64話
少し見ないうちに表の様子は一変していた。
所狭しと兵士が横たわっており、まだ動ける兵士が多くの兵の介抱をしている。
血は流れていないのに、横たわる兵士たちに殆ど生気が感じられない。
自分の頭髪をひたすら毟る者、指の爪を齧り取り口を真っ赤に染めている者、異様な光景が広がる。
潰れた幕舎は戻され、中からくぐもった声が響く。
時折運ばれる、全身をシーツの様なもので簀巻きにされ、猿轡を嵌められた者が身をくねらせもがく姿も見える。
まだ動ける豪胆な兵士たちが、セルジオを何か恐ろしい物のように見送る。
・・・・
セルジオが大石を石鋤で大きく開く。
彼の後ろを遠巻きに見る兵士が、息を呑みながら見守る。
カンテラに火をいれ、躊躇いもなくダンジョンに降りて行く。
彼を心配そうに眺める視線が痛い。
彼は逃げるように降りていった。
・・・・
長く続く坂道、人影はない。
いつもと違い、一歩一歩確認しながら地下に下って行く。
カンテラを掲げ先を照らし、異変が無いのを確認しながら確実に進んでいく。
突き当りを折れ曲がり、狭い通路を通ると、空けたままにしていた石戸の先に出る。
左右を照らしてもなんの変調も感じられないと思った瞬間。
鼻腔に鉄と汚物の混じった嫌な臭いがセルジオが居る空間を満たしている事に気付いた。
「・・・・あぁ・・・・」
カンテラに照らし出される空間。
ゴーレムの胴体を退かした辺りに、幾つかのゴーレムが直立不動で佇んでいる。
そしてそこは、セルジオの知る漸く片付きはじめた回廊ではなく、床一面ぬらぬらと光る体液で埋め尽くされてた血の海だった。
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