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37 『すべからく見るべき』

 まるで生き物のようにぐにゃぐにゃと。

 ロープが、笛の音に合わせて動いていた。

 闇夜ノ盗賊団のペラサは、プーンギーと呼ばれる笛を吹いて、ロープを操る魔法を使う。

 蛇使いのごとく、ペラサはロープを踊らせた。

 この『バミアドの蛇使い』ペラサを相手にするのは、サツキである。

 先程、《(とう)()フィルター》を使ってカゴを観察したが、カゴの中には特に仕掛けはなかった。


 ――ペラサの魔法《コブラ踊り(ロープダンス)》。笛、カゴ、ロープそのもの。三つのうちどこかにこの魔法の本質がある。カゴとロープの接着点に仕掛けはないから、三つのうちのどれかが単体としてペラサの魔法機能を司るはず。だが、普通に考えれば、ロープを操るだけの魔法に、カゴは必ずしもなくてはならないモノではない。だからこそ、俺はカゴが怪しいと思うが……。


 サツキは襲い来るロープを愛刀『桜丸』で一閃、切断を試みた。


 ――どうだろうか。


 桜丸は、ロープのぐにゃんと曲がる動きでかわされる。

 いや、当たってはいたのだが、そのまま押されるようにして切れなかったのである。


 ――やっぱり、直接ロープを狙っても意味はない。


 可能性を一つ潰した。

 残るは、笛とカゴ。

 サツキは魔力を練る。


(せい)(おう)(れん)()


 大技のために魔力を練って圧縮し、ここぞというタイミングを見て解き放つためである。


「ぺひ」


 ペラサが笑い、笛の音を大きくした。


 ――なんだ?


 すると、ロープがボッと音を鳴らして破裂するような解放の仕方で、木の幹みたいに太くなった。


「これが本当の《コブラ踊り(ロープダンス)》。バミアドのコブラは大きさを変えるんだよ」

「……」


 サツキは無言で構える。


「ぺひ。肝が据わってんだな。やはりわしの目に狂いはない。おまえとの勝負が一番おもしろそうだ」


 ロープは、高さを三メートルくらいにまで大きくなり、踊るように動いてサツキを狙っている。


 ――蛇使いは、笛を鳴らすが音ではなく振動や笛の動きによって蛇を操ると聞いたことがある。だが、あれはロープ。あくまで音で操っているように見える。


 ペラサは笛を吹く。


「ぺひ」


 笑うと、ロープがサツキに向かって、突き刺すように飛び込んできた。

 サツキは刀を舞わせて、これを受ける。


 ――力も強い。結構な魔力が使われてるとみていい。


 力比べのように刀で押すと、不意にロープが後ろに引いてぐにゃりと曲がり、横から鞭でも打つように躍り込む。


 ――ここだ。


 まだ少し、タメは足りない。

 が。

 今が好機。


「《(たい)()(おう)(とう)》」


 うねりくるロープをひらりとかわしつつ、サツキは刀をすべり込ませてカウンター攻撃を放つ。

 刃がきらめく。

 ロープは、ズバリと斬れた。


「ぺひ」


 笑いを漏らすペラサの口元を目の端に捉え、サツキは次の攻撃に備える。その次の攻撃は、すぐにやってきた。

 切断されたロープだが、斬り落とされた部分はそのまま地面に横たわり、残ったロープが突進してきた。


 ――素早い判断だ。戦い慣れている。


 落ちたロープへの警戒をしながらも、残ったロープによる攻撃にも備える。それは当然すべきことであり、ロープが斬り落とされたばかりのこのタイミングは、双方が隙をつきやすく隙を狙っている時でもある。

 しかも、サツキはちょうど《(せい)(おう)(れん)()》でためた魔力を使ったばかり。

 ペラサはそれを見逃さず、ここをサツキの隙とみて、仕掛けた。

 ロープは、桜丸との距離が縮まったところで、形状を変えた。頚部の辺りを広げた。つまりコブラのように首が大きくなった。

 頚部を広げる意味は、通常では威嚇にある。


 ――だが、これは……。


 サツキは、この頚部の模様が目に入った。

 瞳のような不気味な二つの斑点が、静かにまばたきした。

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