51 『アキとエミの観光あるいはジャンプ』
明善朗と福寿笑は、つい先日、イストリア王国で友人になった『ASTRA』のメンバーとスラズ運河の朝陽を見た。
この景色が美しいと評判で、『ASTRA』のトップで『美の化身』と呼ばれる青年に見せたかったのだ。美しいものが好きだと聞くが、まだスラズ運河の朝陽を見たことがなかったと知って、誘ったのである。
そこではいろいろなことがあって、別の友人にはミナトへの伝言も頼まれた。
その後、メイルパルト王国の遺跡を巡り、サツキたち士衛組に再会し、タルサ共和国へと行った。
港町マリノフではミナトを発見して、話をして、ちゃんと頼まれていた伝言もしてきた。ミナトにはなんのことかよくわかっていないかったが、アキとエミは役目を果たして満足した。
それから、写真を撮るために、ギドナ共和国へと移動した。
ギドナ共和国は、サツキのいた世界でのギリシャに当たる位置に存在する国で、歴史的な建築も多い。
「いーっぱい写真も撮れたね、アキ!」
「ばっちり撮ったし、たくさん楽しんだし、次行こうか!」
「うん! そうしよーう!」
エミが明るい声で言って、《打出ノ小槌》を振った。
「なんか出てこーい、そーれっ」
「出た!」
ぽん、と出たのはトランポリンだった。
やや特殊な形のトランポリンであり、足になる部分はなく、太鼓のような形状になっている。あるいはバネといったほうがそれらしい。この小槌は魔法道具を出すことができるが、どんな魔法道具が出るのはわからない。ただ、そのときに役立つ魔法道具が出るというだけである。
アキとエミは、トランポリンを見るや、顔を見合わせて噴き出した。
「ははは! エミ、これどこか行っちゃうやつだよ」
「あはははは! アキ、行きたい場所選べないけどいいよね?」
「もっちろん!」
「じゃあいっしょにー?」
エミのかけ声に、アキが合図を出す。
「レッツゴー!」
二人そろって、トランポリンに飛び乗った。
ぐいっと足下が深く沈むと。
びょーんとロケットのようにどこかへ飛んで行ってしまった。
ギドナ共和国の遺跡に、エミが手を振った。
「ごきげんよーう!」
まばゆい朝陽に輝きながら、アキとエミは空の旅を楽しんだ。二人が行き着く先は……。




