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37 『フウサイと偵察』

 フウサイの影分身が戻ってきたところによると。


「敵は、十人がこちらに迫っているでござる。いずれも(つわ)(もの)であり、簡単に下せる相手ではござらん。心してかかるよう」


 報告を聞き、内心でルカは舌をまく。


 ――三十人の敵を十人にまで減らすなんて、さすがはフウサイさんね。


 たったこれだけの時間で、二十人をなんらかの方法で足止めないし捕縛、場合によっては始末までしているのだから、前もって張っておいた罠が巧妙なのか単にフウサイの技がすごいのか、どちらにしても並の芸当ではなかった。十人という人数を聞いていたルカ以外の者は、フウサイがどれほどのことをしたか知るところではないが。

 サツキは続けてフウサイに質問した。


「あと何分で来る?」

「二十分もすれば」


 また、ルカは内心で驚く。


 ――敵に気づいたとき、フウサイさんはあと二十分ほどで来ると言っていた。それが、今になっても「二十分もすれば」と言っている。つまり、フウサイさんが戻ってくるまでの五分の間に、どうやら残る十人の足止め策まで講じていたのね。


 しかしこの事実は、別の可能性も示唆している。


 ――けれど、逆に考えれば、フウサイさんですら始末しかねる腕利きの騎士が十人もいるってことだわ。


 フウサイの言葉にも、いずれも強者であることと、簡単に下せる相手ではないこと、心してかかる必要があること、その三つがあった。こうした報告の仕方をするフウサイはこれまでなかった。つまり、それだけの敵ということになる。

 ルカは神経をとがらせる。

 うむ、とサツキはうなずいて一同に呼びかけた。


「俺、クコが一人につき一人を相手取る。ルカは最初に全体攻撃。これで少なくとも二、三人は減るだろう。それでも残りの騎士たちが戦闘態勢を解かずこちらに向かってくるようならその中から二人を相手に。フウサイはみんなの補助をしつつ三人を。ナズナは最初に歌で援護をしてから超音波と弓矢で妨害、このときルカの《(とう)(ざん)(けん)(じゅ)》と合わせてタイミングを計ると効果的だ。リラは敵が来る前に金属板を創造し、シャハルバードさんたちを守る防護壁を築いてくれ。その後、戦闘開始と共にリラにはシャハルバードさんたちを連れて先へ進んでもらいたい」


 みなが返事をする中、シャハルバードがぬっと肩を前に出して、


「ワタシも戦おう」

「いいんですか?」


 サツキが聞くと、


「シャハルバードさんを舐めてないか? この人は強いぞ」


 と、クリフがクールに告げた。


 ――バミアドでいっしょに戦ったから、それは知っている……。でも、巻き込むのは……。


 そんな迷いを持つサツキにも、アリは緊張感のない笑顔でうなずき、


「そうだね。クリフも腕は立つし、シャハルバードさんが二人、クリフが一人、おいらと姐さんでもう一人を撹乱させるよ」

「ちょっとアリ。あんた、言う割に自分はアタシといっしょに一人を撹乱するだけって、楽しようとしないでよ」


 ナディラザードにジトッとした目でにらまれてもアリは気負わずニコニコして、


「しょうがないでしょ。おいら商人なんだから強くないし、適材適所だよ。シャハルバードさんが二人を倒したら、おいらと姐さんが撹乱しておいた残る一人を退治するってことで。いいですよね、シャハルバードさん?」

「構わないよ。そういうわけだからサツキくん、我々が四人を受け持った。共に戦おう」


 正直、シャハルバードの真の戦力がどれほどのものか、サツキには測れない。だが、バミアドで《風船(カザフネ)》という魔法を使い、やすやすと盗賊と渡り合っていた。今度も力になってくれるだろう。

 クリフについては、その強さはわかりにくかった。サツキが見たところ、動きのよさのせいで、観察する時間がなかった。フウサイと似たタイプの使い手とみている。そしてそれは、実は当たっている。クリフは元暗殺者(アサシン)という過去を持ち、いくつもの修羅場をくぐっている。戦闘力の面でも、シャハルバードの右腕にふさわしい力を持つ。

 また、まだ十歳のアリを戦わせるのは気が引けるが、シャハルバードがいれば大丈夫にも思える。

 力強いシャハルバードの申し出に、サツキは小さく笑みを浮かべる。


「お願いします。でしたら作戦変更です。まだ充分に時間がある。城を築きます」


 驚く一同だが、サツキはリラを見て立て続けに言った。


「リラ。出番だ」

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