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普通は異世界に落ちる  作者: fosel4
15/15

計画(2)

僕は、ベットで計画を立て直していた


「高校の時、試験勉強をこんな風にやったらよかった」


寝るとき以外の時間は全部、先輩を倒すための計画を考えていた

できれば、僕が痛くない方向で


「でも、一撃も当たらずに勝つことは...」


無理だろうな


「レベル1が23に勝つ、という考え自体がおかしいからな...」


口で言うと、おかしい感覚だ


「現実でこんな言葉使うとはね」


レベルとか、勝つとか...

笑う話だ、本当


「今日で三日目か」


下準備はうまくできているとは思う

でも、何かが足りないような


「だますためか...」


大事な何かを、見逃しているような気分

...なんだろう


「四日目、五日目、六日目、七日目」


僕がやろう、と思った日は四日目

’手持ちも十分’なはずなのに...


「なんで、こんな気分になってしまうんだろう」


...ちょっと、待って?


「インベントリー」


インベントリーの中には、二日前に買ったものが整理されていた


カバン、煙玉8個、短剣3本、2mの縄が1個、赤いポーションが5個、スクロールが1個

そう、僕は煙玉しか、使ってなかった


「...」


四日目は、先輩は油断する

そう決めて、僕は行動している


「じゃ...もう一個、きっかけが必要だな...」


せめて、明日、僕はやる気なんかない、と先輩が考えるようにならないとだめだ

そのため、僕は煙玉を使い、やられた


「でも、三日連続だったら、どう思う?」


ばか、だと思うだろう

...と考えたいだけだ


「だったら...計画、変更だ...」


作戦名は、そうだな

『負け犬』作戦で


「...後輩君、一人で何しゃべっているの?」

「うわああ!びっくりした!!」

「あら」


僕はびっくりして、跳んで逃げてた


「いつから?!」

「まあ、ついさっきだよ、何を言っているのかも聞こえなかったし」

「あ、そうですか」


聞こえたら困る内容ばっかりなので、聞こえなかったならいい

...って、ポジティブに考えている場合じゃないか


「いや、嘘よ、何かきっかけが必要なの?」

「あ...」


僕は、そんな先輩の言葉に、ほっとした

そうか、そう聞こえたか

つまり、先輩はまだ、こっちの戦略を分かってはいない

ただ、僕が勝つため、何かを探していると思っている


「まあ、三日連続、やられたら...そうですね」

「じゃ、そろそろ本気を出したら?」

「...」


バレバレだった

...いや、むしろこれは好機かもしれない


「...わかりました、じゃ、行きましょ」

「あら...何事も言ってみるものだね」

「傷つけたら、僕の勝ち、それは、変わりませんね?」

「ええ、もちろん」


僕は全力を出さない

でも、全力で戦うように見えたらいい


「...できるかな」


僕は先輩の前に立ち、深呼吸をした

体は震えて、精神は三日前から限界だった


「行くよ? 後輩君」

「...はい」


でも、やるしかない

それ以外の選択肢は、ない


「はじめ!!」


僕は、いつものように、煙玉を地面に投げた


「また同じ」


それには構わずに、僕に近づいてくる先輩


「知っていました」


僕は、インベントリーから短剣を出して

先輩なら、正面から、来るだろう

腹、それとも、後ろから攻撃

僕に手加減するために、武器は使わない

僕が死ぬかもしれないから


「はああああ!!」

「くっ...!」


僕は、飛んでくる拳に短剣を刺した

でも、力の差、というのは、そんな簡単に埋められない


「...来るタイミングに合わせて、ねぇ、よく考えたね? 後輩君」

「くう...!」


会心の一撃は、簡単に止められて

刺した短剣は、先輩に届かずに、手で止められていた


「でも、良くない判断、私が剣を止めたら、どうするつもりだったの?」

「...まあ、その時は...」


僕は、目の前にインベントリーを出す

そして、残った片手で短剣を刺した!


「こうしたら...!」

「見え見えだよ」


当然のように、不意打ちは止められた


「見え見え、だったんですか」

「ええ、君にはそれしかないからね」


捕まれた手を、動かそうとしても動かない


「掴まずに、気絶させたらよかったのに」

「あら、そうしたらよかったかしら」

「はい、まあ、先輩が苦労しませんから」

「...どういう意味なのかしら」


僕は、インベントリーを足の前に出した


「そっちの方が、簡単だったと言いたいだけです」


そして、にやり、と笑った


「ーあら」

「ふうっ!」


そして、足で短剣を投げた!

距離は1mもない

さすがに、先輩もこれは避けられないだろうー!


「無理よ無理、後輩君」


ぱあん!

腹に激痛が来て、前が暗くなった


「どう...やって...?」

「足で吹き飛ばして、避けた」


あ、そうですか


「まあ、でも危なかったね、よくやってくれた、後輩君」

「う...」

「でも、切り札を本当に見せるとは思わなかったけど、意外に挑発に乗るのね」


僕は、先輩のことは無視し、動けるかだけを確認していた


「まあ、頑張ったね、じゃ、おやすみ、後輩君」


そして、動いた

それだけ、確認できたらよかった


「くそ...」


そして、これで何回目か、わからない闇に巻き込まれて

ぱああん!

僕は、意識を失った


...


「ふう...危なかった」


最後は、本当にやられた、と思った

でも、これで後輩君も少しはわかったはず


「無理だ、ということ」


これで、後輩君は戦略を元から変えなければならない


「万が一でも、勝てることはないだろう」


これから三日間で、そんな戦略を立てて、勝つとかはな

だから、これが全力でも、全力じゃなくても

後輩君は手のうちを見せた


「同じ手段は通じない、それくらいは知っているはず」


なのにも見せた、ということは、まだ残された手段があるのかな


「...まさか」


インベントリーから不意打ち、という発想までが限界だろう


「考え出したとしても、明日まではねー」


多分、早くても二日じゃないかな

それとも、心が折れて、もうやらない、というかもな


「できれば、心が折れてない状態で、諦めてほしいけど」


外の化け物はさすがに後輩君には厳しいすぎる

運が良くて、倒すことができるかもしれないけど

命を運に任せることは、馬鹿がする行為だ

盗賊は確実に戻ることができる時だけ戦う


「そういう観点だと、後輩君は全然盗賊には合わないような」


まあ、明日の後輩君の様子を見ればわかるはず


「さて、運ぼうか」


...そして、後輩君は何も言わず、何もせず

一日を過ごした


「...やっちゃったかな」


ため息、後輩君が来てから何回目だろう

別に、あの子が悪いことでもないのにな


「やれやれだね、本当に」


もしかしたら、私がこわしたかもしれない

そういう考えが頭から離れなかった

明日、どんな顔をして会ったらいいんだろう


「まあ、何とかなるさ」


...


次の日、私はグラウンドに先に行って、後輩君を待っていた


「あら、後輩君、早く来たね」

「...先輩が早く待っていましたので」


いい返事、まだ心は折れてなさそうだ

でも...


「...なんですか?」

「めっちゃくちゃ震えているよ、地震でも起こったのかしら」


戦う意思がない

...いや、違うかな


「...それで、手加減でもしてくれるんですか?」

「いや、もちろんそれはないな」

「ですよね」


でも、手加減はしない、と考えても、気は緩んでいた

早く終わらせて、楽にしてあげよう、と考えていた


「さて、と、はじめようかな、後輩君」

「...」


後輩君は目を、閉じた


「どうした? 始めなくてもいいのかしら」

「少し、考え事をしただけですよ」

「そう」


そして目を開けて、私をみた

初めに見たときと変わらない目だった

自分をせめて、でも、諦めてはいない

だから、わからない

後輩君にもう手段はないはずだ


「始めるか」

「...はい」


だから、面白い


「3」


手段も方法もないのに、私と戦おうとする


「2」


それとも、他の方法を考えたのかな


「1」


同じ方法はダメだよ、後輩君

したら、1秒で決着をつけてやるから


「はじめ!!」


と、言った瞬間だった

目の前から、手裏剣が飛んできていた

不意打ちだった


「...!」


飛んでくる手裏剣に、真っ直ぐ突進することになった

でも、反応できないほどではない

その程度で埋められるレベルの差ではない

たっ


「残念だったね!」


と言って、飛んでくる手裏剣をつかみ、前をみると

後輩君は消えて、煙だけがあった


「...そう来たか」


でも、迷いは一瞬だけ

私は、煙の中で後輩君を気絶させたらいい


「はあっ!」


拳を、元の位置へあてる

それだけだ

でも、そこに後輩君はいなかった


「読んだ、ということ...」


だとすると、攻撃してくるはず

その位置は、右か左しかいない

さて、どこから来るのかしら

ぱあん!


「右か!」


今回はすこしひやひやしたけど、レベルの差が圧倒的だ

もう位置さえわかったら、困ることはない


「楽にしてあげるからね、後輩君!」


と言いながら、飛んでいくと

目の前に、剣があった

拳をあてようと思ったところへ、剣があった


「く...!」


それをみて、慌てた

捕まえて、気絶させたらいいのに

それが、できなかった

次、どんな手を打つのかがわからない


「飛べ!」


そう思って、私は足で後輩君をけっ飛ばした


「くはあああ!!」


勝った

これで、おわり

やりすぎだったとは思うけど

ぱあん!という大きな音と一緒に、後輩君は地面に落ちた


「ふう、びっくりした」


後輩君、派手に飛んできたし、大丈夫かしら


「これはやっちゃったかな」


そう思って、倒れている後輩君に近づく

本当に、今回はひやひやした


「さて、よい夢を」


でも、おかしいな

普通だったら今頃、苦しく息を吸いながらいるはずなのに

と思った瞬間だった

ぷしゅっと、体に冷たい鉄の感触が感じられたときは


...


単純と言ったら単純な戦略

...死んだふりをすること

きっかけは、地味なことだった

 

僕は倒れて、ベットの上で起きる

この世界は、ゲームに近い世界で

とはいっても、死んだら、旅館で起きる、ということはあるのかな

答えはたぶん、NOだろう

じゃ、論理的に考えると、先輩が手加減して、僕が死なないくらいに手を抜いてくれている

...ということになる

じゃ、考えてみよう

『気絶している僕は、だれが運んでくれた?』だ

簡単だ。 


じゃ、その一撃を耐えて、不意打ちで傷を与えたらいい

...でも、それをどうやって耐えて、どうやって傷を与える?

単純な答え...とは言えないが、僕は、いつも意識はあった

だが、行動することもできないくらい、痛いだけ

全身がぐちゃぐちゃで、言葉もうまく話せない状態になる


なので、用意したものがこれ、『赤いポーション』

気絶して、起きると不思議にも、痛みはなかった

なら、何とか一撃くらって、使ったらいいという話

だから、飛んだらいいなーとは思っていた

倒れるとき、赤いポーションを腹か腰に置いたら

ポーションは壊れて、皮膚に当たってー

痛みは、消えるから


...こんなにすぐ治るとは思っていなかったけど、まあ

それと、僕の意識が残っているからと言って、傷を与えることは無理

そこで、考えたことがインベントリーだった

僕がイメージするだけで、どこでも出で来る不思議な技

手を出して、掴んだり、押したりしたら中にあるものが現れる


カタカタと、だれかがこちらに歩いてきている

先輩だ

位置は夜に何回も試してみた

足の上、だいたい40cm離れた場所だ

適当にやっても、短剣は出てくれた


ぷしゅっ


気持ち悪い音と感触がした


「あら、あら」


そして、起きて、確認

短剣は、確かに先輩の腹にー


「う...」

「どう? 初めて人を刺した気分...いてて」

「気持ち悪いです」

「なれないと困るよ?」


だから、慣れたくないって


「本当に、頭いいね、後輩君は」

「それほどでもないと思います」


頭がよかったら、死んだふりもせずに勝つことができたはず


「僕にはここまでが限界でした」


こんな無茶な方法しか、思い浮かばなかった


「いや、でも君はやって見せた、それで十分だよ」


そういいながら、先輩は僕の頭を撫で始めた


「あ...あの、頭をなでるのはやめてくれませんか」

「照れてるの?」

「まあ、はい」


先輩がニヤニヤしている


「君はやさしい、そして賢い」

「あの、褒めすぎじゃないですか」

「まあ、ね」


そういい、先輩は頭から手を離した


「だから、理解してくれると信じている」

「...はい?」


そこからは、一瞬だった

腹に衝撃、そして、目の前が真っ黒になった


「インベントリー!!」


でも、まだ生きている

かあああん!

音のおかげで、壁にぶつかったことが分かった

悲鳴をあげる暇もない


「本当に、ごめんね? 後輩君」


目の前は真っ黒だった


「いや、僕が目を閉じているからじゃねぇか!」


目を開けると、飛んでくる閃光

先輩の姿があった


「ふ...」 


ぎりぎりだった

何回も気切しながら鍛錬されたことがなかったら、一瞬で死んでいた


「なんとか、生きているな」


壁と激突する前に、何とか赤いポーションを出して

僕は、意識を保つことに成功した

でも、先輩はまだある


「...切り札か」 


僕は、スクロールをだした


「...あら、それはー」


一瞬、だった


「理解、してくれると信じている、ですか」


ぱあああん!

光が、僕の体を包んだ


「ああ、使いたくなかったけど、これ」

「そのスクロール...攻撃用じゃなかったよね」

「まあ、人の心理、というやつです」


一回、僕は先輩をだました

気絶した、と勘違いをするように


「だから、これに反応してしまうのですよ」

「そのスクロール...一体何なの?」

「ああ、これですか、単純ですよ」


僕は、勝てない

だったら、ここで質問。

勝てない相手を目の前にしたとき、できることは?


「逃げること、町帰還スクロールですよ」

「...完全に、バレバレだったということだね」

「いや、まあ」


最後の最後まで、隠していた切り札

使いたくなかった

ていうか、信じたかった


「周りの人が、嘘つきだらけだったので」

「あらら、それは...」


だんだん、先輩の顔が見えなくなる


「だから、まあ、信じています、先輩」

「何を?」

「理解してくれると」


そして、先輩は消えていった


「逃がさないよ? 後輩君」


それを最後に、僕は光とともに飛んだ


かああああん!!


「は...派手に来るよな、これ」


僕は、町のなか、魔法石の上に転がっていた


「まあ、こんなド派手に来ると見やすいからむしろいいけどな」


周りを見ると、来ているはずだ

...静かだけど、来ているはず


「あの、困るからもう来て欲しい」


今からでも何とか身を隠して逃げるか?


「...いや、それは無理だ」


多分、一日もかからずに見つかるだろう

だから、保険をかけた

それが、理恵だ


「でも、このざまか」


いや、諦めるにはまだ早い


「何とか、逃げないと...」


考えろ、考えてくれ僕の頭

この状況を何とかする方法を


「...ない!」


どう動いても

どう行動しても、捕まる


「掴まって!」


奇跡が起きない限り、だ

たああっ


「僕もド派手に来たけど、君も半端ないな!」


理恵は馬に乗ったまま、僕を乗せた


「落ちるな!」

「頑張ってみる!」


そういって、僕は落ちないよう、理恵に後ろからだきついた


「よく掴まっていて!」


ぱああん!!

周りが残像にしか見えないぐらいのスピード


「とば、飛ばされ、飛ばされるうううう!」


全力で抱きついても、耐えられないくらいのスピード


「耐えて!なんとか!」

「何とかといっても...!」


このスピードだったら、赤いポーションがあって、使ったとしてもどうなるかわからない...!


「死ぬ!死んじゃうよ!?」

「ああ、もう、うるせぇな、男だろう!」

「それ関係あるのか!」


指の力がだんだん抜けていく


「もう私たちは盗賊の標的になっているんだよ!なんとかして!」


そういわれても、困る


「あ!」


方法はあった

インベントリーを現す


「あった...!」


それは、盗賊ギルドで買った縄


「これを何とか出して、縛ることができれば!」


よく考えた!僕!

すごい!

そして、足で縄をだす


「あ、これ縛る方法は考えてなかった」


どうしよう

足に引っかかっている縄はもう落ちそうだ


「これ、何とか使えなさそうか!」

「...!」


理恵は後ろをちらっと見て剣を出した


「ひゃい?」


ぱあん!

一閃

僕の足に引っかかっていたなわは消えて、理恵が持っている剣に引っかかっていた


「す...すごい」

「縛るぞ!」


それは、20秒もかからなかっただろう


「で、なんでこうなった...」


僕は縛られて、後ろだけをみて走っていた


「後ろからくると教えてくれ、もう1分もかからないから!」

「くる」

「...!」


後ろから、とんでもなく早く、何かが飛んできていた


「馬のスピードを超えているな、ありゃ...」

「逃さないよ...後輩君!」

「逃してくれると嬉しいですけど!」


先輩だった。

先輩は説明できないほど、すごく速く追い付いてきた


「あ、忍者みたい」


そうそう、忍者みたいだな

手裏剣も投げているし、完全に忍者だ


「って手裏剣!?」

「ちっ!切れなかったか!」


手裏剣は縄をぎりぎりに外した


「ふうっ!」


きゃあん!

次の手裏剣は理恵が剣でとめた

...と思われる音がした


「全然見えない」


僕がなんとかできるレベルじゃない

次々と、剣で何かを叩き落とす音がする

何か、何かできることは...

20秒? いや、少しだけでも時間を稼いだらそれでいい


「あった...!」


よく働いてくれた僕の頭!と褒めたいところだが、そんな余裕はない


「インベントリー」


そう、ゴブリンの時と同じだ

行動を邪魔すること

そのためには、僕ができることは...!


「...あ」


ぱああん!

手裏剣ではだめだとわかったのか、先輩がスピードを上げてきた


「はあ、はああ! 捕まった!!」


僕は、赤いポーションを投げた


「うっ...!」


投げて傷つけることが目的ではない

ただの邪魔、それでいい

そうするためには、目を封じる必要がある


「健康にいいっすよ、それ」


それは、ほんの一瞬でいい

先輩の動きは鈍くなった


「走れ!」


その瞬間に、距離はとおく離れた


「何秒のこった?!」

「今!」


その言葉と一緒に、

城の壁が見えた


「平地ではさすがに追い付けないだろうな」

「そうなの...?」

「盗賊はすばやく移動することが得意だけど、平地だと持久力で差が出てしまう」


つまり、体力が持たないということか


「でも、これからどうするつもり?」

「だな」


そこまでは考えてなかった


「そういや、理恵、兜ついているな、今日は」

「戦闘になるかもと思っていたから、どうした?」

「...女だとわかっていても、男の声が出ているのが妙に引っかかって」

「そう」


会話がおわった


「なあ」

「どうした」

「...今、どこへ向かっている?」

「どこか、行きたい場所はあるか?」


こっちに聞くか

まあ、都合はいい


「僕が捕まった、森へ」


僕には、この目で確認しないとダメなことがある


「...わかったよ」

「ありがとう」


そういい、空を見る


「きれいな空だな」

「夜には、もっときれいになるよ」


僕が生きていたところとは大違いな空

それが、なんていうか


「うん、マイナスな気分になっちまうな」


ただ、空を眺めるだけでこんな気分になるとはな


「まあ、生きていれば、いつか機会はくる」

「...それ慰めているの?」

「頑張ってみた」


向いてねぇな、と思う


「まあ、そう簡単に死んでもいいのか、と言ってた人の真似だよ」

「...」


向いてないな


そして、走った

走り続けて、夜になった


「遠いな」

「ここから1時間だけど、どうする?」

「今すぐ行く」


でも、結構馬で走ってきたのに、まだ1時間もかかるのか


「夜も遅いし、魔物がでるかもしれないけど」

「...すまん、何とかならないかな」

「わかった」

「あれ、反対すると思った」

「絶対に聞かないだろう」


はい、ばっちり


「じゃ、行くか」


僕が確認したいことはいろいろある

でも...


「なあ」

「どうした?」


確認したところで、なにが変わるだろう


「どうがんばっても、うまくいかなかったら、君はどうする?」

「はあ」

「なんとかした、と思ったのに、悪い方向に進んだら」


自分で言ってわからない説明だけどな


「いや、なんていうか、理恵は、ねえ」

「まあ、、君ほどひどくはないと思うけど」

「僕、そんなにひどい状況だっけ」

「...」

「じっと見ないで、わかっているから...」


今の僕よりひどい状況ってめったにないと思うし


「もっと頑張る」 

「それだけ?」 

「まあ、言ったでしょう、私は君ほどひどくはない、って」


頑張って、だめだったらもっと頑張る


「でもよ」 

「最悪、ではないでしょう? なら、頑張れるから」

「最悪?」 

「死んでいないから」 


生きていれば、生きていたら、どうにでもなるということかあ...


「誰かさんのせいで、こんなふうに考えるようになってしまってね」

「...なあ」

「どうした?」

「ありがとう」


そういうと、理恵は黙った

デレたのかな?


「まだ着いてない?」

「...すこし、回り道をしている」

「はあ?」


どうしてだ?


「そんな目で見るな、ここ、異常と思われるほど入り口に見張りりが多い」

「へえ、盗賊ギルド?」

「どっちなのかはわからないけど、気をつけて悪いことはない」


だろうな


「着いた」


馬から降りると、見たような風景が


「着いた、じゃねぇよ、どこだよここ」


僕の記憶があっていたら、木だらけの森だったはず

でも、ここは何もない


「なあ、どうなっているんだ?」

「...あのレベルの戦いがあると、当然こうなる」


当然、かあ

森だったところが木は切れて根元しか残ってない

あっちこっちが穴だらけだ


「だといっても、ここまでひどいの?」

「ああ、レベル60くらいの戦いだと、山が無くなった...という記述もある」

「まじか」


もう人間じゃないな、あれは


「でも、ここまで破壊されていると、探すことも面倒くさそうだな」

「じゃ、分担するか」

「...見張りは大丈夫?」


確か、いたから来ることが遅くなったはずだ


「言っただろう、おかしいくらい見張りが入り口に多いって」

「...言ったな」 


うん?だったら...


「ああ、ここの周りはおかしいくらい誰もない」

「ふうん...」


まあ、いっか


「じゃ、分担するか?」

「いや、一緒がいい」


確かに、分担して探すと早いかもしれないけど


「...一緒に、探してほしい」

「...わかったよ」


でも、離れたくなかった


「すまん」

「謝るな、しょうがないことだ」

「うん」


言葉が、うまく言えなくて困る


「さて、ここが私とひいろさんが君を...」

「...」

「え、と、すまん」

「いや、まあ、いい」


そういって、前を歩いてくれた


「まず、戦いが一番激しかったと思われるところへ行こう」

「それ、わかるのか」

「まあ、ここまで暴れたらな」


そういいながら理恵は進んだ


「...だんだん周りがボロボロになるな」


地面が割れて、木がボロボロにされて


「やばいな」

「やばいね」


まるで地震でも起きたような感じ


「それで、ここだが」

「怪しげなものがあるね」


地面が、周りと違っている

だんだん、不安が大きくなっていた


「本当に、大丈夫か」


理恵は、僕を眺めた


「...いま逃げることなんて、もう無理だし」


そういって、僕は地面の土を掘り出した


「...あ」


そして、見えたのは


「見るな」


前が暗くなった


「すまない、見ない方がいい」

「...大丈夫、大丈夫だから、見せて」


僕は、冷たいけど、優しく接している理恵の手を離した

そこには、もう、人間だとは思われない...

緑色の、体があった


「あ」


立ったまま、僕は何も言えなかった

人間って、死んだらこうなるのか

頭が、回らない


「見てしまったね」


それは、聞いたことがある声


「本当に、手がかかる後輩、だね」

「ひとう、下がって」


背中から感じる気配

後ろには、先輩が立っていた


「ここに来ると思ったよ」


理恵は、黙って戦闘準備に入った


「見たら、もうわかっていると思うけど、後輩君」


それに構わず、先輩は話を続いた


「隣にいる人は、信じられる人じゃない」


知っている

僕もそれを知って、つれてきたことだから

...ああ、でも、もうないか


「あはっ、そうか」


何も、ないのか

信じるられる人も、友達も

本当に、僕は、何も...


「なあ、理恵」


僕は、死んでいるのと同じかもしれない


「先輩は、どうやって、こんなに早く来た?」

「それは...」 

「この周りは盗賊ギルドが見張っているからだよ、後輩君」


先輩は、近づいてきた


「それ以上近づいてくると、切る」

「ここには、君の上司が切った人が3人もいる、増えるつもりならそれでもいいけど、ね?」


にやにや

笑っている先輩がむかつく


「やってみて、私は四人目になるのか」


理恵は、黙っていた

それを見ながらも、僕は理恵に何も言えず

ただ、その場で座っていた


「ひとう」 


もう、どうなってもいいや

僕が、何かをしようとすると誰かが傷つく


「ひとう!」


ああ、こうなると知っていたら

こうなるとわかっていたら

ここに落ちてきたとき、死んだらー


「ひとう ふつ!!!」

「はい!!!」 

「しっかりして! ここで死のうとでも考えているなら、ぶん殴るから!」

「でも...」 

「でもじゃない! 君が諦めたら、私はなんになる!」


...そうだった

諦めようとする理恵を手伝って、ここまで来て

僕は、なにを考えていた!


「あら」


落ち着く

そして、状況を確認して、どうすればいいのかを考えろ

インベントリーには何があるのか

何を言ったらいいのか


「ちょっと、待って」


そして、僕は気づいた

緑色の、体?


「理恵!!、30秒だけ!」

「わかった!」 


きゃああん!

鉄と鉄がぶつかる音

でも、後ろは見ない、信じて、僕ができることをやるしかない


「おかしい」 


そうじゃないか?

人間は、死んだらどうなるか

見たことないから、まあ確かにはわからないけど

でも、緑色はねぇだろうが!


「はあ...?」


そして、周りの土を全部片付けると

同じ服を着ている


「ゴブリン...!」 


3体のゴブリン死体が、あった


「なんだ、いったい、なにがどうなっている...?」


僕は、ぼやっとしていた


「先輩、説明」

「はあ?」 

「説明!!!」


戦っている二人が止まる


「何を?」 

「これは、いったい何ですか」


先輩はわけがわからないような顔をしていた


「なんですか、と言っても、死体だね」

「誰の、死体なのかを聞いているのです」


この世界では、人間が死んだらゴブリンに変わるとでも言うのか


「何が言いたいの?」

「先輩の目にこのゴブリンたちが人間に見えるなら、今すぐ病院でも行くことをお勧めしますよ」

「...は?」


どうして、この周りは盗賊ギルドが見張っているだろう

それは、死んだから

大事な仲間が死んだから


「本当に、それだけ?」


もうここへ来て1週間がすぎた

死体は地面の中

犯人はまた戻る...とはいうけど


「そこまでする必要、あるのかな」


おかしいだろう、どう考えても

まあ、あるかもしれないけどさ


「じゃ、どうしてだろう」


どうして、見張りが入口にそんなに多かったのか

どうして、中には見張りがなかったのか


「その理由は、仲間にも見せたくないから」


何か、どうしても隠したいことがあるとき


「と、思うしかない」

「......」


先輩は、黙っていた

おかしい、とは思えなかった

忙しいし、考えることが多く、僕の頭が回らなかったこともある

どうして、という疑問は本当に大事で、当然だ


「どうして、見張りはここにはいないのか」

「見張りの位置は不思議なくらい入り口の周りにあった」


ここは山で、決められた入口がない

でも、それを気にせず、現場の周りはだれもなく、入口の周りだけ


「考えられる理由は二つ」


一つ、現場の保存

当然な理由で、だれもが思うこと

でも、この辺りには、先輩しかなかった


「だったら...」 


何か、隠したいこと

ばれたら、ダメなことがあるからだ


入り口にはあるのに、ここにはないのは不自然だということだ


「まるで、ここは誰にも見せない、ということじゃないですか」

「でも、私はみた...死体を見たんだよ」


先輩は言った 


「じゃ、人間は死んだらゴブリンになる、とでも?」

「ひとう」 

「...すまん」 


3人そろって、黙っていた

先輩も、理恵も、僕も

何がどうなっているのかがわからなかった


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