第1章 入学
―桐浪学園
その学園は120年の歴史を誇り、全国でも屈指のレベルを持つ高校といわれる。
その高校に見事僕―坂上雄人は合格した。
今、学園の門を前にして、1人喜びを実感している。
「ここまで長かったなあ。すごく苦労したよ。思わず溜息が出るよ、本当」
一人でぶつぶつと呟く。
実際、1年間半日を勉強で費やした程だ。もともと自分は勉強ができるほうでないから、これくらい勉強しても合格できるか五分五分だった。
しかし苦労の甲斐があって、入学試験は結構できた。
「まあ、以前のことはどうであれ、合格できたのは事実だし」
何せトップクラスの桐浪学園に入れたのだからな。
「でも、この学園はかなり勉学に厳しいって噂だよな。そんなところで僕はやっていけるのだろうか」
この学園は、最難関大学に毎年多くの人を送り出す高校だ。当然勉強には厳しいだろう。しかも、この学園は先進的で、定期試験が年に2回しかない。
これは大学の形式を考慮した結果だという。2回しかない分、難易度はとても高い。
「いいや、まだ高校生活は始まったばかりだ。気を引き締めなければ」
そう言って、決意を新たにした僕。そして、学園へと第1歩を踏み出した。
この学園の校舎はまだ20年しか使われていない。その前までは少し離れた所にある旧校舎を使っていた。100年の節目を記念して今の校舎を建てたらしい。
当然、今は旧校舎は使われていない。
校門を入ると、まず目に入ったものはこの学園の象徴である桐である。その桐は通常とは違い、遥かに大きい。その大きさと神々しさから
『神桐』とも言われているそうだ。この木は、今の校舎を建てた際、旧校舎から移植されたものである。
「間近でみると本当、大きいよなあ」
そう思いつつ、昇降口へと向かった。
昇降口には、人だかりができていた。おそらくクラス分けの張り紙がしてあるのだろう。
「どれどれ、自分はどのクラスかな」
覗いてみると、
「ええっ、自分がAクラスかよっ」
思わず飛び退きそうになった。この出来事は全く予想ができなかった。さすがに自分の目を疑った。
「これは、本格的に頑張らなくてはならないな。ちょっとでも気を抜いたらクラスを落とされかねない。」
正直不安になった。トップクラスという環境で1年間勉強しなければならないのだから。
しかし同時に、せっかくAクラスになったんだから3年間Aクラスにいつづけようという意気込みも起こった。
「よし、3年間Aクラスにいつづけてやるぞー!」
思わず声に出してしまった。
「おいおい、朝っぱらから何叫んでいるんだ、坂上」
不意に後ろから声がした。
「お、お前は都山…」
―都山雅貴。同じ中学の出身で、成績は常にトップの秀才である。物事を何でも理論で解決する性格が自分にはいけ好かない。
そして、何よりも気に食わないのが、僕が好意を寄せている女の子と交際していたという噂が流れていたことである。でも、その女の子は自分達と別の高校を目指していたから済んだ話だ。
「何でお前がここに居るんだよ。お前はもっと上の高校に行くつもりだっただろ!」
「他の高校は面倒そうだから、ここにした。」
なんだよ、その理由!
「へえ、お前が俺と同じクラスか。まあ、お前はすぐに落とされるだろうけど、せいぜい頑張りな」
そう言うと都山は先に行ってしまった。
「あの野郎、いきなり現れて挑発かよ。こうなったら意地でも残ってやる」
そう心に固く誓った。
「あー、坂上君だー。おはよー。」
誰だよ。人が決意に燃えているときに。でも、この声は聞き覚えがあるな。
後ろを振り返ると、
「あっ、天宮さん!?」
―天宮玲奈。この人こそが中学の時、都山と交際していたと噂され、僕も好意を寄せている、才色兼備の女の子である。ただ1つ、この人には趣向に難点があって、無類の怖いもの好きなのである。
「どうして…?天宮さんは別の高校を目指していたんじゃ…」
「うん、でも、こっちの方が自分に向いてそうな気がして途中からこの学園を希望したんだ」
もしかして、都山を追って…?
いいや違う、そんなはずはない!これはただの偶然だっ、偶然なんだっ!
しかし、その反面、また天宮さんと同じ学校にいられることが嬉しかった。
「あら、坂上君もAクラスなのね。私もだよ。これでまた3人がそろったね。楽しくなりそうだね」
「ははは、僕もそう思うよ…。」
都山さえいなければ、もっと良かったのにな。しかし、いまさらどう言ったって、この状況は変わらない。これからどうするかが問題だ。
天宮さんと一緒にいるためには、僕が落とされないようにしなければ。
都山がクラスを落とされることは絶対に有り得ないしな。これはますます気が抜けないぞ。
「じゃあ、教室へ行こうか。もうすぐHRが始まるよ」
僕たちはAクラスへと向かった。
教室に入り席に着くと、前の席に座る人から声をかけられた。
「おっす。お前が俺の後ろのやつか。俺は佐伯っていう。まあ、1年間よろしく。ああ、あと俺よく授業中居眠りするからそのときは起こしてくれ」
「ど、どうも」
いきなりそんなことを言われて焦った。それが初挨拶でいうことか。もうちょっと別に言うことがあるだろ、と思っていると、今度は
「初めまして。君が坂上君ですね。僕は清水明。今後いろいろ頼ることになるだろうけど、そのときはよろしく。」
後ろから丁寧な挨拶が聞こえた。
「これはご丁寧にどうも。よろしく」
これまた、さっきとは別の意味で焦った。なにせ、さっきと違いすごく丁寧に挨拶されたのだから。良い生まれの人なんだろうなあ、と直感で思った。
程なくして、先生が入ってきた。
「えー、これから1年間このクラスを担当する、岡本博信といいます。教科担当は英語だから分からないことがあれば遠慮せず聞きに来るといい。」
英語が担当科目か。自分は英語が得意だから少し気分が楽になった。
「それでは早速、この学園恒例の春季合宿について説明をするぞ。ちなみに合宿は1週間後で5日間行われる」
やっぱりこの学園半端じゃない。入学1週間後に合宿か。普通じゃ考えられない。
合宿のしおりが配られ、1日のスケジュールを見てみると、
「授業1コマ1.5時間で朝2コマ、昼4コマ、夜1コマで計7コマだと!授業時間が10.5時間!?しかも夜には自習時間が2時間つき!?有り得ない…」
さすが桐浪学園、質が違う。普通の高校はこんなことはしないだろう。
「次に部活動の紹介冊子を配るぞ。各自好きなところに入ると良い」
「部活動か…」
これだけ厳しい学校なのだから、部に入らないという手もある。しかし、部活動をしないのはあまりに味気ない。かと言って、あまり部活動に入り込みすぎると、
クラスを落とされかねない。ここは文化系の部に入部しよう。
文化系の部のページを開いてみると、1つ変わった部があった。
「どれどれ、桐浪学園旧校舎研究部?しかも定員3名?」
定員3名なんて少ないな。よほど暇な部なんだろうな。おそらく、学園の歴史を調べる程度なのだろう。
「よし、この部にしておこう」
この選択で後悔することになるとは、この時想像もできなかった。
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