は『春風』と『サラマンダ―』の有志による連合としての決闘なので『協議会への招待』は祐樹、カノン、レイ、グランジュが持ち、他の『サラマンダ―』の幹部らには与えられない。
最後に、ギルドマスターが倒れる、幹部とサブマスが全滅する、降参する、特殊ルールの条件を満たす、のいずれかで決闘が終了する。終了後は通常の決闘と同じくチップがやり取りされる。今回の対黒雷戦線の場合、ギルドマスターは1人しかいないので必然的にカノンが選ばれる。――――これらはカノンが教えてくれたことだ。意外なことだが、レイではない。カノンは時々あの無邪気さを失い、シリアスモードになることがある。あれは通常のカノンから出てくるとは考えにくく、考えたくない説明だった。
★ 会議より6日後 黒雷ホーム前
黒雷のホームはとても広い工場地跡のような雰囲気だった。どこまでもザ・不良を地で行くギルドだ。だが、よく見ると、それなりの数の部屋がありそうであった。雰囲気と利便性の両立という点では評価できそうだ。住みたいとは思わないが。
12時間前、俺が単独で来た時とはまた違った緊張感がある。俺はレイから1人で宣戦布告をしてくるように命じられたのだ。いくら『電光石火』という離脱にも向いたアビリティがあるとはいえ、レイがされていたように絡まれたり、脅されたりと危険は存在する。宣言を行った場合、相手のギルドメンバー全員に通知が行くようになっており、幹部以上には顔と名前まで知られてしまうようだ。この通知は決闘開始と終了時に頭の中に浮かぶものと同様の物だという。ともかく、レイの作戦のうちとはいえ危険極まりない行為に内心冷や汗をかきっぱなしである。普通の高校生に何をさせやがるあの古風幼女は。宣言側ある程度のルール、時間や場所等を決めることができる。拒否されればそれまでなのだが。その場合は『協議会への招待』の上位アビリティ『協議会の開催』で強制的に協議させられる。参加メンバーは任意だ。今回提示したルールは場所と戦闘参加人数だ。室内を除く黒雷のホームとその周囲500mという黒雷側に有利な場所と5人という連合側に有利なものなので、拒否されることはなかった。参加者はすでにお互いの知るところであり、幹部以上の5人が黒雷側の参戦者だ。少数精鋭戦は黒雷の方にも都合がよいのだろう。
そして12時間後の今、俺はカノンとともに黒雷ホームの正面に堂々と陣取っていた。開戦までは残り30秒を切っている。
「カノン、大丈夫か?」
「だっ、大ジョブですっ」
「大丈夫に聞こえないぞ」
まだ無邪気モードなカノンにひとまず安心しつつ開始を待つ 『残り15秒』
「うぅ……。やっぱり怖いですぅ」
カノンはだれにも聞こえないくらいの声でつぶやく 『残り10秒』
これまでの人生で感じたことのない緊張感が俺を襲っていた 『残り5秒』
この世界で初めての大規模決闘『4』であり、悪との戦いであり『3』格上との戦いであり『2』、仲間との戦いであり、『1』、『春風』としての戦いである―――――『0』
さぁ、決闘の始まりだ




