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恋のエンジン  作者: 水野
25/25

その25

 扉を開けると、古い本の匂いがした。夏休みの図書室は、受験を控える三年生向けに開放されている。けれど、相変わらず人は少ない。

 近くの座席に座ったところで、ちりん、と入り口のベルが鳴った。鳥羽さんだった。

「重大な話があるんだ」

 僕は、椅子から立ち上がって鳥羽さんの前に立った。

「どうしたの改まって」

 多田と鳥羽さんの詳しい話は聞いていない。僕があれこれ聞くことではないと思うからだ。

 僕は、もぞもぞしようとする手足を抑えんと必死だったから、なかなか話だせなかった。黙ったまま鳥羽さんは僕を待っている。呼び出したのは僕だ。何も言わないわけにはいかない。

「僕さ、田中のことが好きなんだ。だから、手伝ってほしい」

 僕は、ここのところずっと田中に虫を決め込まれている。話しかけても無視され、良くても一言二言かわして会話を打ち切られる。僕にはどうしようもない状態だった。

 鳥羽さんは、ちょっとだけ寂しそうな顔をした。

「それは無理だよ。止めたほうがいい」

 彼女の声には、僕を阻止せんとする確固たる意志がにじんでいるように聞こえた。


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