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勇者パーティの勇者くん  作者: 帆立 海
勇者と偽勇者
2/2

2話 偽勇者

 魔王は魔王城にいる。この事実に例外はない。必ずだ。



「どういうことよ。ここに魔王がいるんじゃないの?」

「そのはずだが…」

「魔王が復活していないということですか?」

「おそらくそれはないだろう。魔物も活性化…」


 俺はそう言いかけて、一つの可能性を考えた。

 本当に魔物は活性化してたか?


 魔王が復活すると、魔物が活性化する。魔物の強さが魔王が復活する前と比べて尋常ではないほど強くなるのだ。魔王が復活する前は、成人していれば誰でも倒せるような魔物が、一つの村を壊滅させるほどの凶悪な魔物になる。


 そして、最近戦った魔物は弱かった。ならば、


「魔王が俺達が来る前に倒された?」

 自分で言っててありえないとは思う。だが、それしか考えられなかった。


「そんな事あるの?」

「私達よりも強いパーティはおそらくいないと思いますが、パーティが協力…100を超えるパーティが協力すれば魔王と討伐することは可能でしょう。ですが…」

「問題は、俺達がそんなことを知らないってことだな」


 俺達は勇者パーティだ。誰にでも勝つとは思ってはいないけど、誰にも負けないとは思う。あまりこういうことを考えるのは嫌になるが、勇者パーティはたった一つのパーティで世界を平和にしてくれる便利な駒だ。そんなパーティがいるのに、わざわざ大量のパーティを集めるメリットがない。


「じゃあなんで魔王がいないのよ」

「そこだよな。魔物たちの仲間割れ…は考えにくいよなぁ」


 四天王と戦って分かった事がある。それは彼ら魔物たちは魔王への絶対的な忠誠があるということだ。そんな魔物たちが魔王へ牙を向けることは考えにくい。


「ならば…魔王の自殺?」

「そんなことはないだろ…多分」

「私もそれは流石にないと思うわよ…」


 魔王が自殺をするなんて聞いたことがない。もちろん前例がないだけかもしれないが、魔の『王』が自殺するなどないだろう。王には責任があるものだ。魔の『王』を名乗るものだ。それぐらいの知性はあるだろう。


「それにしても俺はこれからどうすればいいんだろうな。魔王がもういないんだから勇者でもない。魔王を倒せなかったらルーズの居場所も作ってやれない…俺は何なんだろうな」


 俺は勇者だ。大きな責任がある。だから魔王がいなかったからとはいえ、その責任を捨てることとなるなら、自分が何者なのかは俺にもわからない。


 一つわかるのは俺が勇者ではなくなったということだろう。


「レイガ…」

「……」

「こんな話してごめんな。とりあえず王都に戻るか。王都ならなにか情報があるかもしれないしな」

「あなたが全て抱え込まないでくださいね。わたしたちも含めて勇者パーティなのですから」


 今の俺は、サリーナに心配されるほどだったか。そうだな。俺は今怖いんだ。勇者として生きてきたものが全て否定されそうで怖いんだ。それを悟られてしまうなんて…俺もまだまだだな。でも、これは二人に伝えたくない。俺の弱さからくる怖さだ。二人を巻き込むわけには行かない。俺が勇者なのだから。


 そんな不穏な空気を残したまま俺達は王都に戻る事とした。


 魔物が弱くなっていて、手こずることがなくなるので、来るときよりもかなり早く戻ることができた。三ヶ月ぐらいたっただろうか。王都の近くの街についた。そこでは、魔王討伐記念祭と大きな字で書かれていた。そして、俺達勇者パーティがいても誰も反応しなかった。


 これは絶対におかしい。俺達が誰にでも慕われる存在だとは思っていないが、ここまでの無反応はありえない。他は街に来たら俺達に向けて子供が突進してきたが、それもない。ありえないことだ。


 しかも俺達は魔王を倒していない。これは、本当に「俺達が来る前に魔王が倒された」のか?誰が、何のために?


「これは…どうしたのでしょう」

「私達魔王なんて倒してないわよ?」

「もしかしたら、私達が倒したと勘違いをしているのでしょうか?ですがここまでの無反応は初めてですね」

「というか避けられてるよな。これ」

「…あんた達なんかした?」

「してないな」

「してませんね」


 避けられるようなことは、絶対してはない。魔王がいなくなって、俺達の力を恐れている可能性はなくはないが、子供まで避けるのはおかしい。子供とはいつだって命知らずなものだ。


「ちょっとこれは、王都に早く行って、話を聞かないとかもしれない」

「ですね。これはおかしいですものね」

「王都ねぇ……王女がいるから嫌なのよね」

「ああ。敵ですもんね」

「そういうことじゃない!」


 顔を真っ赤にしたミリエラが、なぜか俺の方を見ながら反論する。


 王女は、勇者が魔王を討伐し、帰還した際には勇者と結婚することになっている。つまり勇者が王になるということだ。人質のようであまりいい気持ちではないが、これには、勇者の平和な世の中には過剰な力で恐れられないように、王家が守るという役割がある。


 …まあこれはおそらく建前で、王家が勇者の力を取り入れたいのであろうが、俺にとってもそこまでデメリットを感じないのでまあいいだろう。


 でもその王女が敵…というのはよく分からん。まあだが、なんかあるんだろう。そもそも女の話を男が理解することなど不可能なのだから、今更だ。


 そうして俺達は王都へと早急に戻ることにした。この街は王都にかなり近いので、2日ほどでたどり着いた。だが、その道中は誰からもは反応されることはなかった。


「…」

 王都でも、祭りをしていたが、俺達の姿を見た瞬間に住民から睨むような視線がかけられた。


「何なのよ…勇者よ?」


 ミリエラが言ったその言葉で、周りの雰囲気が変わった。


「誰が勇者だ…この偽勇者」

「「「「「そうだ!偽勇者!ここから出ていけ!」」」」」

「は?」


 俺達に対する態度から、俺達の帰還にあまり好意的じゃないことは分かっていた。でもここまで非難されるなんて思っていなかった。

 そもそも…


「偽勇者ってどういうことだよ!」

「はあ…あなた達が本当の勇者なワケがないでしょう。魔王も倒していないのに」

「なんで…王女様?嘘だろ?」


 俺の言葉に、騒ぎを聞きつけて来た王女がそう言った。だが、その内容は、信じたくないものだった。王都に行けば、前のような勇者に対しての接し方になると思ったのに、王女にまでこんなことを言われるなんて…俺は何かを間違えたのか?


「本当の勇者は別にいますよ。それが、ルーズ様です!」

「「「は?」」」


 王女はルーズの名を神を称えるように言った。


「は?ルーズ?なんであいつの名前が出てくるんだよ?」

「それは当たり前でしょう!ルーズ様が魔王を倒したのですから!」

「あの死にたがりが倒せるような相手ではないでしょう!」


 普段は優しい口調で話すサリーナだったが、今は声を荒げてそう言った。そりゃあそうだ。あいつが魔王を倒せるとは思えない。俺達と共に倒すなら理解できる。だが、あいつが…道具士が倒すのは不可能だ。道具士の攻撃で倒せるのは、活性化していない魔物ぐらいだ。そんな攻撃で魔王が倒せるわけがない。


「出てけ!偽勇者!偽勇者!」

「お前達!何をしてい…レイガ…」


 住民たちの俺達への言葉を諌めるように馬車から出て言ったのは貴族だった。いや、貴族のような格好をしたルーズだった。だが、その姿は、王女よりも気品あふれるものだった。まるで王のように。


「ルーズ様ぁ!」

「お…王姉様?」


 馬車から出てきたのは…王姉だった。そして彼女は当然のようにルーズに抱きつく。


「ルーズ様!」


 その姿を見て、王女もルーズに抱きつく。そうして、ルーズの右手には王女。左手には王姉が抱きつくという形になった。


「もう…何なんだよ。俺は邪魔だったか、ルーズ。最初から王女と繋がってたのか?なんでこんな事するんだよ」

「レイガっ…違うんだよ…」

「何がだよ。それが結果だろ」


 王女と、王姉を両手に侍らせて、何が違うと言える。


 俺は勇者ではなく、ルーズが勇者なんて意味がわからない。俺が勇者としての責任に潰されそうになってたのをあいつは近くで知ってただろ…なんでルーズが。


「もうやめましょう!レイガ!王都から遠い街ならこのような話もないでしょう!」

「そうよ!私…私達はあんたのことが大切なんだから!」


 ルーズと王女たちの姿を見て、俺が倒れそうになると、ミリエラとサリーナが支えて、そう言ってくれた。


「そっちの勇者くん以外は王都にいてもいいですよぉ。一緒に勇者様を支えてあげましょう」

「誰が…そんな事するものですか」

「私はレイガの仲間よ!」

「あら残念。なら立ち去りなさい」

「あんたに言われなくても」


 王姉の言葉に対して、怒りを露わにする2人。

 2人は仲間でいてくれるのか…


「勇者には関わるなよ!」


 俺達が王都から出ようとしていると、ルーズからそんな言葉がかけられた。


 どういうことだよ。お前はもう勇者じゃないとでも言いたいのか?もう知らねぇよ。俺は勇者じゃないんだろ?

王女、王姉は気品のある美人。サリーナは正統派美人。ミリエラはツンデレ。

レイガは正統派イケメン、ルーズは優しそうなイケメン

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