懇願
“サガータ公開裁判所”にて
「これによりクリーフ氏の正当防衛が立証された」
ザワザワ‥
判決を聞いていた傍聴席の町人達は納得のいかない顔をしている。一際目立つのが酒場の店主とアランだ。
ほぼ全員が裁判所から退出した後だった‥
バシン!バシン!
「この糞運び野郎が!テメェのせいで!!」
静かな傍聴席で頬を殴る音が響く。
クリーフは既に馬で町を出ていた。
「これでも喰らえ!!」
馴染みの客を殺された怒りや理不尽な判決の矛先が弱者であるアランに向けられていた。
「やめないか!」
退出してから戻って来たのは世話焼きの爺さん・マークだった。
「アランは小遣いを稼いだだけだ!違うか店主?」
「クソが!命拾いしたな!」
ズカズカと店主は後にした。
傷だらけのアランと一人の老人がノロノロと歩き出した。
「なぁ爺さん‥いや、マーク‥」
「何だ改まって?」
歩きながら会話する。
「肩はもういいよ‥」
「そうか‥」
それからは普通に歩き出した。
「俺の居場所は完全に断たれた‥これからは好きにするよ」
「先ずは傷の手当てだろうが‥」
マークが話している途中でアランは小屋へ走り出した。
「爺さん!!馬を借りるよ!!」
走りながらアランは一言だけで走り去った。
「待てアラン!どこへ行く?」
サガータの町を馬に乗った青年が走り抜けた。
しばらく馬を走らせた。
辺りは禿山とサボテンばかりだ。
無一文でボロボロのまま抜け出して来た。
少し先に灰色の洒落た服と馬が見えた。
木の枝に上着を掛けており、焚き火も見える。
「クリーフさーん!!‥いますかー?」
辺りに声をかけるアラン。
時刻は夕方になり夕陽が眩しい。
くたくたになって下馬した。
少し休憩だ。
カチンッ‥!
背中に銃口を突きつけられた。
「私に何の用かな?グラフ君‥」
夕陽を背にしたクリーフがピストルのハンマーを起こして警戒している。
「クリーフさん!」
安心したと同時に恐怖に駆られる。
「何故私を追う?」
「あ、あなたの弟子になりたいんです!」
「馬鹿な事を‥見返りは何かね?」
「今は無一文ですが、いずれ右腕となります!」
「ほほう‥それだけか?」
ピストルのハンマーをデコックした。
一部警戒は解けたようだ。
「俺は町では厄介者扱いです」
「他にも道はあるだろう‥」
「もう下らない事で頭を下げたり、殴られるのは勘弁だ!!」
溜まっていた鬱憤が爆発した。
瞬間、クリーフはニヤリと笑った。
「無一文と言ったが何か欲しいな‥何でも良い‥探せ」
クリーフがガンベルトに銃をしまって言う。
薄汚れた上着のポケットから朝に使った古い櫛を取り出す。
「あなたにはゴミかもしれないけど、母の片身です」
「‥なるほど‥分かった」
ボゴッ!
櫛を受け取った瞬間、思い切り殴られた!
「な、何するんですか!!」
地面に飛ばされたアランが睨む。
「教訓その一、誰も信用するな‥信じられるのは己だけだ‥着いてこいアラン!」
「は、はい!」
アランは産まれてはじめてよその町へと行く事になった。




