⭕ 魔法が使いてぇんだ
──*──*──*── 3ヵ月後
ガタガタと馬車に揺られて3ヵ月──。
漸く≪ 獣法国ケセルパイダ ≫へ入国して、ひたすら南へ向かって移動を続けている。
≪ 獣法国ケセルパイダ ≫は名前の如く、亜人類が統治している王国みたい。
人間と似たような姿をしているけど、獣耳や尻尾,翼が生えていたりするみたい。
亜人類ばかりで人類が居ないってわけではなくて、人類も亜人類に混ざって暮らしているみたい。
ギッちぃが偵察させているパシリの情報では、≪ 獣法国ケセルパイダ ≫には犯罪を犯した亜人や人間しか奴隷に落とされる事はないみたい。
死刑がなくて、犯罪奴隷として生かされるのがもっとも重い刑罰みたいね。
死刑で楽に死なせるよりも、生かして辛くて苦しい人生を歩ませる方法を選んだ──って事かな?
人殺しの犯罪者が奴隷落ちして、殺害した遺族に買われたら悲惨だよねぇ?
どんな仕打ち──報復を受ける事やら…。
そうそう──、ギッちぃが不浄から生み出した魔物だけど、今では容姿もスッカリ変わって、4体とも種族の異なる魔物に育っていた。
ヴァンパイア,魔狂人,エルゲネス,ワンコ──じゃなくて、スワローウルフだっけ?
エルゲネスは三眼族って言う3つ目の魔族みたい。
ヴァンパイアは吸血鬼で、蝙蝠に変身したり、生き血を吸血したりする魔物で、魔狂人は武人って感じ?
魔狂人は武器なら何れでも均等に扱えるみたい。
ギッちぃは各種武器に精通した魔狂人を増やす事を選んだみたい。
馬車の中には新しく不浄から生まれた小さなギッちぃが5体居る。
最初の魔狂人は拳を極めさせるみたい。
装備するのは、ナックルとかメリケンサックとか──、そういうの?
三眼族は目に見えない遠くの景色を見る事が出来て、どっちの方角へ進めば人が住んでる場所へ行けるのか教えてくれる。
モンスターの群れが何処に居て、盗賊や山賊が何処に潜んでるのかも教えてくれる。
スワローウルフは鼻が利いて素早くて、体を霧状にして敵の中へ潜り込んで奇襲を掛ける事が出来るみたい。
吸血鬼は──何か、ずっと鏡を見ていてカッコいいポーズとかイケてるポーズを模索しているみたい。
ナルちゃんかよ!!
蝙蝠に変身出来るから、空からの偵察が出来そう??
吸血鬼も魔狂人も三眼族も身長は200cmを有に越えているし、スワローウルフは恰幅が良くてふくよかで肉付きあるベンガルトラ並みに大きい。
頼んだら背中に乗せて走ってくれそぉ~~~。
エルゲネス
「 ──影魔王様、3時の方角から亜人類と人間が此方に向かって来ます 」
ギッちぃ
「 そうか。
㌦㌃㌶㌧、片付けて来い 」
吸血鬼
「 ㌢㍉㌶!
㌘㌍㍊㌻㍗㍉㍑! 」
アタシには吸血鬼が何を言ってるのか分からないけど、手鏡を懐に入れた吸血鬼は、蝙蝠に変身すると3時の方角へ飛んで行った。
「 片付けて来い 」って事は「 始末して来い 」って事かな?
肥神瑩子
「 ギッちぃ、相手も見ないで向かわせたりして──。
悪党じゃなかったらどうするの? 」
三眼族
「 御心配には及びません、影魔妃様。
あれは賊です 」
肥神瑩子
「 そ、そう……。
“ 影魔妃様 “ は止めてほしいんだけど? 」
ギッちぃ
「 愚主と我は夫婦だ。
我が “ 影魔王 ” なのだから、愚主が “ 影魔妃 ” と呼ばれるのは正しい。
“ 救世主様 ” とでも呼ばせるか? 」
肥神瑩子
「 流石に “ 救世主様 ” はねぇ……。
アタシ、救世主ワ●ルってアニメは好きだったけど、主人公のワ●ルみたいに困ってる人を助けたりする気は全くないし……。
あんまり他人とも関わりたくないんだよね。
面倒事に巻き込まれるのも嫌だし 」
本来の姿で馭者をしてくれていたギッちぃは、胡座を掻いて座っているアタシの足の上に仮の姿で乗っている。
ギッちぃの代わりに馭者をしてくれているのは魔狂人で、魔狂人の左横に三眼族が座っていてナビちゃんをしてくれている。
肥神瑩子
「 ギッちぃ、自分のクッションが有るんだから、クッションに座ったら? 」
ギッちぃ
「 ギッギィギ~~~~ 」
ギッちぃは喋らなくなって、アタシにスリスリしながら甘えて来る。
影魔王様の威厳は、どうしたのかしらね?
甘えて来るギッちぃの頭に串を1本1本丁寧に刺しながら、アタシは馬車の後ろから景色を見ていた。
馬車の前からはスワローウルフの楽しそうな「 キャンキャン 」という鳴き声が聞こえて来る。
魔獣馬と一緒に走れるのが余程嬉しいのか──、魔獣馬を護衛する為に走っているのか──、アタシには分からないけれど、スワローウルフが楽しそうで何よりかな。
ウルフだから狼なんだけど、あんな風に楽しんでる姿を見てるとワンコにしか見えなんだよねぇ。
何気に和むぅ~~~~。
肥神瑩子
「 随分と賑やかになったよね~。
この小さいギッちぃ達には、どんな武器を扱わせる予定なの? 」
ギッちぃ
「 長剣,短剣,槍,斧,弓だな 」
肥神瑩子
「 杖を使う魔狂人が居ないけど? 」
ギッちぃ
「 杖は三眼族に極めさせる。
吸血鬼は鍵爪だな 」
肥神瑩子
「 ふ~ん?
一通りの武器は扱えるようにするわけね?
益々戦闘も楽になるじゃん 」
ギッちぃ
「 スワローウルフの背に愚主が乗れば、移動範囲が増える。
戦闘も今迄より早く終わる 」
肥神瑩子
「 スワローウルフの背中に乗れるの?
やったぁ!!
アタシね、ワンコの背中に “ 乗りたい ” って、ずっと思ってたんだぁ 」
ギッちぃ
「 そうか。
三眼族が魔法を使えるが、補助魔法,援護魔法のみだ。
回復魔法も遠距離攻撃も出来ん。
戦力外だが後方支援で活躍してくれる 」
肥神瑩子
「 後方支援って大事よね。
魔獣馬と馬車を衛りながら後方支援してくれるの? 」
ギッちぃ
「 魔獣馬も戦闘に参加する。
偶には羽目を外して遊ばせてやらねばな 」
肥神瑩子
「 えぇ~~、魔獣馬って戦力なんだ?
馬の足蹴りとか強力そうだもんねぇ~~。
突進とか噛み付きとか出来ちゃいそう? 」
ギッちぃ
「 魔獣馬の歯は丈夫だからな、頭蓋骨を噛み砕くのは朝飯前だな 」
肥神瑩子
「 恐っ!
魔獣馬の噛み付き攻撃、恐っ!!
新しいパーティーで戦力になるのは、魔狂人,吸血鬼,スワローウルフ,魔獣馬って感じかな? 」
ギッちぃ
「 そうだな。
愚主,我,三眼族は戦力外だ。
下僕は3体ずつ出せる 」
肥神瑩子
「 5体のギッちぃが魔狂人に育ったら、下僕達の活躍が減るね 」
ギッちぃ
「 喜ばしい事だ。
他の事を任せられる 」
肥神瑩子
「 黒ニ●ロって意外と使えるもんね!
黒ニ●ロが魔法を使えたら、態々≪ テンクゥリア ≫へ行かなくても済んだのにねぇ~~。
何で影魔は魔法を使えないわけぇ? 」
ギッちぃ
「 万能な影魔等居ない。
優れていれば、相応の縛りはある 」
肥神瑩子
「 縛りねぇ…。
縛りなんて無い方が楽しいのに… 」
救世主のアタシを始め、アタシの〈 守護り手 〉のギッちぃ,ギッちぃの配下の影魔達,ギッちぃが不浄から生み出した魔獣馬,魔狂人,吸血鬼,三眼族,スワローウルフ──誰も魔法を使えない。
こんな事って有り得る??
「 誰が喜ぶ縛りプレイだよっ! 」て感じなんだけど!!
早く便利な魔法を好きなだけ使えるようになりたい。
魔法が使えない暮らしには慣れちゃってるから、慌てて使えるようになりたい程じゃないけとねぇ~~。
肥神瑩子
「 ギッちぃ──、他の救世主達は使えない魔法に対して、どうしてるのかな?
やっぱり妖精を捕まえて無理矢理? 」
ギッちぃ
「 不浄を作れるのは我のみ。
闇魔を司る影魔の王である我の特権だ。
影属性の〈 守護り手 〉も魔属性の〈 守護り手 〉も不浄は作れぬ 」
肥神瑩子
「 えっ、そうなの??
影属性と魔属性も作れそうな感じがするのに……。
今更だけど──、何でギッちぃだけの特権なの? 」
ギッちぃ
「 愚主が望んだ。
我は本来、闇属性の〈 守護り手 〉だった。
愚主が激しく強く望んだ故、我は闇属性から闇魔属性へと変化した。
よって我は闇,影,魔を司る闇魔の〈 守護り手 〉に生まれ変わり、影魔の王となった 」
肥神瑩子
「 成る程ね……。
あくまでも “ アタシの所為だ ” って言いたいわけね!
アタシが──、性奴隷なりたくなくて、“ 必死に命乞いした ” のが原因だって言いたいわけね! 」
ギッちぃ
「 事実だ。
我は愚主の〈 守護り手 〉故、愚主に嘘を吐けぬ 」
肥神瑩子
「 アタシがギッちぃの頭に串を刺してる事は無関係って事で良いのね? 」
ギッちぃ
「 ギィ…… 」
肥神瑩子
「 ギッちぃ!
其処は嘘でも『 そうだぉ★ 』って言う所だからね! 」
ギッちぃ
「 『 嘘を吐けぬ 』と言った筈だが? 」
肥神瑩子
「 まぁ、良いよ。
兎に角、ギッちぃは──アタシの命乞いした “ お・か・げ ” で、闇属性から闇魔属性にパワーアップって言うかクラスチェンジが出来たわけでしょ?
凄いじゃん、当時のアタシ!!
ナイス、当時のアタシ!! 」
ギッちぃ
「 そう言う事だ。
影属性の〈 守護り手 〉も魔属性の〈 守護り手 〉も負気を集める事は出来ん。
魔気にする事も出来ぬし、空気を濁らせ澱みを作る事も出来ん。
不浄も作れぬ故、魔物を生み出す事も出来ぬ。
魔素を扱える我は異形の存在だ 」
肥神瑩子
「 影属性の魔法,闇属性の魔法,魔属性の魔法を使えても良いのね…… 」
ギッちぃ
「 どの救世主も魔法を使うならば、加工された魔鉱石を使う筈だ。
魔鉱石屋へ行けば購入する事が出来る。
使いきりなら安く、使い回せるのは高い。
属性の異なる魔鉱石を組み合わせて使う事も可能だ。
組み合わせによって、様々な魔法を生み出す事が出来る 」
肥神瑩子
「 へぇ~~。
好きな人には楽しそうだけど、アタシは面倒かな。
日常生活に応用,活用が出来る便利で簡単な魔法が使えれば十分だし 」
ギッちぃ
「 愚主は無欲だな 」
肥神瑩子
「 何処がよ?
アタシは強欲だと思ってるけどね!
何せ、アタシは命乞いする為に城内に居た人間の魂を勝手に売って、犠牲にした救世主様だからね!! 」
アタシは再度、開き直った。
開き直らなきゃ、やりたくもない救世主なんて出来ないもんね!!
大勢の犠牲者の上にアタシは立ってるし、生きてる。
この事実は否定なんて出来ないし、ちゃん受け入れて、前を向いて歩いて行くしかない。
過去を悔やんで、後悔なんてしないよ!!
だって──、命乞いをしなければ、アタシは最低最悪なゲスクズ異世界人の愛玩奴隷として生きていかたかも知れないんだからね!!
アタシは必死に命乞いをした当時のアタシの勇気と度胸と覚悟を全力で讃えたいと思ってるぐらいだからね!!
自分の安全が他の誰よりも1番で良いんだよ!!
だって、此処は日本じゃないんだもん!!
異世界──、なんだからね!!
◎ 訂正しました。
魔属性な魔法を ─→ 魔属性の魔法を