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ご主人様には悪いけど、今日も裏から世界を掻き乱す  作者: 家宝ダンゴ


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1/7

拝啓ご主人様、タバコが買えません

銃口から薄らとのぼる煙。


左胸への衝撃。


遅れて届く乾いた音。


やけにスローに見えた。


(……なるほど)


くぐもった音が漏れる。


(声は出せない、か)


崩れ落ちる身体と共に視界が赤く染まった。



(あとは運次第かな)



青い瞳はゆっくりと閉じていった。





──五日前。


スマホの通話終了をタップした。


「逆探知完了」


スマホの画面には、通信会社の発信元データ。

流れる文字を追う。


窓を開け、タバコを咥える。

火をつけると細い煙が夕焼け空に消えていく。


小さく息を吐き、スマホをポケットにしまった。

発信元は、エクリプスの拠点。


「裏切り……かな」


小さく呟いた。



玄関に向かい、座って靴を履いた。

ヒロが眉を寄せながら手を取る。


「ノア、命令だ」


「……絶対帰って来い!」


ヒロの握る手にぎゅっと力が入った。

フッと笑い、軽く握り返す。


「了解」


ヒロの後ろで見守るサクラに目で合図を送り、玄関を出て行く。




扉がゆっくりと閉まる。


パタン。


ノアは大きく息を吐いた。


「行くの、だる……」


ポケットからタバコを取り出し、火をつける。

軽く煙を吐くと、駅へ向かって歩き出した。

手元のタバコを覗き込む。


「あと三本か……買ってこ」




駅前のコンビニでレジに並ぶ。


「166カートンで」


「身分証お願いします」


「えっ」


「身分証がないと販売出来ません」


「いやいや、いっつも買ってるし」


品出しする年配の店員に声をかける。


「濱さん!僕いつもここで買ってるよね」


年配の店員はゆっくりとレジに向かうと張り紙を指差した。


「ごめんねぇ」


「最近マナーが悪いって本部にクレーム入っちゃってさ」


張り紙には駐車場でイキる若者の写真。

顔は隠されているが、手にはタバコと酒が見えた。


「……身分証もってない」


「じゃあまた来てよ」


「こいつら消すから売ってよ!」


「……けす?」


「濱さん!一箱でいいから」


「ごめんねぇ」


「……」


必死な交渉も無駄に終わり、ノアはトボトボと駅の改札を通って行った。



電車を降り、駅を出る。

タバコを取り出し、火をつけた。


「あと二本……」


キョロキョロと辺りを見回し、一軒のコンビニを見つける。


「ラストチャンス!」


真剣な目で自動ドアをくぐった。



一分後、ノアは項垂れて店を後にした。


ポケットに手を入れタバコを握りしめ、ひたすらに道を行く。


「一本はニコ救出のご褒美にして、あと一本か……」


「今回の戦いはキツイかもな」


ツッコミは不在だった。



日が落ちた、薄暗い道。

工場地帯の照明がキラキラと輝く。


金網で囲まれた敷地に侵入していく。


「もう少し駅近にしとけばよかったな」


ノアの口から愚痴が漏れる。


カチャッ。


背後から聞き慣れた金属音。


「動くな!」


くるりと振り向く。


「僕に言ってる?」


「お前しかいないだろ!」


ノアは静止を無視してスタスタと近づく。


引き金が引かれる。


その瞬間。


銃を持つ手を蹴り上げ、そのまま肩に踵を落とす。

背後に立ち、男の腕を後ろに回し捻り上げる。

呻き声と共に、手から銃がこぼれ落ちた。


「おっ。これ貸して」


男を盾にしながら迎え撃つ。


パァン。

渇いた音。


何度も。


何度も響き渡る。


「や、やめ、う、撃つなぁぁ!」


情けない男の声が響いていた。


「……うるさ」


銃のグリップで男の後頭部を殴る。

力なく堕ちた。


あたりには戦闘員達の山が出来ていた。

ノアは一人ずつポケットの確認をして行く。


「……まじで」


「一人も持ってない」


ノアは一面の星空を見上げた。


「もしかして、ここって禁煙……」


夜風が金色の髪を揺らしていた。



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