16 『剣筋と最短距離』
ミナトは、ケイトに誘われて庭に出ていた。
サツキやクコたちとは別の場所まで移動して、二人で修業をする。
いつものように剣を合わせた。
その後、少しばかりケイトがミナトの剣について助言をする。
「速い剣は、剣筋もそれだけ最短距離を選ぶ。だから速い」
「はい」
「神速だけで仕留められる敵ばかりではありません」
「ええ。そうでしょう。僕の目標は最強の騎士、グランフォード総騎士団長です」
「あのお方は守りの固さがなによりすごい。いざ剣筋が読まれたとき、それをカバーするためにさらなる速さで勝負しても突破できない。もっと剣が読まれやすくなってゆくだけです。対策は別に打たねばなりません」
「そうですね」
「見ることはボクも得意ながら、局長ほどではない。上を目指す場合、局長との修業は欠かさぬようにしてください」
「もちろんです」
「ミナトさんとサツキさんは、本当にいいコンビだ。力がある。頂を取りに行く、最高の相棒になると思います」
「だといいなァ」
急にそんな話をしたかと思うと、ケイトは優しげに微笑んだ。ミナトが小首をかしげる。
「すみません。脱線しましたね」
「いいえ」
「剣筋の話に戻りますが、ミナトさんは様々な剣戟を繰り出す身のこなしと、それを他のだれにもできない技へと昇華する魔法がある。この魔法世界、あなたの魔法があなたをもっと強くします。特にグランフォード総騎士団長と戦うなら、その強化が必須になる。ボクのような腕でミナトさんに助言をするのは恐れ多いのですが、覚えておいてください」
「ケイトさん……」
なにか、ちょっとしたぎこちなさというか、引っかかりを覚えて、ミナトは一礼した。
「ありがとうございます」
ケイトはまたいつもようにスマートな微笑みを浮かべて言った。
「それでは、終わりにしましょうか。サツキさんとの修業が待ってるでしょう?」
「はい。では、頑張ってまいりますね」
微笑をたたえたまま、ケイトはうなずいた。
ケイトは、元気に走り出すミナトを見送り、柔らかい声でつぶやく。
「強くなってください。ミナトさん」




