第124話 ゆうなと弥勒計画
私は気配の波動で飛び起きた。
起きるといつもの自宅、私ははるま君を叩き起こして窓を開けた。
「あ、また怒られる…」
私はリビングのドアを勢いよく開けて飛び込んだ。
「ママ!たぶんお姉さんの危機!また行ってくる!」
「え?何?ちょっと待ちなさい!」
「駄目!今すぐ行かないと!」
はるま君を引きずって窓から飛び降りる。
「イフリートさん助けて~」
落ちる私達を拾い上げて空高く飛び立った。
「また自分で飛び降りて助けてか」
「えへへ、ものすごい気配を感じる!あっちに飛んで!」
「なに?またあの女の人?」
「いや、なんかものすごい気配、あれよりやばいかも」
「俺は感じないんだよなあ」
いつもの校庭に降り立った私達は周りを見渡した。
校庭に建てられたまどかさんの家の扉が開いた。
「な!お前は!」
まどかさんの家から出てきたのは、夜叉さんだった。
「夜叉さん!」
「はいな。これがゆうな様、はるま様の世界ですかな?」
「なんで夜叉が?
っていうか、夜叉がまどかさんやアリシアさんの同魂存在だったのか」
「なぜかと申されましても存じませぬゆえ」
「まどかさんの状態が不安定なのかな。
法則が本当にわからないなあ」
「おろ?」
「どうした?」
「急に眠気が、これはいかがしたことか」
「たぶん元の世界に戻るんだよ。またあっちで会おう」
「なるほど、お待ちしておりますれば」
夜叉は膝から崩れ落ちた。
倒れた瞬間姿が揺らぎ透き通り、そのまままどかさんの姿になった。
「んんん」
まどかさんが目を覚まそうとしたその時、再び身体が揺らぎだす。
透き通り姿を現したのは、隠者を付け回していたあの女性だった。
「やっばい!まただ!」
起きた瞬間襲い掛かってきた。
前とは比べ物にならない速さで女性の攻撃を躱すはるま君。
「はるま君すごい!」
イフリートさんのパンチが直撃して弾き飛ばされた女性にベヒーモスさんが上から踏みつける。
ベヒーモスさんが足を上げた瞬間、はるま君が飛びかかり思いっきり殴った。
「痛そう…」
それっきり女性は起きなかった。
また揺らぎ姿が戻ったまどかさんを、
はるま君がお姫様抱っこで家に連れて入った。
ベッドに寝かせたまどかさんを見ながら、勝手についてきていた天狗に尋ねた。
「回廊を閉じるとか、こうなる方法はやっぱり無いの?」
「全てが理の外の出来事だからな。やっぱわかんねえな」
「だよねえ」
私も自分の中の神の知識を探っているが、手がかりすらない。
「怖いのが、私達が他の世界の力を引き出せるように、
あの女性がアリシアさんの力とか夜叉さんの力を引き出せてしまうことなんだよね」
「そうなんだよな。
それが最悪だろう」
「あの女性は何故襲ってくるんだろう…」
「俺達が隠者といたから?」
「なんで隠者さんを狙ってたんだろう…」
「ああ、それならたぶん強大な力に対する渇望じゃねーかな?」
「力が欲しい?」
「まあそんなところだ」
「そうか、みんなが欲しい欲しいの世界だから…
じゃあもしかしてアダムとイブと同じ状態なのかも」
「それならゆうなちゃんの力で救える?
あ!もしかして前回ゆうなちゃんを狙ったのって、
魔力を封じる力を恐れてじゃなくて聖女の力に惹かれてなんじゃない?」
「でもそれならあの世界に行くか、
あの女性がずっとこっちに居てくれないとどうしようもないね」
「だよなあ。起きてたら襲ってくるし、気絶したら消えちゃうし」
「あ~くそ!獣王国行く前にあの人のこと解決しておくべきだったのかなあ」
「そんなこと言っても仕方ないよ。それにあの時だとまず勝てなかったし…」
「だよなあ。成長出来たから勝てたけど、あの世界のままだと今の成長は無かったんだろうな」
「そうだよ。ゲームじゃないんだからクエスト解決クエスト解決で進んでないもん」
「だよな。全部中途半端で終わってるし」
その時、チャイムが鳴った。
「俺が出るよ」
はるま君がドアを開けるとおねえさんの驚いた声が響いた。
「はるま君!?どうして?
まどかちゃんは?」
「あいや、あの女性がまた出てね」
「あ、ああそういうことね。
ゆうなちゃんもいるの?」
おねえさんは何をそんなに驚いたんだろうか。
「私もいるよ~」
はるま君とおねえさんが部屋に入ってきた。
「また朝から大変だったのね」
「うん、なんとか出来ないかなってね…」
「私達の方でも覚醒の技術の応用で、
封じ込めは出来ないか研究はしてるけど難しいわね」
「あ!でも一つ報告よ!
魔法を発動し続ける装置の開発に成功したの!」
「それ凄いんじゃない?」
「仕組みは…きっと聞いてもわからないからいいや」
私がそう言うとおねえさんは笑い出した。
「ゆうなちゃんらしいわね。
まあ魔力の変質の法則を留める装置とだけ言っておくわ」
「それって魔力の変化を記憶させておくってこと?
なら魔法じゃなくても使えるね!」
「魔力を変化させるけど魔法じゃない?
ちょっとわからないわね」
「それって今ある?試してみたいことがあるんだけど」
「ええ、テスト機があるわ」
私は魔力を封じる時に発生する魔力の変化を記憶させた。
聖女の力は魔法じゃないけど、魔力を封じるのは魔力操作だから同じ理屈のはずだ。
「どうやって発動するの?」
「このボタンをね」
おねえさんがボタンを押すと魔力の気配が無くなった。
「お、これ使えるね。魔力が無くなった」
「これをここに置いておけば、
あの女の人が現れてもとりあえず魔力が無いから少しは弱いかなって」
「それでどれぐらい弱くなるの?警察で対応出来る?」
「いや~どうだろう。
普通の人間だと一対一は無理じゃないかな。
でも辺り一面吹っ飛ばされて焼野原になるとかは防げるかな」
「無いよりはましね」
「今のって大量に出来る?」
「魔力を消費したりもしないし、
物理的な時間があれば大丈夫だよ」
「これなら精霊の力も多少は弱められるわよね。
これで弥勒計画も進められそうだわ」
「弥勒計画?」
「三六九機関のごろ合わせでみろくね。
覚醒した能力を悪事に使う人間が増えてきてるから、
それに対抗するための法整備や対抗組織の拡大ね」
「俺達も協力しないとだよね?それ」
「もちろん!断られることは想定してないわ」
「おねえさんがそういうこと言い出したら断れるとも思ってないけどね」
「でも出来る限り二人には戦って欲しくないのも本音よ」
「わかってる。だから断らないんだよ」
「んんん」
「まどかさん!大丈夫?」
「あれみなさん、おはようございます?
もしかしてまたでしょうか?
完全に寝ていたのでその間のことは…」
「一回寝たら起きないタイプ?」
「起きる時間までは起きませんね」
「ゆうなちゃんみたいだ」
おねえさんが笑い出した。
「大地震が起こっても起きない彼に似たのね」
それからおねえさんはまどかさんに装置の説明を始めた。
「じゃあ装置は置いていくから、魔力が必要な時は切ってね。
基本的には付けておいて欲しいけど」
「わかりました。
はるま様もゆうな様もありがとうございました」
「そろそろ様辞めない?敬語も辞めようよ。俺達は様付けで呼ばれるような人間じゃないしさ」
まどかさんは少し考えてから答えた。
「わかったわ。
はるま君もゆうなちゃんもありがとう」
うちに帰った私達はやっぱりママに怒られた。
「え~でもちゃんとママに行ってくるって言ったよ~?」
「行って良いって言ってないでしょ!まったく!」
「俺は無理やり連れていかれただけで」
「あ、はるま君ずるい~。
ママ!はるま君戦ってました!」
「な!仕方ないだろ!」
「もう良いから二人ともお風呂入ってきなさい!」
「は~い」
お風呂に浸かりながら、私はアダムとイブのように彼女を救う方法を考えた。
きっと戦い以外で私じゃないと出来ないことがそれだから。
私は聖女の力を使って、出来ることを考えないと…
その日は眠るとパパの夢を見た。
魔王さんだと思って話しかけたらパパだった夢だった…
ゆうなちゃんよくやったねってハグして頭を撫でてくれるパパの夢…
―― 第六章 完 ――
本当の強さを知りつつある二人。
二人は謎の女性を救うことを決意した。
明かされるたびに深まる謎に二人はどう立ち向かうのか。




