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死亡時刻は誕生日  作者: 小石を置いていこう
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泣きたくても泣けない

短いです。

 「うわぁ、雨降ってきやがった。傘持ってきてねぇぜ」


 「佐々木ん家寄ってこうぜ。な、いいだろ?」


 


 今現在高校2年生の夏、僕にとっては最高に地獄な毎日だった。



 僕のクラスでは、いじめられている人が一人いた。

 それでも、暴力などからいじめられっこを庇った奴がいて案の定2人ともいじめられることになってしまった。

 そして庇った奴というのが僕の親友だった。

 


 (…聞かなくても勝手に行くくせに)



 正義感の溢れる、真面目で優しい良い意味での馬鹿だったけれど、僕はいつか何かをやらかすと思っていた。


 そしてそれは現実となり、僕はその親友として巻き込まれてしまった。





 それなのに、最初のいじめられっこはどこかへ転校してしまい…。

 もともと引越しをする予定だったのだから親友が手を出さなくとも終わっていたはずだったのに。

 いや、ターゲットがいなくなれば次にいじめられていたのは僕だったのかもしれないが、こんなふうにいじめられることはなかったであろう。


 しかも正義感溢れるヒーローのような、美味しいところだけを持って行き後は全て丸投げする僕の親友も当然のように逃げたのだから、何も言えない。




 他のクラスメートも自分に被害が及ばないようにかかわろうとしてこないし僕は親友も自身も信頼もプライドも何もかもを失った。


 昼は僕の食べている弁当を頭からかぶせたりバケツの水をかけられたり、放課後は少ないお小遣いをぶん取られ、そのうえで何かしらの理由をつけ家に来て部屋を荒らしたり物を盗んでいったりする。




 痛いのも辛いのも心に響いて、自殺しようと考えたのは少なくない。


 僕の心が摩耗して摩り減っていくのは目に見えていたが、それでも優しく元気な妹に癒されていたのでまだ耐えることは出来ていた。


 

 

 

 そんなある日、いじめっこの奴らがおふざけ半分で僕の背中を押した。


 場所は階段で、校内で一番段数の多いところだった。

 先生はいままでのあれやこれを黙認していたけれど、流石に今回のは駄目だったようだ。




 左手と足首の骨を骨折して首が切れ大量出血した大怪我をしたからだ。

 僕はそのまま入院、手術も行った。


 両親は僕の成績にしか興味がなく、大怪我をしたというのに将来性のある妹のピアノのコンクールを見に行って僕の下に来たのは伯母だけだった。

 


 


 なんとか学校に復帰すると、あのいじめっこの奴に満面の笑みで言われたことがあった。





 「お前の妹、俺が食べちゃったわ。可愛いのな。もう俺の彼女ものだから」

 

 



 最初は、何を言われたのか理解できなかった。

 家に帰ってから、やっとわかった。

 部屋にこもって泣く選択肢もあったけれど、それよりも妹に理由を聞きたかった。

 それに、嫌なことをされていないか気になった。

 もし殴られていたらと思うと何も考えられなくなった。



 夕食の準備をしていた妹に問い詰めると、始めは知らないふりをしていたがだんだんと話してくれるようになった。

 




 「何を言われた」



 「酷いことされてないよな」



 「あいつに騙されてるんだ」





 僕が言ったのはこれだけ。



 だけれど、妹は彼の気持ちも知らないで偉そうなこと言わないでと僕のことを殴った。

 殴ったというよりはビンタのようなものだったが、衝撃的には殴られるよりも心に痛かった。


 きっと何も考えていなかったんであろうが、手には包丁を握っていたのだから僕は首を斬られて勢いよく血が噴出すのをこの目で見た。


 痛みはなかったが、ただただ小さい頃から面倒を見てきた妹との絆の橋がこんなにも脆かったんだなと悲しくなった。


 その一撃が、僕の治りかけの怪我を開いて僕はそのまま倒れてしまった。

 意識はあったけれど、それも朦朧としたぼやけたもので話すことどころか立ち上がることさえも出来なかった。


 


 妹は、お兄ちゃんはいじめっこの酷い人だとか人を一人いじめ殺したことがあるだとか救急車で運ばれる僕に追い討ちをかけるように根も葉もない話を延々と話し続けた。


 いじめの仕返しに階段から突き落とされて、その傷が開いたと医者に言っていたけど自分のせいとは全く思っていないようだ。


 妹は僕に、仕返しをしたとでもいうような狂気的で幸せそうな笑みを浮かべさよならと言った。



 そこから僕は意識を失った。

 だけれど次に目を覚ましたのは、すぐだった。







 △×△×△×△×△×△×△×△×△×△×△×△×△×△×△×








 「…どう、適性ある?」


 「うん、あるね。これならあの運命をあげてもいけそうだ」


 「あげるというか押し付けるって感じだけれどね」


 「ああ、それもそうだね。ちょっと可哀想だから可能性もオマケしておくかな。それも飛び切りのやつを」


 「あくまでも自分の力でやってもらわないといけないけどね」




 静かで落ち着く場所のような気がする。

 冷たくひんやりした場所に寝ているのか背中が少し痛かった。

 目は開けられないけれど、声は聞き取れた。


 これは誰の声であろうか。


 懐かしい声だった。

 生まれる前から親友だったような、いつでも一緒にいたような声。



 (運命とか可能性をあげるってどういうことだろう…)



 この声が何を話しているのかはわからなかったけれど、自分のことのように思った。


 

 「名前はどうしようか、この運命だと孤児になると思うけど」


 「あー…孤児か、どうしようね。…じゃあさ、次にここに来た人の名前を取ることにしようよ」


 「そうねっ、…ってもうきたみたいよ。運が良いわね」


 「ははっ、運を決めてるのは僕らなのにね」


 「えーと、この人の名前は…ジェーンか。外国人だね。まあ、これで決まったことになるかな。…そろそろ送るかな」


 「この子が次の――になるかもしれないし私達も―――としてはりきらないとね…」


 

 一部分聞き取れない場所があって、何か聞いてはいけないものなのかと心配になったけれどやっぱり、孤児だとか名前だとかは何がなんだかわからないままでも楽しそうなことに参加できるのは間違いないと思った。

 


 







 

ありがとうございます。

ずっとこの小説の存在を忘れていて最近少しの修正を行いました。

時間が離れていますが一話めと二話めは同時に投稿したと思ってください。

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