100.番外にして終幕:令嬢たちは学園生活を送る
何ていうかさ。
私、ずっとこの世界って『宝華世界のセレスタ』の世界だと思ってきたわけなんだけど、もしかして違うんじゃないかって思い始めてる。
シナリオが違うのはさ、そりゃアップデートされたからって言われれば納得するわけよ。でも、キャラ名変えるなんておかしいよね?
『ローズクォテア。私と踊っていただけますか』
ジェットさんのこの言葉! これで気がついたのよ。
私の知ってるゲームでは、ローズ様はローズクォリス・ハイランジャ侯爵令嬢なの。おでこに角も生えてないし、もうちょっと性格良くないし、ジェットさんとギャネット殿下両天秤にかけたりするし。というか、私……というかセレスタがギャネット殿下狙いに行ったらライバルになる……ってのは前に思い出してたっけ。
それが……ついこないだまで知らなかったんだけど、角の生えてるローズ様ってローズクォテア、だったのよ! 皆ローズローズって呼ぶから、気が付かなかったわ。
でも、アップデートで名前変える理由なんて思いつかないのよね。特にネタかぶりがあるわけでもないし。
「てーことは……あれか。実はゲームとよく似てるけど違う世界、ってやつ」
前世でたまにそういう設定の小説とか見かけて読んだ記憶があるけれど、つまりはそういうことだったみたい。思い出した私えらい、誰も褒めてくれない話だから自分で褒める。
そう考えると、今までの辻褄が合う気がする。ゲームのとおりにシナリオを進めようとしても進まなかったし、ローズ様は角生えてるし。
というか、誰かがこの世界から私の前世の世界に転生したか情報流したかして『宝華世界のセレスタ』を作ったんじゃないのかしら、と今では思えるわ。逆輸入ってやつよね……ちょっと違うかな?
こっちの世界と名前がちょこっと違ったり設定が違ったりするのは、これはフィクションです実在の人物とは関係ありませんとかいうあれなのよ、きっと。脇役に角が生えてたらなんかそっちばっかり人気出そうだしってことよね、うん。
「そうなると……うーん」
今まではゲームの世界だと思って生きてきたけど、実際に別の世界らしいってことになるとはて、困ったもんだ。ゲームシナリオ通りに進むわけがないってのは今までもそうだけど、今後どうすればいいのやら。
いや、ひとまずレキ先輩のダンスのお誘いには乗ってみたけどさ。あの人、家が金持ちだからどーのこーのってうるさいったら。それを言うならうちは一応貴族ですー、内情火の車っぽいけど。
あ、そうするとレキ先輩婿にして金引き出したほうがいいのかな? あーでも、他にも商人はいるからなあ。うちの学年にだって、グランがいるわけだしね。
「ま、もうしばらく考えよう……おはようございまーす!」
ゲームじゃない、ということで頑張って外面を作りながら、教室に入る。二年生に上がった私たちは顔ぶれも同じまま、また一年をこの学園で過ごす。
「おはようございます、セレスタ様」
「おはようございますー!」
ローズクォリス、じゃないローズクォテア様と挨拶して、席につく。この世界の貴族にはごく普通の、学園生活を過ごすために。
というか、学園生活ってやっぱり色恋沙汰が重要なはずなんだけどなあ。婚約者がいる人はともかくさ。
「よし、がんばろ」
これからでも、いい男捕まえることはできるはずなんだから。だから私、ローズ様見習って頑張るからね!




