トライデント持ってる神様
白井キャプテン「よし!お前ら!トライデントを使ってる神が住んでるところへ行くぞ!」
ペリカリノ「やめろ!天罰が降るぞ!!やめろー!」
白井キャプテン「問題ない!!神話級存在との接触経験は現在24回!!そのうち爆発は17回だ!!」
ペリカリノ「“問題ない”の定義どうなってんだよ!!」
ジェントル「ガンダで行くぜぇぇぇぇ!!!⚡」
ネクタイ「……海系の神って、魚パンとかあるかな」
ペリカリノ「お前はなんで毎回パン経由なんだよ!!」
ネコさん「海の神様なら塩分の摂りすぎに注意にゃ〜」
タルト『補足します。現在向かっている座標は“第九潮流次元・ネプトラ界域”。文明レベル測定不能。神格反応あり。なお帰還成功率は』
ペリカリノ「言うな」
タルト『4%です』
ペリカリノ「終わってんだろ!!!!」
宇宙船《オデッセイβ》は、
銀河の裂け目みたいな海を進んでいた。
宇宙なのに波がある。
星なのに潮の匂いがする。
遠くでは巨大なクジラのようなものが、
真空で鳴いていた。
ジェントル「すげぇ!!宇宙がビチャビチャしてる!!」
ペリカリノ「感想がアホすぎる!!」
白井キャプテンは操縦席に片足を乗せ、
望遠スコープを覗き込む。
白井キャプテン「見えたぞ!!」
その瞬間。
黒い海面が割れた。
ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
惑星サイズの“手”が現れる。
その手には、
恒星くらい巨大な三叉槍。
ペリカリノ「出たァーーーーー!!!!」
ネコさん「わぁ、大きいにゃ〜」
ネクタイ「……あれでパン切ったら綺麗に切れそう」
ペリカリノ「無理だろ!!!!!!」
そして海の底から、
声が響いた。
『──誰だ。我が眠りを乱す愚か者は』
白井キャプテン「白井だ!!!」
ペリカリノ「名乗るな!!!!」
『……なぜ来た』
白井キャプテン「お前の槍、ちょっと見せてくれ!!!」
沈黙。
宇宙が静まる。
銀河の波が止まる。
タルト『現在、神格存在が絶句しています』
ペリカリノ「そりゃそうだろ!!!!!」
すると神は低く唸った。
『……貴様、“恐怖”を知らぬのか』
白井キャプテン「知ってるぞ!!」
神『ならばなぜ来た』
白井キャプテン「面白そうだったからだ!!!」
数秒の沈黙。
そして神は、
なぜか少し笑った。
『……変な生物だな、人類』
ペリカリノ「いやコイツだけだからな!?人類代表にすんなよ!?」
白井キャプテン「人類代表です!」
ペリカリノ「いやだからちげーよ!!」
白井キャプテン「いいから見せてくれよー、それを使って魚取りたいんだよー、塩かけて一緒に食おうぜ?」
神『…………魚?』
銀河が静止した。
恒星の光まで「今なんて言った?」みたいな空気になる。
ペリカリノ「終わった……オレたち神話に失礼すぎて消される……」
ネコさん「お魚は体にいいにゃ〜」
ネクタイ「焼き魚パン……アリかもしれない……」
ジェントル「ガンダで釣り行くぜ!!!」
ペリカリノ「お前ら空気読め!!」
巨大な神は、
惑星ほどある顔をゆっくり近づけた。
三叉槍の先端から、
青白い雷が宇宙に散る。
神『……この槍は、“海そのもの”を支配する神器だ』
白井キャプテン「うん」
神『文明を沈め、大陸を裂き、神々の戦争を終わらせた』
白井キャプテン「で、魚どれくらい獲れる?」
ペリカリノ「話を聞けェーーーーー!!!」
タルト『分析結果。“会話”が成立していません』
神の額に、
ピキッと血管みたいな稲妻が走る。
神『人類よ……貴様は我を愚弄しているのか?』
白井キャプテン「違う違う!純粋に興味があるだけ!」
神『…………』
白井キャプテン「あと腹減ってる!」
神『………………』
ネコさん「キャプテンはお腹が空くとIQが3になるにゃ」
ペリカリノ「普段も5くらいだろ!!」
すると神は、
ゆっくり槍を掲げた。
宇宙全体が海みたいに波打つ。
銀河が渦を巻き、
恒星が潮流に流され始める。
タルト『警告。神格級エネルギー反応。空間圧縮開始』
ペリカリノ「だから言ったァーーーーー!!!」
ジェントル「逃げるか!?ガンダか!?ガンダだな!?!?」
ネクタイ「……魚焼くなら最初は強火、最後は弱火がいい」
ペリカリノ「今その情報いらねぇ!!」
神は低く呟いた。
『……そこまで言うなら試してみるか、人類』
白井キャプテン「おっ!!貸してくれるのか!?」
神『一匹でも獲れればな』
次の瞬間。
ズ ゴ ン !!!!
三叉槍が宇宙へ突き刺さる。
すると銀河の海から、
“魚”が現れた。
いや、魚ではない。
星雲を喰っている。
ブラックホールをエラ呼吸している。
目玉が月くらいある。
タルト『分類不能。“宇宙深海古代魚類・グラン=メギド”』
ペリカリノ「デカすぎるだろ!!!!」
神『さあ獲れ、人類』
白井キャプテン「よぉぉぉし!!!」
ジェントル「ガンダで行くぜぇぇぇぇぇ!!!⚡」
ネクタイ「タルタルソース欲しい……」
ペリカリノ「そのサイズの魚にタルタルとか誤差だろ!!!」
“宇宙深海古代魚類・グラン=メギド”は、
銀河を丸呑みするみたいに口を開いた。
ゴ ォ ォ ォ ォ……
吸引。
近くの小惑星群が、
ポップコーンみたいに吸い込まれていく。
ペリカリノ「無理無理無理無理!!!あれ魚じゃねぇ!!!災害だろ!!!」
白井キャプテン「でっけぇぇぇぇ!!!✨」
神『逃げてもよいぞ、人類』
白井キャプテン「逃げる?なんで?」
ペリカリノ「その疑問符が一番怖ぇんだよ!!」
ジェントルは既に船の扉を開けていた。
ジェントル「ガンダで行くぜぇぇぇ!!!」
ペリカリノ「待て待て待て!!宇宙空間だぞ!?」
ジェントル「気合い!!!」
タルト『補足。ジェントルは前回、“気合い”のみで三分間真空活動しています』
ペリカリノ「前回があるのかよ!!!」
ジェントル、発進。
ド ゴ ン !!
蹴った瞬間、
船が後ろに吹っ飛ぶ。
白井キャプテン「おお〜、今日の加速は過去最高だな!」
タルト『船体が悲鳴を上げています』
宇宙を一直線に駆けるジェントル。
速いというか、
速すぎて途中から赤い稲妻になっている。
グラン=メギドの巨大な目玉が、
ゆっくりジェントルを捉えた。
ジェントル「釣りってどうやるんだーーーーー!!!」
ペリカリノ「知らねぇのかよ!!!!」
その瞬間
グラン=メギドが咆哮した。
ギュォォォォォォォォン!!!!
音で恒星が割れ
衝撃波で宇宙がめくれ上がる。
ジェントル「うおおおおおお!?」
吹っ飛ばされるジェントル。ワロタ。
白井キャプテン「よし!次だ!」
ペリカリノ「作戦とかねぇのか!?」
白井キャプテン「あるぞ!!」
ペリカリノ「マジで!?」
白井キャプテン「ネクタイ!!」
ネクタイ「……ん」
白井キャプテン「パン投げろ!!!」
ペリカリノ「終わった!!!!」
しかしネクタイは、
初めて少し真面目な顔になった。
ネクタイ「……タルト、厨房3番の冷凍庫開けて」
タルト『了解。“超銀河発酵生地”を解凍します』
ペリカリノ「なんでそんなもの積んでんだよ!!」
ネクタイは、
巨大なパン生地を抱え、
静かにナイフを抜いた。
ス……
宇宙が静まる。
神『……ほう』
白井キャプテン「来たな。“パン職人モード”だ」
ペリカリノ「何その最終形態みたいな言い方」
ネクタイ「……パンは、生き物を幸せにする」
ペリカリノ「…は?」
次の瞬間。
シュババババババババッ!!!!
神速。
パン生地が、
惑星サイズの魚そっくりに削られていく。
ペリカリノ「?!速ぇぇぇぇぇぇぇ」
タルト『観測不能速度。なお本人はやる気ゼロです』
完成した。
“超巨大宇宙メロンパン”。
しかもほんのり光ってる。
グラン=メギド、
止まる。
巨大な鼻が、
メロンパンへ近づく。
ク ン ク ン……
ペリカリノ「えっ」
グラン=メギド『……美味そう』
ペリカリノ「喋ったァーーーーーー!?!?!?」
グラン=メギドは、
惑星サイズの瞳をうるうるさせながら、
巨大メロンパンを見つめていた。
神『……食うのか、貴様』
グラン=メギド『うむ……』
白井キャプテン「よし!食え!!」
ペリカリノ「なんでお前が許可出してんだよ!!」
グラン=メギドは、
そっとメロンパンを咥えた。
……ぱく。
沈黙で宇宙が静まり返る、その次の瞬間。
グラン=メギド『────────うまい。』
ド ゴ ォ ォ ォ ォ ン!!!!
感情エネルギーが爆発。
喜びで銀河が揺れる。
遠くの星々が、
なんかちょっと明るくなる。
タルト『観測。“幸福波動”が宇宙規模で拡散しています』
ペリカリノ「パンで世界救うな!!!!」
グラン=メギドは、
目を細めた。
さっきまでの“宇宙災害”みたいな威圧感が、
今は大型犬くらいになっている。
グラン=メギド『もっとあるか』
ネクタイ「……ある」
白井キャプテン「交渉成立だな!」
神『成立してたまるか』
神は額を押さえていた。
どうやら頭痛がするらしい。
神『我は試練として貴様らを呼んだのだぞ』
白井キャプテン「うん」
神『なぜパン会になる』
白井キャプテン「腹減ってたから」
神『シンプルすぎる……』
その時だった。
タルト『警告。後方空間に超高密度反応』
ペリカリノ「今度はなんだよ!?」
宇宙の海が割れる。
その裂け目から、
巨大な影が浮上した。
黒い王冠。黒い潮。
そして、数百本の三叉槍。
神『……ッ!?』
白井キャプテン「知り合い?」
神が初めて、
明確に焦った。
神『まずい……』
ペリカリノ「神が“まずい”って言うなよ!!」
黒い巨神が低く笑う。
???『見つけたぞ、“海神ネプトラ”。』
宇宙が凍る。
グラン=メギドが震え始める。
ネコさん「ありゃ、大変そうにゃ」
タルト『対象を解析。“深淵王アビス・レヴィア”』
ペリカリノ「名前からしてラスボスだろ!!!」
アビス・レヴィアは、
無数の目を白井キャプテンたちへ向けた。
『……人類?』
白井キャプテン「人類代表です!」
ペリカリノ「違うって言ってんだろ!!!!」
アビス・レヴィア『なぜ貴様らがここにいる』
白井キャプテン「魚釣り!」
アビス・レヴィア『…………』
神ネプトラ『…………』
タルト『現在、“深淵王”が理解を放棄しています』
ジェントル「ガンダで殴るか!?!?」
ペリカリノ「お前はもう少し段階を踏め!!!」
アビス・レヴィアの無数の目が、
ゆっくりジェントルへ向いた。
『……今、“殴る”と言ったか?』
ジェントル「言った!!!✨」
ペリカリノ「キラキラすんな!!」
深淵王の周囲で、
黒い海が渦を巻く。
その海の中には、
沈んだ文明が浮かんでいた。
城。
宇宙艦隊。
神殿。
全部、
呑まれている。
アビス・レヴィア『我は深淵。全てを沈める者』
白井キャプテン「すげぇ!」
ペリカリノ「感心してる場合か!!」
アビス・レヴィア『神も文明も星も、いずれ我に沈む』
ネクタイ「……パンも?」
アビス・レヴィア『パンもだ』
ネクタイ「…………」
空気が変わった。
ペリカリノ「…」
ネコさん「にゃ?」
タルト『観測。ネクタイの感情値が通常の2300%に上昇』
白井キャプテン「まずいな… ネクタイが“やる気”だ」
ネクタイは、
静かに立ち上がった。
いつもの半目。
いつもの気怠そうな顔。
でも、
ナイフだけが違った。
黒い刃が、
宇宙の光を吸い込んでいる。
ネクタイ「……パンを沈める奴は」
ス……
ナイフを構える。
ネクタイ「嫌い」
ペリカリノ「理由が小学生なんだよ!!」
次の瞬間。
消えた。…?
否、速すぎて見えなかった。
アビス・レヴィアの瞳が揺れる。
『な──』
ザ ン !!
黒い王冠が斬れていた。
宇宙が静止する。
ペリカリノ「え?」
神ネプトラ『…………今、何をした』
タルト『解析不能。“やる気1%状態のネクタイ”を確認』
白井キャプテン「まだ1%かぁ」
ペリカリノ「フルパワーじゃねえのかよ!!」
アビス・レヴィアは、
切断された王冠を見つめた。
黒い海がざわめく。
『……人類』
白井キャプテン「はい!」
『なぜパンの話からこうなる』
白井キャプテン「勢い!」
ペリカリノ「勢いで宇宙壊すな!!」
すると突然、
グラン=メギドが前に出た。
巨大メロンパンを咥えたまま。
グラン=メギド『……争いは、よくない』
ペリカリノ「お前さっきまで宇宙食ってただろ!!」
グラン=メギド『パンを食べると、優しくなれる』
ネクタイ「……わかる」
アビス・レヴィア『何なんだ貴様らは!?』
その瞬間。
白井キャプテンが、
突然ポンと手を打った。
白井キャプテン「そうだ!!!」
ペリカリノ「嫌な予感しかしねぇ!!」
白井キャプテン「パン大会をしよう!!!」
宇宙が静まった。
神ネプトラ『……は?』
アビス・レヴィア『……は?』
タルト『なおキャプテンは本気です』
ペリカリノ「知ってるよ!!!!!」
白井キャプテン「宇宙に必要なのは戦争じゃない!!パンだ!!!」
ペリカリノ「急に文明論みたいに言うな!!」
アビス・レヴィア『……くだらん』
だがその声には、
さっきまでの殺気が少しだけ薄れていた。
グラン=メギドは、
巨大メロンパンをもぐもぐ食べながら頷く。
グラン=メギド『でも、美味いぞ』
神ネプトラ『お前は黙っておれ』
ネクタイ「……パンには可能性がある」
ペリカリノ「お前が言うと妙に説得力あるな……」
白井キャプテンは、
ビシッと宇宙を指差した。
白井キャプテン「ルールは簡単!!一番うまいパンを作った奴が優勝!!!」
ジェントル「ガンダで焼くぜぇぇぇ!!!」
タルト『それはただの高火力です』
ネコさん「焦げそうにゃ〜」
アビス・レヴィアの無数の目が細くなる。
『……我にパンを作れと?』
白井キャプテン「できねぇの?」
…
神ネプトラ「挑発するな」
アビス・レヴィア『……できるし』
ペリカリノ「乗るなよ!!!!!」
その瞬間、
深淵王の背後に巨大な黒い厨房が展開した。
宇宙規模。
惑星がオーブンになっている。
ペリカリノ「スケールがおかしいんだよ!!」
神ネプトラも負けじと三叉槍を掲げる。
海流が渦を巻き、
塩と水で巨大な発酵空間を作り始めた。
神ネプトラ『海神の製パン術、見せてやろう』
ペリカリノ「なんであるんだよそんな文化!!」
白井キャプテン「よぉぉぉし!!盛り上がってきた!!!」
タルト『なお銀河連盟から“何をしているのか説明しろ”という通信が52件来ています』
白井キャプテン「後で返す!」
ペリカリノ「返せる内容じゃねぇだろ!!」
数時間後。
宇宙には、
異様な光景が広がっていた。
・恒星でパンを焼く海神
・深淵の闇でクロワッサンを層状生成する深淵王
・超高速回転で生地を捏ねるジェントル
・やる気ゼロのまま神速で成形するネクタイ
・栄養バランスを監修するネコさん
・実況を始めるタルト
タルト『第1回・銀河パン祭り、開幕です』
ペリカリノ「誰か止めろよこの世界!!!!」
タルト『エントリーNo.1。海神ネプトラ作。“超潮流ソルトバゲット”』
ド ン !!
惑星サイズのバゲットが出現した。
表面には波が走り、
切った瞬間、
断面から青い海が見える。
ペリカリノ「パンから海出てんだけど!?」
ネコさん「塩加減が綺麗にゃ〜」
白井キャプテン「うまそぉぉぉ!!」
アビス・レヴィア『ふん……』
無数の腕が広がる。
『エントリーNo.2。“深淵層クロワッサン”』
ザ ァ ァ ァ……
闇が折り重なる。
千層。
万層。
クロワッサンの層が、
宇宙の光を反射して銀河みたいに輝いている。
ペリカリノ「なんでパンの作画だけ本気なんだよ!!」
タルト『なお香り成分で近隣文明が集まり始めています』
遠くから宇宙船が集まり始める。
「何だあれ!?」
「パンだ!!」
「神が焼いてるぞ!!」
銀河がざわつく。
ジェントル「負けねぇぇぇぇぇ!!!」
超高速回転。
ジェントルが走る。
速すぎる。
生地が竜巻になる。
タルト『ジェントル、時速マッハ284000で捏ねています』
ペリカリノ「パンに使う速度じゃねぇ!!」
完成。
ジェントル「“ガンダッシュ食パン”だぁぁぁ!!!」
食パンなのに、
ずっと小刻みに震えている。
ネコさん「逃げそうにゃ」
実際、
逃げた。
ペリカリノ「走るなパン!!!!」
宇宙空間を高速移動する食パン。
それをジェントルが追う。
ジェントル「待てぇぇぇぇ!!」
ペリカリノ「何この地獄絵図!?」
その横で、
ネクタイだけは静かだった。
ネクタイ「……焼き上がった」
全員が振り向く。
そこには、
小さな丸パンが一個だけ。
地味で普通。
神々の超巨大パンと比べたら、
拍子抜けするほど普通。
白井キャプテン「おっ、シンプル!」
アビス・レヴィア『……それだけか?』
ネクタイ「……うん」
ペリカリノ「いやもっと頑張れよ!!」
すると。
グラン=メギドが、
その丸パンを食べた。
ぱく…次の瞬間。
ボロボロボロッ……
グラン=メギドが泣き始めた。
ペリカリノ「ええぇぇぇぇ!?」
グラン=メギド『……あったかい……』
宇宙が静まる。
ネクタイ「……焼きたてだから」
グラン=メギド『……母を思い出した……』
神ネプトラ『魚類にも母性概念あるのか』
アビス・レヴィア『というか泣くのか貴様』
グラン=メギド『うぅ……』
涙が流れる。
その涙で、
荒れていた宇宙の海が穏やかになっていく。
タルト『観測。空間安定率が急上昇』
ネコさん「優しいパンにゃ〜」
白井キャプテン「よぉぉぉし!!優勝はネクタイだ!!!」
ジェントル「ガンダで納得!!!✨」
アビス・レヴィア『待て』
深淵王が、
ゆっくり前に出る。
黒い瞳が、
ネクタイを見つめていた。
『……そのパン』
ネクタイ「?」
『……レシピを教えろ』
ペリカリノ「…おいおい。…深淵王が弟子入りしたよ……」
深淵王アビス・レヴィアは、
ネクタイからパンを受け取る。
黒い巨体が、
小さな丸パンを見つめる。
『……こんな小さなもので』
ネクタイ「……でも腹は減ってたろ」
沈黙。
そして深淵王は、
静かにパンを食べた。
ぱく。
宇宙の海が止まる。
荒れていた潮流が静まり、
崩壊しかけていた次元の裂け目が、
ゆっくり閉じていく。
タルト『観測。全宙域の敵対反応が消失』
神ネプトラ『……馬鹿な』
グラン=メギド『パンはすごい』
ペリカリノ「本当にパンで解決しやがった……」
深淵王は、
長い沈黙のあと呟く。
『……争っていたのが、少し馬鹿らしくなった』
白井キャプテン「だろ!?」
『……だが貴様らは理解不能だ』
白井キャプテン「よく言われる!」
ペリカリノ「誇るな!!」
そして白井キャプテンは、
操縦席へ戻る。
白井キャプテン「よぉぉぉし!!次の星行くぞぉぉぉ!!!」
ペリカリノ「休ませろ!!!!!」
ジェントル「ガンダで出発だぁぁぁ!!!」
ネコさん「シートベルトするにゃ〜」
タルト『次の目的地。“時間がラーメンで動く星”』
ペリカリノ「嫌な予感しかしねぇ!!!!」
ネクタイ「……パンあるかな」
宇宙船《オデッセイβ》は、
笑い声と悲鳴を乗せながら、
次の銀河へ消えていった。
その後、
銀河史にはこう記された。
“深淵戦争終結の理由:不明”
“ただし現場から大量のパンくずを確認”
完。




