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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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000 2025年9月 序章

この物語の構築に影響を与えてくれた、

数えきれないほどの作品群と、

そのすべての創り手たちに、深い感謝を。


そして――

今から二十六年前、まだ形も輪郭もなかったこの世界の骨子を、

言葉と笑いと想像力で一緒に組み上げてくれた、

古き友人たちへ。


あのとき交わした、

「こんな物語があったら面白いな」という何気ない一言が、

長い年月を経て、こうして一つの物語として、

ようやくここに辿り着きました。


このページをめくるあなたもまた、

この世界を完成させる、もう一人の共犯者です。

どうか、しばしのあいだ、

この物語の中を一緒に旅してもらえたら、うれしく思います。

挿絵(By みてみん)

2025年9月。


平和な山形市の街並み。通学路も、商店街も、夕方のニュースも、いつも通りに流れている。


ただ一か所だけ、風景に馴染まないものがある。

山形県立中央病院の裏手、空き地の真ん中に立つ、二十メートルほどの“ハコ”。


派手でも、威圧的でもない。

ただ、そこにあるだけなのに、なぜか人は足を止める。


誰も名前を知らない。

誰も由来を説明できない。


それでも、今日も変わらず、

街の時間だけが、その周りを迂回していく。


夕暮れになると、

その“ハコ”の影だけが、少し長く伸びる。

街灯の光と重ならず、建物の壁にも沿わない。

まるで、別の時間に属している影みたいに。


通りすがりの高校生は、

写真を撮って、

「なんかエモい」と言って去っていく。

会社帰りの人は、

見ないふりをして、足早に通り過ぎる。


誰も、

“ここを通ると、空気が穏やかに変わる”ことには、

気づかない。


---


夜。

病院に救急車の赤い光が止まる。


それを微かに反射したハコの表面に、

薄い霜のようなものが浮かび上がる。


触れれば、冷たい。

だが、気温のせいではない。


金属のはずなのに、

鼓動のような振動が、

掌の奥に、わずかに伝わってくる。


---


山形市、国の重要文化財である旧県庁舎《文翔館》。

ひとりの警備員がその廊下で立ち止まる。


几帳面にアイロンの入った制服。

ゆっくりとした足取り。

懐中電灯の光を、

エレベーターの扉に向ける。


彼は、

そこに“入口があった”ことを、

知っている。


もちろん、

いまは何もない。

ただのバリアフリー用に増設したエレベーターだけだ。


---


警備員は、

帽子のつばを直して、

小さく息を吐く。


「……今日も、静かだな」


返事はない。

あるのは、

風の音と、

遠くを走る救急車のサイレンだけ。


---


だが、

ハコの内側で、

何かが、

一段階だけ、目を覚ます。


結界が、

わずかに、

軋む。


---


山形県庁、とあるフロア。

蛍光灯の白い光。 コピー機の唸り。

古い空調の、一定の低音。

片桐一葉かたぎりひとはは、鼻歌まじりにマウスを動かしている。


「今日もマクロがきれいに書けました」


画面にはExcel。 DX推進関連予算の統計データ。

手作業なら三時間かかる集計が、 ボタン一つで整列する。

色分けされたセル。 エラー検出。 自動整形。


「はい、アタクシ神。」


小さく呟く。

誰も聞いていない。

同僚は隣で電話中。

課長は奥で咳払い。


一葉は、くるりと椅子を回す。

窓の外。

遠くに見える、月山、出羽三山。


一葉は特に意味もなく、マウスカーソルを止める。

一瞬だけ。


画面が、ほんのわずかにノイズを走らせる。


気のせい。


「……生配信見すぎたかな?」


再びクリック。 処理完了のダイアログが出る。



---


その夜。


南米の観測所で、 重力波の微小な乱れが検出される。


北欧の電波望遠鏡で、 ノイズに混じる不規則な周期が記録される。


中国沿岸部の港で、 クレーンの影が、数秒だけ逆向きに伸びる。


誰も、 それらを関連づけない。


県庁の一室で、 鼻歌を歌っていた一人の職員と、 病院裏の“ハコ”と、 世界各地の異常とを。


まだ。


世界は。


平和であることになっているから。

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