表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【D.S.(ダズ)】~過去と未来の交わる場所~  作者: 月代ユカイ
第一章 現実世界
16/87

第16話 運命の日

自宅で早めに休む俺。


その日、俺は不思議な夢を見た。黒い太陽に白い影、それはまるで光と闇が反転した世界。誰もいない町で俺は不安にかられながら優大(ゆうだい)をひたすら探していた。


【回想】


優大(ゆうだい)優大(ゆうだい)~どこにいるんだ優大(ゆうだい)


しばらく探しても見つからず、諦めて帰ろうとした時に優大(ゆうだい)と思われる影を見つけ駆け寄る。


優大(ゆうだい)探したぞ。こんなところで何してたんだ?」


振り返った優大(ゆうだい)には顔がついていなかった。


【回想終了】


「ハッ……夢か……」


午前5時、薄気味悪い夢に冷や汗をかいていた。それからは眠れず、いつもより早めに会社へ行く事にした。

会社についた俺はとりあえず、乱雑になっていた机の上を片付ける事にした。


机を片付けていると笠原(かさはら)が出社し、プレゼンの準備を始めていた。


「今日は悪いな。宜しく頼むよ」


「任せといて下さい。きっと成功させてみます」


自信満々の笠原(かさはら)


「ありがとうな」


笠原(かさはら)には心の底から感謝した。午前の業務が終わると急いで帰宅し、車で病院に向かう。


病院に近い駐車場が満車だった為、少し離れた駐車場に停める事になった。病室に行くといつも通りの元気な優大(ゆうだい)の姿に安心する。


「あれ?出るって言ってからずいぶん遅かったじゃん何してたの?」


少し遅れた事にイライラしている真優美(まゆみ)


「なんかいつもの駐車場が満車で少し離れた所に停めたから遅くなっちゃった。悪いな」


「まあ別にいいけどさ」


退院の手続きをして外へと出ると優大(ゆうだい)が走り回る。


優大(ゆうだい)、ダメでしょ走り回っちゃママ手ギューでしょ」


優大(ゆうだい)真優美(まゆみ)と手を繋いでいる。反対の手には大好きな車のオモチャが……。


「俺、車を回してくるからここで待っててくれよ」


俺が待っててくれと言うと優大(ゆうだい)が怒り出す。


「いやだ。いやだ。優大(ゆうだい)も一緒に歩く」


見かねた真優美(まゆみ)が提案する。


「荷物こんだけだし、そんなに駐車場遠くないでしょ?みんなで歩いて行こうよ」


真優美(まゆみ)がそう言うなら歩いてくか」


だがしばらく歩くと真優美(まゆみ)が文句を言う。


「全然近くないし、もう疲れたよ。私、ずっと一緒に入院付き添ってたから体力落ちてんだよ。もっと考えろよこのバカ」


だから車を回すと言ったのだが……


「この横断歩道渡ったらすぐだから頑張ってくれ」


信号が点滅し始めたので急いで渡りきると優大(ゆうだい)が叫ぶ。


「あれ?優大(ゆうだい)のブーブーがない」


次の瞬間、真優美(まゆみ)の手を振りほどいて逆走する優大(ゆうだい)真優美(まゆみ)は体勢を崩し倒れてしまう。


急いで追いかける俺。優大(ゆうだい)は横断歩道の真ん中ぐらいの所でオモチャを拾っており、後ろからはトラックが迫っていた。


(ゆう)ぅーー(だい)ぃーー」


もう間に合わない……そう思った瞬間に走馬灯のように優大(ゆうだい)との記憶が甦る。


【回想】


「おめでとうございます。立派な男の子ですよ」


「あっありがとうございます。よく頑張ったな真優美(まゆみ)。ほらウチラの子だぞ可愛いなぁ」


「うん。本当にちっちゃくて可愛い。生まれてきてくれてありがとう。今日から私があなたのママよ」


出産の時の記憶だ。


優大(ゆうだい)もうハイハイ出来るようになったのか凄いな」


「でしょ?私も驚いた優大(ゆうだい)は天才かもよ」


得意気に言う真優美(まゆみ)に大喜びの俺。


「クゥマ~おっきして」


「ううう……まだ眠いのに……ぐぅええ」


優大(ゆうだい)……お腹の上に飛ぶのは勘弁……」


思い出が次々と浮かび上がる。


「クマ~どこいたい?とんでけ~しようか?」


優大(ゆうだい)ありがとな。クマどこも痛くないよ。大丈夫だよ」


【回想終了】


優大(ゆうだい)……こんなにも優しい優大(ゆうだい)が死んでしまう……頼む神様……優大(ゆうだい)優大(ゆうだい)を救ってくれ。


ただひたすら優大(ゆうだい)の無事だけを祈った。


目を開くと時が止まっていた。トラックの運転手は電話しながら運転しており優大(ゆうだい)には気づいておらず、距離的に間に合わない事を悟った。


しばらくすると黒頭巾の男が降りて来る。


「我は運命を告げし者、選択の時が来た。心して選びたまえ」


「お前が何者なのかはこの際どうでも良い。頼む優大(ゆうだい)を……息子救って欲しい。もう、あんただけが頼りなんだこのままじゃ優大(ゆうだい)が死んでしまう。この通りだ」


止まった時の中で藁をもすがる思いで黒頭巾にお願いする。


「我には直接手を下す事は出来ぬがそなたをこの停止した時の中で動かす事は出来る」


「だったら今すぐやってくれよ。頼む」


黒頭巾の男が話を続ける。


「だが止められた時の中を動く事は禁忌とされており、その代償としてそなたの足の筋肉は耐えきれず断裂してしまうだろう。その場合、そなたを救う事は叶わぬが構わぬか?」


俺は……俺の選択は………。

覚悟と決心をした俺は黒頭巾に言う。


「俺の体を動かしてくれ、優大(ゆうだい)を救いたいんだ。俺はどうなっても構わない」


「そなたの覚悟しかと受け止めた。我が消えた後、数秒止まった時の中を動く事を許可しよう。幸運を祈る」


黒頭巾の男が消えると優大(ゆうだい)のところまで急いで移動する。この距離ならなんとか優大(ゆうだい)を救えるはずだ。


時が動き出したと同時に優大(ゆうだい)を抱え、真優美(まゆみ)のいる歩道に思いっきり優大(ゆうだい)を投げる。次の瞬間、両足の筋肉がブチッと裂けたのがわかった。


真優美(まゆみ)………優大(ゆうだい)の事、頼んだぞ」


次の瞬間、凄まじい衝撃と共に視界が真っ白となり、意識が途絶える。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ