第九十五話
王国御前試合二日目。その試合形式はかなり特殊であった。
出場者、観客問わず客席に座り、いざ出番となったら席から闘技場に登るという形式だった。
そして初日の初戦を飾る試合に抜擢された人物はまさに最高の人選だった。
「第一試合、まずは剣聖、ウィリアム様ーー!!」
その名が闘技場に響き渡ると、会場はその何十倍もの歓声が上がった。それだけ剣聖と言う名は偉大であることがわかる。
「そして対戦者、スコッド選手ーー!!」
しかし反対に対戦者にはあまり歓声は沸かなかった。剣聖と言う名が大きすぎたのか、それとも名が知れ渡らなければこうなる定めなのか・・・。少し非情であった。
スコッド選手は武器らしい武器は持っていなかった。ただ腕を覆うような金属の塊があったため、格闘が主な戦闘スタイルなのだろう。
「始め!!」
「先手必勝!!」
試合開始とともにスコッド選手が仕掛けた。初っ端から緑色の闘気を解放。腕の金属の塊、手甲を容赦なくウィリアムさんへと突き出した。
それをウィリアムさんは簡単に大剣で防いだ。しかしその一撃では終わらず、
スコッド選手はそれからも間を空けず連打を繰り返した。
しかし防ぐのは屈指の銘品ドラゴンスレイヤー。少し腕のあるだけの手甲の連打ではどうにもできないでいた。
そんな中ウィリアムさんが動いた。一気に決着をつけるつもりだったのか、大ぶりに大剣を振るい、スコッド選手を退かせた。そして間髪入れずに大剣の腹でスコッド選手の頭めがけて振り払った。
しかし武術に長けたスコッド選手はこれを簡単に避ける。そしてフットワークを生かして今度は大剣をすり抜けてウィリアムさん自体の身体へと拳の一撃を放とうとした。
しかし、拳が届くことは無く、スコッド選手が一瞬にして吹き飛ばされた。
吹き飛ばされて初めてわかったのが、ウィリアムさんがスコッド選手に蹴りを放っていたのだ。
そしてよく見るといつの間にかウィリアムさんは赤色の闘気の一歩前の青色の闘気を纏っていた。
上位の闘気で強化された肉体からの攻撃はさぞ効いたのであろう。スコッド選手はフラフラと立ち上がった。
しかしウィリアムさんの容赦ない追撃の大剣の腹による打撃でスコッド選手は完全に沈んだ。
「試合終了ー!!」
意識が無くなったのが確認されたので、そこで試合終了となった。
ウィリアムさんは膨大な歓声を受けながら元居た席に戻った。
そうしてその後も第二試合etcと続いていった。そしてついにその時が来た。
「選手入場、シズネ選手ー!!」
知っている人がいたのか、わずかながら拍手と声援が聞こえた気がした。そして肝心の対戦相手は・・・。
「対戦者、ダン選手ー!!」
まさかのまた同じクランのメンバーであった。
「いやーアリムスと戦ったってのは聞いてたし、本選に出るんだからもしかしたらとは思っていたが・・・まさか本当に当たることになるとはね」
「ウチのクランで本選に出れたのは私たちだけ。それが最初から当たるのはちょっと運がないと思わない」
「同感だ。だが当たった以上、手加減はしないぜ?」
「その言葉、団長の威厳と一緒にそっくり返すよ」
両者得物を構えた。
「試合開始!!」
「せいやっ!!」
先手はダンだった。初めから風の魔力をフル稼働させ、風の推進力を使って一気に静音に肉薄。鋭い槍の突きを放つ。風の魔力を持っていることを知っていてなおかつ相手の動きが読める≪慧眼≫を持っている静音ですら気づけたのは一瞬遅れてからだった。かろうじて突きの弱点である横からの一振りでダンの突きを反らすことに成功した。そしてそのまま返す刀でダンに雫を振り下ろすが、ダンは再び風の推進力で間合いを取り直し、静音の振りを避けた。
「うーん、このままじゃ埒があかないなぁ」
「いくら団長が二つの魔力持ちとはいえ、速さに特化したこっちが有利だぜ?」
「そうかな?」
静音も魔力を解放した。まず雷の魔力で身体能力を向上させた。そしてその身体能力を発揮してダンに肉薄しようとした。しかしダンもまた魔力を使い、静音の間合いから離脱、
したかに思えた。
「うっそだろ!?」
静音はダンが魔力を使って一歩後ろに跳んだ刹那、炎の魔力を解放し、瞬発力を得て二歩目を踏み、さらにダンに肉薄したのだ。そして強化された身体能力と瞬発力から繰り出される重い一撃をダンに放った。
ダンは始めこそ、真正面から自分の槍で受け止めようとしたが、触れた瞬間一撃の重さを実感し、さらに魔力を解放して静音の一振りと真逆の位置に流れるように跳ぶことで何とか静音の一撃を捌いた。
しかし手に残る痺れるような感触は次に同じ攻撃を受ければ痺れは悪化し、槍を落とすのは確実であった。
「やるしかねぇか!!」
ダンは再び魔力を解放。今度は槍のリーチを活かした連続の振り回しによって静音に防御の態勢を取らせることができた。しかし異変は続いた。槍が静音の刀に当たるたびに手が痺れるのだ。
確かに魔力で振り回す速度を上げている反動で痺れるのはわかるが、ダンが特訓していた時に槍が物体に衝突していたとき以上の痺れを感じていた。
それもそのはず。静音もただ防御するだけでなく、弾く瞬間だけ魔力を解放し、振りの威力を上げてダンが槍を手放すように仕向けていたのだ。そんなことをしていればダンの手にかかる負荷はかなりのものであった。
そして自身の限界を悟ったダンは最後の一手を取った。
(ここで距離を取った?負荷があまりかからない突きを打つ気なのかな?)
しかし静音の予想は外れた。ダンは一気に魔力を解放。まるで暴風のように背中から風を吹き出しながら静音に接近。そして肉薄する寸前で体をひねり、突進の勢いが加わったひねりによる回転の速度を活かしたダン渾身の振り下ろしが繰り出された。
それに対して静音も二つの魔力で強化された雫の一閃を放った。
両者の攻撃は激しい音を立てて激突。静音は雫を振り切ることができたが、空中にいたダンの手には槍は無かった。槍は弾かれ、遠くにあった。そして勢いを何とか相殺してダンは地面に転がり込んだ。
その瞬間、闘技場は沸かんばかりの歓声が上がった。
無名とまではいかないものの、それでも迫力ある戦いをした二人への最大の賛辞であった。
「いやー参った参った。まさか術もなくやられるとはな」
「うーん、私としては槍の長さは厄介だったよ?」
「団長にはもっと長い剣があったろ?温存されたってのなら悔しいことだぜ」
二人は握手をしてそれぞれの席に戻った。
御前試合の熱気は試合が終わるごとに増すばかりであった。
ありがとうございました。評価やコメントでの感想を頂けると投稿者が喜びます。




