臣下と忠誠2
頭を垂れたままの竜王を一瞥すると、魔王はスッと簾中へと入っていく。
腰かけて一息ついたところで、獣王が声をかけた。
「魔王サマ。こちらからモ、聞いておきたイ」
「獣王か… まだお前のその低い唸り声のほうが聞いていられるな。申してみよ」
「我等、獣族一同… 筆頭たる魔王サマのご命令には決して背きませヌ。それこそガ、我が獣族の誇リ」
「ほう?」
「ですガ、筆頭たる者と認メ、従うかどうかハ、一つの条件次第でございまス」
「条件……? ふむ。どこぞの臣下のあやふやな忠誠とやらよりは、よほど信頼できそうだ」
「……」グッ
「その条件とハ、『強く導ける者であるカ』…」
「導く?」
「我等は集団で生きル。いかなるときも強く導かねば、混乱が起きル。統率の乱れこそヲ、何よりも愚と考えル。
かざした目的ヲ、違えなイ者。ふらつく意思を持つのならば、筆頭などとは認められなイ」
「……ふらつく意思だと? 獣王。貴様、誰に向かって物を申して居る」
「神族への戦争―― 思いつきと言っていタ。思いつきで始めて、思いつきで辞められては堪らなイ。お聞かせいただきたイ――… 魔王サマノ、想いの丈ヲ」
「く… ククク」
「獣王! 言葉をお控えなさい! 卑しく争うばかりのケダモノ風情が、王を挑発しようだなどと――」
「我は、魔王サマに聞いてイル!」
「ええい、力量を測るような真似はやめよ! 神族を畏れぬ魔王殿の気概ならば充分にわかっておる! だがそうあってなお、ここは抑えるべきなのじゃからして……」
「魔王サマ! 御答え願いたイ!!」
「獣王! いい加減になさいまし! さもなければ――
パチン!!
「「「!!!!」」」
強く、扇を閉じた音が響いた。
それを合図に、皆が口を閉じて魔王を見つめる。
「さて…静かになったか。 獣王、さきほどの問いに答えよう」
「………」
「俺は、お前達を導いたりはしない」
「!」
「おまえらの筆頭となる条件? …そんなものを考慮するつもりもない」
「……なんト!」
「俺に従いたいというのであれば、従えてやらん事はないがな」
大きく目を見開いたまま言葉を失う獣王を見て
魔王は満足そうに微笑んでいた。
「俺は俺の目的を達するのみ。着いてきたくば来るがよい」
魔王はスクと立ち上がって簾中を出ると、
四方を囲う各部族の族長や精鋭をぐるりと見まわし、声を張り上げた。
「皆も聞け!! 俺は3日後、神界へと攻め入る!!!」
「――ッ」
ザワッ・・・!!!
「そして、父の代より付き従えている我が臣下達に言っておく。
忠誠を棄てよ。棄てられぬ者ならば、即刻と巣に帰るがよい」
ザワ…ッ
ザワザワ…ッ
「クク。俺に異論を持つ者があれば、今すぐこの場でかかってこい」
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