表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/200

039 2026年4月24日(金)_03 知らないようで知ってた天井

新庄市郊外。

華麗——と言うには、あまりに静かな決着だった。


結界は収束し、

夕方の風だけが、草地をなでていく。


その瞬間。


耳元のヘッドセットが、爆音になった。


「——なんで勝手に戦ってるの!」


片桐は、思わず肩をすくめた。


画面の隅で、浮雲が

「?」

からの

「やべぇ」

という、教科書みたいな百面相をしている。


——あ、この人、絶対天然だ。

残念イケメンだ。間違いない。


「戦闘開始前に、

敵性既知か未確認かのアナライズ、

行動予測、別動隊の可能性、

結界規模の測定、

攻撃手段の選定、

<因果負荷の見積もり、位相安定率の評価、神性反応のスペクトル解析、以下省略!>

——片桐さん、復唱!」


「は、はい!」


「結界が失敗したらどうなる!」


あ、えっと……


「……あなたが解除しないと、

あなたに全部、返ってきます!」


ぐさっと、刺さった。


「お昼休み前にマニュアル見せたよね!?

最大範囲で張って!

半径五キロ!

あと一分遅かったら、因果焼却ライン超えてたからね!?」


そこまで言わなくても……!


そう思った瞬間。


世界が、ふらっと傾いた。


「あれ……」


足元が、抜ける。


「……目、回る……これ、貧血……?」


浮雲の顔が、視界いっぱいに近づく。


「おい、片桐——」


そこで、意識が切れた。


---


……。


………。


「——起きた?」


白い天井。


消毒液の匂い。


「あ、」


声が、かすれる。


「……ここ、どこ……?」


横にいたのは、母だった。

その向こうに、父。


ああ、

この二人、なんだかんだで、ちゃんと“両親”なんだな。


視線を動かす。


ここは、

文翔館地下、

山形ロボ・ドック内医務室。


——まじで?


ベッドの周囲では、

児島と若林が、

両親に頭を下げている。


「申し訳ありません……」

「こちらの管理不行き届きで……」


いや、そこ、私の上司ムーブなの?


「……つか、どうやって帰ってきたの?」


鎌田が、腕を組んで言う。


「自立モードだよ。

単純動作なら、遠隔で帰投できる。

お前さん、倒れたままでも、

あの箱、ちゃんと帰ってきた」


「……なにそれ、こわ」


天井を見つめる。


知らない病室。

知らない地下。

知らない世界。


「……シンジくんの気持ち、

マジでちょっと分かるわ……」


鎌田が鼻で笑う。


「お前さんも、

ちょいちょい深いオタクだな」


「うっさい!」


ふと、気づく。


体が、やたら重い。


視線を落とすと、

胸、腕、足、

あちこちに、お札。


「……なにこれ」


「山倉だな」


鎌田が即答する。


「ルーンと、陰陽符と、修験系の結界札。

あとそれ、たぶんチベット系。

貼れるもん全部貼ったな、あの人」


「クマ殺しのお札マニア……」


医務室の隅。


正座している人影があった。


黒い服。

姿勢が、やたら良い。


——浮雲。


1999年に、

世界を救った男。


正座で、

児島に、

説教されている。


「……あなたね」

「現場判断で飛び出す癖、

27年前から、一ミリも直ってないのよ」」


「……すまん」


「すまん、じゃない!」


片桐は、ベッドの上で、吹き出した。


「……なにこの光景……」


英雄。

伝説。

人類の切り札。


それが今、

地下の医務室で、

正座。


——マジで、ウケる。


でも。


その背中は、

少しだけ、

小さく見えた。


片桐は、ゆっくり息を吐く。


——ああ。


これが、

“守った側”の世界なんだ。


自分は、

もう、

そっちに、足を突っ込んでしまったらしい。


ベッドの横で、

母が、そっと言った。


「……生きてて、よかったね」


片桐は、天井を見たまま、答える。


「……まだ、実感ないけど」


隅で、浮雲が、ぼそっと呟く。


「……慣れないほうが、いい」


児島と若林が、同時に、ハモった。


「それは、ほんとに、そう」


医務室に、

変な沈黙と、

少しの笑いが、落ちた。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF / ロボット / 地方都市 / 行政・公務員 / 都市伝説
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ