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中身おっさんの悪役令嬢アリシアは、婚約破棄して自分の道を進みます!紅き薔薇の令嬢は笑う

作者:山田 バルス
目が覚めたら、目の前にやたら綺麗な天井が広がっていた。重そうな天蓋付きのベッド。やわらかいシーツ。広すぎる部屋。そして――鏡に映るのは、金髪縦ロールの美少女だった。
 中身・三十五歳のおっさん、佐藤健二。ゲームもアニメもまったく興味のない、定時後のビールと競馬を愛するサラリーマンだ。昨夜、急な残業で遅くなった帰り道、横断歩道で車に撥ねられた記憶が最後だった。
 ――まさか死んだのか?
 そしてなぜか転生している。どう見ても貴族のお姫様然とした外見。だが、部屋の本棚に並ぶ書籍や日記から分かったことがある。
 この世界は、いわゆる乙女ゲームの世界。しかも自分が転生したのは、ヒロインの恋路を邪魔する典型的な「悪役令嬢」アリシアだった。
 アリシアは原作では王子を横恋慕してヒロインをいびり、最後には婚約破棄されて国外追放されるという散々な結末を迎えるキャラらしい。だが健二、おっさんなりに考えた。
 その日から、アリシアの奇行が始まった。
 これまで高慢ちきで嫌われていたアリシアが、急に庶民派ムーブをかまし始めたのだ。毎朝庭を掃除し、使用人たちにも丁寧語。家庭教師にも積極的に質問し、休み時間には下級貴族の令嬢たちと庶民グルメ談義。
 だがそれが意外にも評判を呼んだ。学園内では「アリシア様っていい人?」という風潮がじわじわ広まり、みんなと仲良くなってしまう。
 ところが、物語はそんなに甘くなかった。
 原作どおり、王子殿下がリリィに恋をし、婚約者であるアリシアに冷たくなっていく。
 そして、あのイベントの日が来た。舞踏会での婚約破棄宣言。原作では、アリシアがヒロインを引っ叩いたあとに、王子が激昂して「お前とは婚約破棄だ!」と叫ぶシーン。
 おっさんアリシアは、深呼吸して会場の中央に立った。
 王子とリリィが目を丸くする。
 動揺する王子をよそに、アリシアは軽く一礼した。
「婚約は、今日限りで結構」
 ――中身、おっさんですから。年の功ってやつよ
 その夜、使用人のリサが涙目で言った。
 追放エンド? 上等だ。自由に生きられるなら悪くない。
 舞踏会の翌日。屋敷を出て旅に出る彼女の前に、一人の青年が立っていた。彼の名はユージン。侯爵家の三男坊。
「俺と一緒に、商会を立ち上げませんか?」
 こうして――元おっさん令嬢のアリシアは、商会の共同経営者として第二の人生を歩み始めた。
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