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41 『撃墜の風』

 ナズナは空高くに飛んでいた。

 魔法《(てん)使()(はね)》によって背中の羽で空を飛べるナズナだが、普段飛ぶには怖いくらいの高さにいる。


 ――わあ。


 町の様子がよく見える。

 近くでは、マリンセーラーに身を包んだ晴和人らしい青年二人組が歩いているし、別の通りでは民家から顔を出したおばあさんが、右、左、右と確認するとこちらを見上げて驚いた顔をして、すぐにドアを閉めた。

 下ではみんなが戦っている。

 クコとバーンはまだなにか話している最中だったし、チナミはネバーと戦っている。

 風を受けて必要以上に前へと飛んでいるネバー。ナズナの真下に来るつもりだったのだろうが、チナミの魔法《(はや)()》によって、ナズナのいた場所よりも先へと飛ばされていたのである。


 ――あのネバーさん、変則的だから超音波で狙えない。なにかできることは……。


 ネバーは身体をひねり、壁に脚がつくと、


「小賢しいマネしてくれたわね! 《レッグホッパー》!」


 ネバーはバネのように跳ね返ってチナミに二本の剣を振るった。

 チナミはじっと剣の動きを見極め、刀を薙いだ。連続する攻撃をいなす。

 だが、ネバーの攻撃は終わらない。


「《ハンドホッパー》!」


 キン、と刃物同士がぶつかる。

 バネの効果で今度はどこへ飛ぶかと警戒していたところ、ネバーは上空に向かって飛んでいった。二本の剣を上手に使って、方向転換してみせる。


「くっ」


 声を漏らしたのは、ネバーだった。


 ――パワーが足りなかったか。届かない。


 近くに建物や壁はなく、ぶつかれるモノがない。

 ナズナが飛んでいる場所とも離れている。


 ――ここだ。《超音波破砕(ドルフィンペレット)》。


「あー」


 と超音波を発し、空中で他の動きが取れなくなったネバーの剣を狙った。超音波によって武器を破壊する魔法である。ナズナのパワーでは粉砕までできないが、それでも武器としての機能を奪うことができればヒビを入れるだけでも構わない。

 ネバーはほんのわずかな振動を感じただけで、ナズナの魔法に気づいてもいなかった。


 ――空中にいる人になら、狙いをつけられるもんね。


 その間にも、チナミは動き出していた。

 壁をトン、トンと蹴って建物よりも高く飛ぶ。

 高さは、ナズナよりもずっと低いが、ネバーよりもだいぶ高くまで到達していた。

 そこから一気に下降する。

『冷泉飛鳥』をキラリと光らせる。

 ネバーはチナミの位置を確認すると、地面を背にした格好で、二本の剣をクロスさせて待ち構える。


「動いている人間は、空中では無防備。そこを上から衝こうって魂胆だったんでしょ!? 作戦としてはいいわね! でも、アタシは『レッグホッパー』ネバー! アンタが上から攻撃してきても、アンタという中継地点を利用して移動できるのよ」

「それはどうでしょう」


 無感情にも見えるチナミの言葉に、ネバーはニヤリとして、


「ハッタリのつもり? アタシはバネでどこへでも飛べるのよ。逆に、アンタをどこへでも飛ばせるの」


 そこで、チナミは扇子を舞わせた。


「でも、背中にバネはないでしょう?」

「ふん、そんなの……いやっなんで剣にヒビが入って……」

「《(はや)()》」

「あー」


 突風。

 上から吹き付ける突風に、ネバーは押しつぶされるように急降下させられた。風圧で体勢を変えることもできない。しかも、ナズナが超音波を発してネバーにショックを与えたから、着地への対策も打てない。


 ――《超音波直撃(ドルフィンショック)》。


「へぎゃっ!」


 一瞬の失神をさせられる。だが、本人にとってはまばたきするほどの一瞬だから、失神とも判別がつかない。そのあと、「へやっ!」と立ち向かうとするが、そのままの姿勢で背中から地面に叩きつけられてしまった。


「ぇっばー!」


 最後の叫び声を上げ、ネバーは完全に気を失った。

 くるくるくるっと膝を抱えて前転するように空中で回転して、チナミは地上に降り立つ。


「ふう」


 ナズナが空から降りてきた。


「チナミちゃん」

「ナズナ」

「やったね」

「うん」


 二人が喜びを分かち合う。

 その横では、クコとサツキの戦いも進行していた。

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