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7 『プロミスドランド』

 一隻の船が、アルブレア王国に到着した。

『歴史と革新の都』クローディム。

 ここにやってきたのは、二人の(せい)()人であった。


「ついに来ただなもね!」

「ああ。ま、オレらの場合はただの留学だけどな」

「でも、長かった。いい出会いが多かった。そう思わないだなもか? トオル」


 聞かれて、前髪を左右で分けた強面の青年がニヤリと笑った。


「実りのある旅だったぜ。それだけで、晴和王国から海外に出た価値はある」

「だなも」


 と、猿顔の青年が明るい笑顔でうなずく。


「キミヨシ。これからこのアルブレア王国は変化を迎える。ちょうどその渦中に、オレたちはいる」

「おぉ! いつも悲観的な観測ばかりするトオルが、めずらしく希望的観測をしてるだなも!」

「厄介なことに巻き込まれる気がするっつってんだよ」


 強面な相方ににらまれて、青年は愛嬌ある猿顔をくしゃりとさせて笑った。


「うきゃきゃ、トオルの言いたかったことはわかってるだなも」


 二人の晴和人は、『(たい)(よう)()()(わたり)(きみ)(よし)と『(ちん)(もく)(げき)(りん)()()()(とおる)

 晴和王国を発ったのが四月、それから海を渡り、大陸を渡り、『芸術の都』リパルテからまた海を渡って、やっとこのクローディムにやってきたところだった。


「そうかよ」

「ただ、その厄介事は、かえって我が輩には好都合」


 キミヨシの瞳がきらっと光った。

 トオルはそんなキミヨシに苦笑してみせた。


「まあ、おまえならそう言うんだろうな。リラもアルブレア王国には来るんだ。そのとき、助けを求めてくるかもしれねえ。来たるべきときに備えて、オレたちもできることをやってくぞ」

「だなも!」


 二人は、晴和王国を出るとき、『世界の窓口』(うら)(はま)で一人の少女に出会った。それが(あお)()()()だった。リラとはその後、共に船に乗り、(れい)()(くに)から大陸を旅して、メイルパルト王国の手前で別れるまでずっといっしょだった。


「で、トオル。なにをするだなもか?」

「おまえが考えろ!」

「ずこー」


 キミヨシがずっこけて、うきゃきゃと笑いながら東を向いた。東には海が広がっており、ルーンマギア大陸も見える。そちらへ向かい、両手を口に添えて大声で呼びかけた。


「リラちゃーん! 我が輩たちは来ただなもよー! 待ってるだなもー!」


 フ、とトオルは笑った。

 のちに『()(かい)()(だい)(おん)(じょう)』と呼ばれるキミヨシの大声に、周囲の人たちは何事かとざわざわする。呼んだ名前がアルブレア王国第二王女のものだから、変な違和感さえあった。

 そんな人々のことはお構いなしに、キミヨシはトオルの横に並び歩き出す。


「さあ! やるだなもよ!」

「とりあえず、まずは情報収集だ。政治も学ぼうぜ。剣術や魔法も磨きたい。やることは多いぞ」


 二人の晴和人はクローディムの街へと溶け込んで行った。

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