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She is a vampire【挿絵あり】  作者: べなお
◆Ⅳ A world where no one gets hurt

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第十五話

挿絵(By みてみん)


 逢見祭は逢見学園創立の時から続く、歴史ある学園祭だ。地元地域と密接に連携し、近所の飲食店などの協力も多い。都心から多少外れた位置にあることもあって、若者との交流の貴重な場となっている。


 地元有力企業の寄付も大きいようだ。配布されている学園祭のパンフレットには、有名企業の名前がいくつも並んでいる。


「何とか生徒会の作業は一段落したか……。一回生徒室で仮眠を取らないとだめだ」


 極度の睡眠不足。直前まで事務作業や出店の確認作業に奔走していたせいもあって、学園祭開始して早々に体力が尽きている望。それとは対照的に、校舎の廊下にはお化け屋敷やラーメン屋、ゲーム体験コーナーまで様々な出店の看板が並んでいる。生徒たちの喧騒も、普段の何倍も大きく、活気づいている。


「叶くんラーメン食べてってよー」


「ああ。ごめん、後で行くよ」


 同級生の女子から声を掛けられる。去年と比べれば、随分自分のことを知っている生徒も増えた。知り合いが一人もいないどころか、疎まれる対象だった頃に比べればまるで別の世界だ。


 数か月前から準備してきたが、この祭りを全力で楽しんでいる皆の顔を見ると、多少は疲労を忘れられた。不安要素はあるが、あまり心配し過ぎても始まらないだろう。ひと眠りしてから出店を巡回するとしよう。


 生徒会室の扉を開く。


「お、叶君じゃない。お疲れ様、昨夜は眠れたかい?」


 そこには生徒会長がいた。いつも手入れの完璧な艶のある黒のセミロングヘアーが、気のせいか多少乱れている。他にも学園祭実行委員の生徒がいて、何やら話し合っていた。


「持ち帰り仕事があったんで、ほとんど寝てないですね。ちょっと仮眠させてください」


「どうぞどうぞ。そこの椅子を並べると寝やすいよー」


 どうやらそういう状況には随分慣れているようだ。


「いやー、それにしてもちゃんと始まってくれて良かった良かった。生徒会長と副会長が同時に居なくなった時はどうなることかと思ったけど、君のおかげでどうにかなったよ」


 ピンチヒッターで生徒会長となった奏は、そう言って望を労った。


 夏休み。連続猟奇殺人。生徒会。阿鼻叫喚。


 血塗られた記憶が一瞬だけフラッシュバックする。それを必死で振り払い、話を変えた。


「それで、会長は執事喫茶に行くんでしたっけ? 会長も休憩取って遊んで来たらどうですか?」


「私はトラブル対応係にかかりっきりでね。後で巡回しながら遊びに行くよ。生徒会長権限でおもてなししてもらうのが楽しみだ」


「ははは。職権乱用はほどほどにしてくださいよ。ていうか、仲良い男子と一緒に回ったりしないんですか?」


 自分でも、そんな質問が自然に出てきたことに驚く。しかしここまでの正統派の美人だ。一緒に回りたい異性は確実に多いはずだ。


 彼女は意表をつかれたように、真顔になる。その後窓の方に振り返ってその表情を隠した。


「そんな相手はいないさ。いなくなってしまった」


「……会長?」


 地雷踏んだ?


「ふふふ。後輩の女子と回る約束をしているよ。君も遠慮せずに学園祭を楽しみたまえ。それは我々生徒会の特権だ。楽しんでいる生徒達の顔を眺めて、報われるという権利がある」


「確かに、それくらいの権利は主張していいですね」


 横になって目をつぶると、眠りに落ちるまでは一瞬だった。誰かのために動いたことによる疲労感は、不思議と不快なものではないのだな、と思った。

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