11 フェミナ姫
十分後、フェミナの部屋。
「ああああ、誰もいないぃぃぃ!」
フェミナは絶叫するように髪を掻きながら天井を見上げる。
「こんなことなら日頃から優秀な兵を育成しておくべきだった」
「おいおい、姫様なんだし探せば一人ぐらい使えるやつはいるだろ?」
「お前は何も分かっていないな! 竜国の兵士のほとんどは父上かアレキア姉様が所有しているのだ。私が所有している兵など……って、貴様は何を私に意見している!」
「いや、こんな近くで悩まれたら声かけた方がいいのかと思って」
カズトはフェミナに腕につながれた鎖で縛られたまま隣りに座っていた。
「調子に乗るなよ。今は忙しいがこの件が終われば貴様に私を辱めた落とし前をつけてもらうからな!」
「じゃあ……それまで牢屋にでも入れていてくれよ」
カズトは額に汗をかきながら苦笑いをした。
「ふんっ、それはならぬ。何故私がお前のような賊を連れていると思っているのだ。父上やスイリュウ殿はお前の事を何か知っているようだが万が一にもお前を取られては困るからな。それに貴様はまだ色々と魔技を隠していそうだ。逃げられぬように私が見張っておかねば、お前の命は私のものなのだから」
耳打ちするようにフェミナはカズトに絶望を与えようとする。
「情けない姫様だな」
「何?」
「竜国のナデシコなんて呼ばれながら実際は兵士一人自由にできないお飾りのお姫様じゃないか。鎖で縛った相手に強がる事しかできないなんて」
カズトは失笑した。
「なんだと貴様!」
「アンタがさっきのお姉さんに頼られて嬉しそうにしている顔は笑えたよ。まるで……姫と言うよりは手柄を立てたい下っ端みたいだ」
「貴様!」
フェミナは激怒してカズトを押し倒して首に手をかける。
「言っただろう貴様の命は私のものだと! 今すぐに貴様の息の根を止めてもいいのだぞ!」
目を見開きフェミナは腕に力をいれる。
「げぇっ……」
息が出来ずに首を抑えられカズトは苦しむ。
「お前に私の何がわかる! 貴様ら下賎な魔国の者に誇り高き竜族の何がわかる!」
フェミナがさらに力を入れるとフェミナの手はカズトの首を滑るように外れた。
「がはっ……がはっ!」
「ふんっ、魔技を発動したか。また発動を止めて絞め殺してもいいが時間がない。命拾いしたな。これに懲りたら二度と私に指図するな」
フェミナは机に置かれた兵士のリストを見て苛立つようにそのリスト放り投げた。
「くそっ……」




