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【D.S.(ダズ)】~過去と未来の交わる場所~  作者: 月代ユカイ
第一章 現実世界
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第15話 退院前日

真優美(まゆみ)からの連絡に内心焦る俺。


「どうした?優大(ゆうだい)に何かあったのか?」


「もう優大(ゆうだい)が元気過ぎてさ。外に出せ出せうるさいの。こら優大(ゆうだい)じっとしてなさい。お外はまだダメ」


「もうすっかり良さそうだな」


「先生は元気良いし、金曜には退院しても構わないって言ってくれてるんだけど、急にだから半休とかって取れないよね?」


「その日は課長が出張中だから代わりにプレゼン入ってるんだよな。代わりにやってくれるやつもいないだろうし、部長には相談してみるが難しいかも」


「まあ言うだけ言ってみてよ。優大(ゆうだい)もずっと病院じゃ可哀想だしさ」


「わかった。聞いてみるよ」


そして翌日、会社で部長に相談する大地。


「すみません、明日なんですが息子の退院がありまして……その……午後半休をいただけないでしょうか」


案の定、困った顔をする部長。


「いや平森(ひらもり)君も出張中だし、代わりがいれば良いが誰もやりたがらんだろう」


やっぱり無理かと諦めてかけていたところ後ろから声がする。


「すみません部長。そのプレゼン私にやらせては貰えないでしょうか?以前から興味がありましてステップアップの為にもどうかお願いします」


声の主は笠原(かさはら)であった。


「おぉ笠原(かさはら)君やってくれるか?目黒(めぐろ)君からちゃんと話を聞いて万全の態勢で挑んでくれよ。目黒(めぐろ)君も明日休むなら、引き継ぎしっかり頼むな。良い部下がいて良かったな」


「あっはい。ありがとうございます。しっかり引き継ぎます」


話が終わると笠原(かさはら)を隅に呼び出す。


笠原(かさはら)悪いな。俺の都合でお前にまで迷惑かけて、体調だってまだ完全じゃないだろ?」


「体調は大丈夫です。もうすっかり良くなりました。目黒(めぐろ)係長には先日は自分のせいで迷惑かけてますから出来る事は自分に言って下さい」


そんな事を気にしていたのか。律儀(りちぎ)な奴だな。


「あれは全部、平森(ひらもり)のせいだろ?気にすんなよ。こっちこそプレゼン代わりにやってくれるって言ってくれてありがとうな」


「あっはい。頑張ります」


何はともあれ、これで優大(ゆうだい)の退院の日に迎えにいける。笠原(かさはら)には感謝だな。優大(ゆうだい)の面会に行った時に話すと真優美(まゆみ)は凄く喜んだ。


「いやー頼りになる後輩君がいてくれて本当に良かったね」


「本当だよ。マジで助かった。優大(ゆうだい)、明日からお家帰れるからな」


大喜びの優大(ゆうだい)。ハシャギすぎて心電図の警報がなる。


優大(ゆうだい)、ほら警報なっちゃったから大人しくして……」


「いぃーだ」


俺をからかうように跳び跳ねる優大(ゆうだい)


「こら優大(ゆうだい)。暴れるなよ」


警報を聞きつけた看護婦さんが病室を見にくる。


「今、警報がなったようですがどうかなさいましたか?」


「すいません。明日、帰れるって言ったらハシャいでしまって……ほら優大(ゆうだい)も謝って」


「あっ大丈夫です大丈夫です。退院かぉ。そりゃハシャいじゃうよね。良かったね」


看護婦さんは笑顔で応対してくれた。


「えっと……ジャンプしてごめんなさい」


さっきまでとは違い看護婦さんの前では大人しい優大(ゆうだい)


優大(ゆうだい)君は私が見ていますので、もし良ければリフレッシュエリアで休憩してきてはいかがですか?」


看護婦さんの言葉に甘え、真優美(まゆみ)と二人でリフレッシュエリアへと向かう。


真優美(まゆみ)優大(ゆうだい)って看護婦さんの前だといつもあんな感じなのか」


「そうなのよ、急に大人しくなっちゃってさ。なんか嫌な感じでしょ?誰に似たのかしら」


「うーむ。わからん」


「そう言えばお墓参りどうだった?」


「ちゃんとお線香あげて葬儀出れなかったのも謝ってきたよ。あと、ウチラの結婚式にも出席してくれた翔流が籍を入れたみたいで今度、結婚式招待するって」


真優美(まゆみ)の目がキラキラしている。


「翔流君ってあの超イケメン君だよね?良いなぁきっとお相手も美人さんなんだろうな」


「中学の同級生で超美人だよ。結婚式楽しみだよな」


「まあ優大(ゆうだい)が大人しくしているとは思えないけど……」


急にどんよりとなる俺と真優美(まゆみ)であった。


「よし、そろそろ戻るか」


部屋にこっそり戻り様子を伺うと看護婦さんと遊んでいる優大(ゆうだい)。本当に良い子にしている。


「じゃあ優大(ゆうだい)君。ネコさんの鳴き声はどんなかな」


「ニャーオだぞ」


「凄~い。じゃあゾウさんは?」


「パオーンっていうんだぞ」


「お見事。じゃあ次はちょっと難しいよ。クマさんはなんて鳴くでしょう?」


しばらく考えたあと、優大(ゆうだい)が答える。


「……カンベンしてくださいよって泣いてたよ」


「ん?」


看護婦さんがハテナ顔をしていると優大(ゆうだい)が俺の方を指差し、叫ぶ。


「あっーママとクマいたぁー。どこ行ってたの?」


最悪のタイミングで見つける優大(ゆうだい)。横で笑いを必死に堪えている真優美(まゆみ)。看護婦さんも苦笑いしながら会釈をして出ていってしまう。


「ぶっ……あははは………あぁ~面白い。優大(ゆうだい)あんた最高だよ。あははは……」


「俺は最悪だ。もう優大(ゆうだい)、パパの真似しちゃダメだぞ」


笑いながら真優美(まゆみ)が言う。


「パパじゃねぇよ。クゥ~マ……あはははは」


優大(ゆうだい)も続けて言う。


「クゥマ~」


「……最悪だよマジで」


凹んでいる俺を見てさらに笑っている真優美(まゆみ)が言う。


「明日、退院だし、今日はもう帰って……水浴びして冬眠でもしてきなよぉ……ぷぷぷ」


「冬眠したら明日これないだろが、まあ今日は早めに休むよ。ありがとう」


「明日は宜しくね。頼りにしてるよクゥ~マ」


「クゥマ」


「……ふん」


その日は疲れていた事もあり、家に帰って早めに就寝をする事にした。

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