大丈夫だよ
過去に恋人から裏切られてしまったゆうへい
辛い過去の傷がたまに蘇る。
彼女のみずきは安心させてくれるがゆうへいの傷は簡単には消えてくれない。
みずき「ねえ、ゆうへい。ちょっと話があるんだけど」
ソファに座ってスマホを眺めていると、隣に座っていたみずきが声をかけてきた。
みずき「来週さ、友達と旅行に行くことになったんだよね」
ゆうへい「ん? 旅行?」
みずき「うん、一泊二日なんだけどね」
ゆうへい「そっか、楽しんできなよ」
僕はそう答えて、もう一度スマホに目を落とした。
別に、旅行に行くこと自体は何も悪くない。
友達と遊びたい気持ちだってわかるし、僕だってみずきには楽しんできてほしいと思っている。
それなのに。
みずき「……ゆうへい?」
ゆうへい「ん?」
みずき「なんか、元気なくない?」
みずきが僕の顔を覗き込んでくる。
ゆうへい「いや、そんなことないよ」
みずき「本当に?」
ゆうへい「本当だって。楽しんできてね」
そう言って笑ってみせる。
けれど、みずきは納得していないようだった。
みずき「もしかして、寂しい?」
ゆうへい「……まあ、ちょっとはね」
みずき「ふふっ、なにそれ。かわいい」
みずきは嬉しそうに笑いながら、僕の腕に自分の腕を絡めてきた。
みずき「でも、ちゃんと連絡するからね」
ゆうへい「うん」
みずき「写真も送るし、夜も電話できたらしよう?」
ゆうへい「そこまでしなくても大丈夫だよ。友達との時間も大事にしてほしいし」
みずき「それはそうだけど……ゆうへいが寂しがるなら、いっぱい連絡するよ?」
みずきは冗談っぽく言って、僕の顔を見上げた。
その笑顔を見ていると、自然とこちらまで笑顔になる。
本当に、優しい子だと思う。
僕にはもったいないくらいに。
ゆうへい「ありがとう。楽しみにしてるね」
みずき「うん!」
みずきは満足そうに頷くと、再びスマホを手に取った。
それからしばらく、僕たちは他愛もない話をして過ごした。
旅行先で何を食べるのか。
どこに行くのか。
お土産は何がいいのか。
そんな話をしている時間は、いつもと何も変わらなかった。
……なのに。
僕の心の奥には、小さな不安がずっと残っていた。
――――――――――――――――――――
僕には、忘れられない過去がある。
以前付き合っていた彼女、るな。
僕は彼女のことが本当に好きだった。
一緒にいるだけで楽しくて、くだらないことで笑い合って、何気ない日常がずっと続くものだと思っていた。
彼女の言葉を疑ったことなんてなかった。
るな「好きだよ」
そう言われれば嬉しかったし、会えない日だって、彼女のことを信じていた。
いつか結婚するのかな。
そんな未来を想像したことだってあった。
けれど、その未来は突然壊れた。
るなは、僕以外の男と関係を持っていた。
最初は信じられなかった。
何かの間違いだと思いたかった。
だって、あんなに好きだと言ってくれたのに。
あんなに僕のことを大切にしてくれていたのに。
どうして。
何度考えても、答えなんて出なかった。
そして、るなとの恋が終わってからも、僕の中には消えないものが残った。
誰かを好きになることが怖くなった。
相手がどれだけ優しくしてくれても、その裏側を考えてしまう。
連絡が少し遅れただけで、何かあったんじゃないかと思ってしまう。
知らない場所で、知らない誰かと一緒にいる。
それだけのことなのに、頭の中では勝手に悪い想像が膨らんでいく。
そんな自分が嫌だった。
信じたい。
疑いたくない。
大切な人を、自分の不安で傷つけたくない。
そう思っているのに、心がついてこない。
そして今。
僕には、みずきがいる。
るなとの恋が終わってから、もう二度と誰かを本気で好きになることなんてないと思っていた。
それでも、みずきと出会って、僕はまた誰かを好きになった。
一緒にいると楽しくて、笑顔を見ると嬉しくて。
この時間がずっと続けばいいと思えるようになった。
だからこそ、怖かった。
また、同じことが起きたら。
また、大切な人に裏切られたら。
今度こそ、僕は立ち直れないかもしれない。
そんな考えが頭をよぎるたび、僕は自分に言い聞かせる。
みずきは、るなじゃない。
過去と今は違う。
わかっている。
頭では、ちゃんとわかってる。
それでも、心の傷は簡単には消えてくれなかった。
読んでいただきありがとうございます。
続きもお楽しみください!




