表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

第7話 むちむち僧侶ちゃんは俺を堕としたい!

 18年間守り続けてきたファーストキスをアレスに奪われたその日の早朝。


 気がつくと俺は自室のベッドの上ではなく、何故か冒険者ギルドのクエストボート前に立っていた。




「――ハッ!? ここは!?」

「……あっ、ダルくんの意識が戻った」

「あ、アレスッ!? えっ、なんで俺ギルドに居るの!? さっきまで布団の中に居たよね!?」




 シュバッ! とギルトに備え付けられた時計の方へと視線をよこす。


 時刻は……午前8時少し過ぎ。


 つまり俺は軽く2時間近く記憶を失っていたことになる。


 い、一体俺の身に何が起こったというのだ!? アナザーディメンションか!?




「……それよりもダルくん、今日はどんなクエストを受けようか?」




 現状に全くついていけていない俺に、アレスはいつも通りの口調と態度でそう声をかけてくる。


 あ、あれ? 俺、この子に告白されたうえに唇を奪われたよね?


 なんでこの子はこんな平然としていられるの?


 俺なんか心臓がバクバク過ぎて今にも口からまろび出そうなのに。




「も、もしかしてアレ(告白チュー)は夢だった……?」

「……どうしたのダルくん?」




 チビの俺と身長差があるせいか、アレスが前かがみで俺の顔を覗き込んでくる。


 瞬間、アレスのプルプルの唇がすぐ目の前までやってきて……うっ!?




「な、なんでもないっ! 大丈夫ですっ!」

「……でも顔、真っ赤っかだよ?」

「きょ、今日は日差しが強いからな! 焼けたんだろう、きっと!」




 アレスからサッ! と目を逸らしつつ、バクバクと高鳴る鼓動を誤魔化すように早口でそう捲し立てる。


 ヤッベ、今朝のアレスとのチューを思い出しちまった!?


 ちょっと今はマトモにアレスの顔が見れないわ!




「……ふぅぅ~~ん? そっか。うん、今日は日差しが強いもんね?」




 俺が目を逸らす瞬間、アレスが一瞬だけ瞳をギランッ! と輝かせ、いやらしく唇を歪めた気がするが、きっと俺の勘違いだろう。


 今朝の夢チューといい先ほどの幻覚といい、疲れているのかな俺?


 ところでさっきからアレスが妙に俺に近いんだが……これも俺の勘違いか?




「……それで? 今日はどんなクエストを受けようか?」

「そ、そうだなぁ……昨日の【薬草摘み】でアレスのレベルは上がったか?」

「……ううん、上がってない」

「となると、セオリー通りあと数回は【薬草摘み】をするべきなんだろうが……」




 チラッとアレスの顔を盗み見る。


 果たして今朝の告白チューが夢だったのなら、昨日のアレスの自宅訪問も夢だったのだろうか?


 そうなると冒険者稼業を反対している両親を説得するための実績づくりの話は俺の高度な夢のお話ということになるが……う~む?


 どっちだ? と俺が小さく唸っていると、アレスがまるで心を読んだかのように耳元にそのプルプルの唇を近づけ、




「……夢じゃないよ」

「――ッ!? おまっ!?」

「……ふふっ」




 蠱惑的な笑みを浮かべるアレスに反射的に視線を向ける。


 結果あと数ミリ顔をズラせば簡単にキスできそうな距離で俺達はお互いの顔を見つめ合い……アバババババッ!?




「……昨夜の件も今朝の件も、ボクは本気だよ」

「アバババババババッ!?」


「お、おい見ろよ!? ダルが公衆の面前で例の獣人美女とキスしようとしてるぞ!?」

「うわっ、マジだ!? クソッ、ふざけんなよ!? ここは法治国家なんだぞ!? 発情するにしても場所を考えろ、場所を!」




 女性にグイグイ来られたことのないチェリーな俺が固まっている間に、俺達の周囲がザワザワと騒がしくなる。


 アレスは獣耳をピコピコ揺らしながら「……うるさくなってきた」と顔をしかめて俺との彼我(ひが)の距離を離す。


 途端に我が相棒の果実のように潤んだ唇がスッ! と俺から離れていき……べ、別に残念がってないからね!? ホントだからね!?




「……とりあえず早急にボクのレベルを上げる必要があるから、今日はちょっと無理してコレを受けようか?」




 そう言ってアレスは頭に角の生えたウサギ型モンスター【ユニコーンラビット】の討伐書を手に取った。


 ユニコーンラビット――推定討伐レベルは10の危険なモンスターだ。


 性格は極めて獰猛、その愛らしい見た目とは裏腹に鋭利に尖った角で何人もの冒険者を(ほふ)ってきた【初心者キラー】として名高いモンスターである。


 だが、そんなユニコーンラビットであるが女性冒険者には何故か評判はいい。


 理由は簡単、奴らは処女には絶対に手を出さない誇り高き処女厨モンスターだからだ。


 しかも経験値も多く、お肉も美味しい。


 だから処女の駆け出し冒険者たちはこぞって【ユニコーンラビット】を討伐してレベルをあげる。




「……ダルくんが危険に晒されるけど、いいかな?」

「お、俺の盗賊レベルは34だぞ? 今さらユニコーンラビット如きに遅れを取るかよ。それよりもこの依頼を受けるということは、アレスはそのぅ……」

「……うん、ないよ。経験。……安心した?」

「アバババババババッ!?」

「……フフッ、余裕がないダルくんも可愛いよ?」




 コロコロと我がと男心を掌で(もてあそ)びながら、アレスは鈴の音を転がしたような声音でクスクスと笑う。


 うぐぅっ!? お、同い年のハズなのに、なんだこの大人の色気と余裕は!?




「……周りも騒がしくなってきたし、そろそろ受付に行こうか?」

「アバッ!?」




 アレスは俺の手を取るなり、冒険者たちの視線を振り切るようにツカツカと受付席へと歩いていく。


 途端に俺の視界は僧侶のレオタード服が食い込み大変いやらしい姿になったアレスの大きなお尻に釘付けになり……これで僧侶は無理があるだろ!?




「……ユリカ、おはよう。ユニコーンラビットの討伐依頼を受けたいんだけど、今いい?」

「あっ、アレスさん!? お、おはようございますっ!」




 我が冒険者ギルド№1受付嬢のユリカさんがアレスの顔を見るなりギョッ!? とした顔を浮かべる。


 アレスはユリカさんの表情の意味が分かっていないようで頭の上に「???」を乱舞させながらコテン? と小首を傾げた。




「……どうかした? 人の顔をジロジロ見て?」

「あっ、いえ!? その……ほ、本当にアレスさんなんだなぁ~っと思いまして。し、失礼ながら私、ずっとアレスさんのことを男性だと思っていましたので……」

「ユリカさんもですか? 実は俺もですっ!」

「あぁ、ダルさんも居たんですね。おはようございます」




 ユリカさんはアレスに向ける笑みとは違う営業全開のスマイルを俺に寄こしながら小さく微笑む。惚れてしまいそうだ。




「いやぁ~、ビックリですよね? てっきり鎧の中身は(いか)ついオッサンかと思ってたら、まさかこんな別嬪なお姉さんだったとは! 誰も想像できませんよね?」

「……別嬪」




 ポッ! と頬を赤らめながらアレスが嬉しそうにシッポをブンブン左右に揺らす。


 心なしかスススッ! とアレスが俺の身体に密着してきている気がするのは、俺の自意識過剰だろうか?




「確かに想像出来ませんでした。鎧の下にそんな凶器を隠していただなんて……」

「……ユリカのえっち。どこ見てるの?」

「ご、ごめんなさい!? つい!?」




 ユリカさんが慌ててアレスの爆乳から視線を逸らす。


 気持ちは痛いほど分かる。


 あのお乳様は反則だ、男女関係なく視線を吸い込んで離さないんだもん。


 なんだよ、あの胸は? 吸引力の変わらないただ1つのオッパイかよ?




「あのぉ、アレスさん? 僧侶に転職するのは構わないのですが……その服はどうにかなりませんかね? なんていうか色んなところがピチピチというかムチムチというか……」

「……コレ以上大きなサイズがなかったから無理。それよりも依頼の件を早くして欲しい」

「あぁ、そうですよね! ユニコーンラビットの討伐依頼ですね!」




 かしこまりました、と小さく頭を下げながらアレスから依頼書を受け取るユリカさん。


 そのまま手元の書類に視線を落とし、「あっ!」と何かを思い出したかのようにポンッ! と両手を叩いた。




「そうでした! 実はアレスさんに多数の冒険者たちからのパーティー申請のお誘いが来ているんでした!」

「えっ!?」

「……パーティー申請のお誘い?」




 素っ頓狂な声をあげる俺のとなりで、何故か不愉快そうに眉根をしかめるアレス。


 俺はそんなアレスを退(しりぞ)けユリカさんに声をかけた。




「ぱ、パーティー申請ってアレスだけですか!? 俺は!?」

「残念ながらダルさんは来ていませんね。むしろダルさんNGのパーティー申請なら山ほどありますが……」

「ヤダ、俺の評判低スギぃっ!?」




 ショックを隠せず両手で口元を覆ってしまうナイスガイ俺。


 なんでだよ!? 俺、ギルドへの貢献度は中々のモノだと自負していたけど!?


 何がダメだったの、俺の!? 


 教えてユリカさん!? と視線で訴えかけるも、ユリカさんは俺の不満気な瞳をアッサリとスルーしながらアレスに笑顔を向ける。




「どうしますか、アレスさん? 一応お試しとして1度だけパーティーで行動してみるのもアリだと思いますが」

「……その場合、ダルくんはどうなるの?」

「ダルさんですか? その場合は2人のコンビは解消して貰い、ダルさんにはソロで頑張っていただくことになりますね」

「えっ!? 俺も一緒にパーティーに入れて貰えるんじゃ!?」

「アハハハハッ! それは無いですね! むしろダルさんは要らないという声が多数ですね!」




 笑顔で心が壊れるような事を口にするユリカさん。


 鋼のメンタルを持つ俺でなければ今頃、俺を主人公とした凌辱ゲームが幕を開けていた所だ。


 よかったねユリカさん? 俺のメンタルが超合金で?


 しかしマズい、これは非常にマズい。


 アレスは早急に両親を説得するための実績が欲しい。ならパーティーを組んで難しい依頼を受けるのが一番手っ取り早い。


 だがそうなると俺はソロで活動しなければならなくなり……野郎のソロ活動なんて余程腕の経つ冒険者じゃないと出来ねぇよ!?


 ヤバイ、詰んだか!?




「……大丈夫だよダルくん。コンビは解消しないから」

「ああぁぁぁ~~~っ!? ……あぁっ?」




 1人頭を抱えて唸る俺を安心させるようにアレスはそう口をひらくと、スルスルと俺の足に自分の尻尾を巻きつけ始めた。


 そのままニッコリ♪ と俺を一瞥(いちべつ)したかと思うと、すぐさまスンッ! とした表情でユリカさんと向き直り、




「……そのパーティー申請、全部断っておいてユリカ」

「い、いいんですか? せめて名前だけでも聞いた方が……上級冒険者パーティーの方も居られましたけど?」

「……うん、いい」




 アレスは何の迷いもなくコクンと頷いた。


 ユリカさんは少しだけ何か言いたげだったが、すぐさま言葉を飲み込んで「分かりました」と穏やかな笑みを浮かべる。




「ではユニコーンラビットの討伐依頼だけ受理させていただきますね?」

「……よろしく」

「お、おいアレス、本当にいいのかよ? パーティーを組んだ方がお前の目的に一気に近づけると思うぞ?」

「……でもそうなったらダルくんが独りぼっちになる」




 ダルくん友達居ないし、と鋭利な刃物で俺の心の柔らかい部分を突き刺すアレス。


 い、居るもん! 友達くらい居るもんっ!


 ただ俺の周りに居る奴らは全員ちょっと異常性癖なだけで、ちゃんと友達くらいは居るもん!




「……それにボクはダルくんの相棒だから。ダルくん以外とは誰とも組みたくない」

「あ、アレスぅ~……」




 相棒の心優しい言葉に思わずキュンッ♪ と胸が高鳴る。


 俺が女の子なら心とお股を開いている所だ。




「よし、わかった! 俺達でとんでもねぇ実績作って、アレスの両親を見返してやろうぜ!」

「……うん」

「お待たせしましたダルさん、アレスさん。ユニコーンラビットの討伐依頼、受理完了です。目標討伐数は3体。討伐の証としてユニコーンラビットの角を持って帰ってくださいね。報酬は銀貨3枚です」




 書類入力が終わったユリカさんが『よろしいですか?』と瞳だけで俺達に語りかけてくる。


 俺とアレスは一瞬だけ目配せし、2人同時に笑顔で頷いた。




「了解ですっ! 行くぞ、アレス!」

「……うん、行こうダルくん」




 俺たちは「行ってらっしゃいませ」とユリカさんに笑顔で見送られながら、ユニコーンラビットの居る狩場を目指してギルドを後にした。

むちむち僧侶ちゃん【アレス】

挿絵(By みてみん)

作:さんさん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ