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宝角令嬢は普通に学園生活を送りたい【連載版】  作者: 山吹弓美


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089.令嬢は試験勉強する

「そうか……セレスタ嬢も大変だね」

「幼い頃は苦労なさっておられたようですし、周囲の環境が激変されましたしねえ」


 紙の話をジェット様にしてみたら、軽く感心された。そして、騎士団などでは私たちが使っているものよりは表面の粗い紙を使っているのだと教えてくださった。使う所によって、かなり質が違うものみたいね。知らなかったわ。


「まあ、そういうものだと思っていればいい。服装も家も、それぞれに違うものだからね」

「そうですわね」


 かりかりと、ノートの上に文章が紡がれる。論文なんて、輿入れしてしまえばあまり関係ないと思うのだけれど……試験で書かなければいけないのだから、頑張ろう。

 ふうと小さくため息をついて顔を上げると、私をじっと見つめていらしたのかジェット様と視線が合った。


「ローズは、試験の方は大丈夫なんだね?」

「はい。フォスと一緒に、毎日予習復習を欠かしておりませんし、こうやってジェット様にも見ていただいているのですから」

「それなら大丈夫か」


 指先で軽く角を突かれて、それから頭を撫でられる。まるで子供扱いみたいだけれど、この感触は嫌いではないのよね。ちょっと複雑だわ。


「ダンスも重要だろうけれど、学生は学ぶために学園にいるんだからね」

「そうなのですけれど……ジェット様が学園におられる最後の日のダンスなのですから、私は完璧に踊りたいですわ」

「ローズなら大丈夫だ。俺もそれほど、上手いわけではないからね」

「まあ」


 そう、今度の卒業式でジェット様はこの学園を離れられる。その前に一度、きちんと皆の前で婚約者同士としてダンスを踊りたい。どうせなら、完璧に。

 だからダンスの練習も欠かさないようにはしているのだけれど、ジェット様のおっしゃるとおり私は学生なのだからしっかり学ばなければならない。大変だわ、本当に。

 こほん、と咳払いが聞こえた。


「ローズ様、ジェット様。ここは自習室ですので、仲がよろしいのは結構なんですがお控え願えますか」

「す、すまない」

「申し訳ありません」


 フォスが、半ば呆れた顔でそう声をかけてきた。あ、あらそうだったわ。

 ここは学園内にある自習室の一つ。試験勉強をしよう、ということになって何人かで集まったのよね。ジェット様は、指導役を買って出てくださったの。


「ううー、うらやましいですー」

「ダンスも大事だが、学習も大事。ここは学習する場所だな」

「……卒業してからでもいちゃいちゃはできるっしょ。恋人や婚約者いない組には目の毒なんで、頼むっすよう」


 セレスタ嬢、ルリーシア、イアン。どんな組み合わせなのかしら、と思ってしまうのだけれど、双子の兄妹は別口でお勉強でしょうし他の方々もご自身で試験対策をなされているはずだものね。今日は、このメンバーでジェット様に小論文や国語、古語の復習を見てもらっているの。


「と、とにかく、続きを進めるぞ」

『はーい』


 あら、ジェット様ったら耳まで赤くなっていらっしゃるわ。まるで、私の角みたい。ふふふ。

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