↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝起きたらイケメン大学生になってました  作者: 蒼狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/5

第1話 鏡の向こうの大学生

私の名前は佐藤あかり、17歳、高校2年生。

特に目立つところもない、普通の女子高生だ。


……はずだった。


「……は?」


目が覚めて最初に感じた違和感は、布団の感触だった。自分の部屋の布団より明らかに高級で、広い。

次に違和感を覚えたのは、自分の手。

長くて、骨ばっていて、明らかに男の人の手だった。


「うわっ!?」


飛び起きて鏡の前に立った瞬間、私は本気で悲鳴を上げそうになった。


そこに映っていたのは、身長180cmは確実にある、長身のイケメンだった。

整った顔立ち、すっきりした二重まぶた、軽くウェーブのかかった黒髪。Tシャツの上からでもわかる、引き締まった体。大学生っぽい部屋着を着ている。


「え、嘘、夢? 夢だよねこれ……?」


慌ててスマホを探すと、机の上に置いてあったのは見知らぬiPhone。ロック画面の壁紙は、見知らぬ大学のサークルの集合写真。中央に、さっき鏡で見たイケメンが笑っている。


名前は高橋悠真、22歳、文学部3年生。


「なんで……私が……?」


状況を整理しようとした瞬間、部屋のドアがノックされた。


「悠真ー、朝飯できたぞー。今日もゼミあるんだろ?」


男の人の声。どうやらルームシェアか家族と暮らしているらしい。私は(悠真の体で)ガチガチに緊張しながらドアを開けた。


「…………おはよう」


声が低くてデカい。自分の声じゃないのに、自分の意志で出てるのが気持ち悪い。


朝食の席で、私は必死に「高橋悠真」として振る舞った。幸い、ルームメイトの先輩はあまり詮索してこなかった。悠真はあまり喋らないタイプらしい。助かった。


大学に行く電車の中で、私はスマホをいじりながら必死に情報を集めた。

高橋悠真は成績優秀、テニスサークルに所属、顔が良いせいか女の子からの連絡がそこそこある。でも本人は真面目で、最近は就活で悩んでいる様子だった。


そして一番衝撃だったのは——


「この人……めちゃくちゃモテるじゃん!」


大学に着くと、道を歩くだけで女の子がチラチラ見てくる。講義室に入ると何人かに声をかけられた。特に可愛い子が「悠真くん、昨日の課題の答え教えて〜」と寄ってくる。


私は顔を真っ赤にして(イケメンの顔で)適当にごまかした。


午後のゼミでは、さらに地獄が待っていた。

教授に「高橋、君の先月のレポートは非常に良かった。今日も期待しているぞ」と言われ、私は冷や汗をダラダラ流した。

私は文学なんて苦手なのに……。


一日をなんとかやり切り、夕方、自宅(悠真の部屋)に戻った私はベッドに倒れ込んだ。


「もう無理……帰りたい……」


涙が出そうになった瞬間、ふと気づいた。


悠真の机の上に、散らばった就活資料。

「本当にやりたいことは何だろう」と赤ペンで何度も書いてあるメモ。

そしてベッドの横に置いてあった、小説の書きかけ。タイトルは『鏡の向こうの自分』。


「……あの人も、悩んでるんだ」


私は自分の(本当は悠真の)手に視線を落とした。

この大きな手で、私は今日、電車で何人も人を優先席に立たせた。

講義では、知らないうちに周りの人が私の(悠真の)意見をしっかり聞いてくれた。


女子高生の私は、いつも「可愛くなりたい」「目立ちたくない」「でも認められたい」と狭い世界でもがいていた。


でも今、この体は、ただ存在するだけで周りを動かしてしまう。


「……ちょっとだけ、いいかも」


私は悠真のスマホを開き、自分の(あかりの)SNSアカウントを探した。

そこには、いつも通りの日常が写っていた。

少し地味だけど、笑顔の私。


「明日には元に戻ってるよね……?」


布団に潜りながら、私は小さく呟いた。


朝起きたら、元に戻ってるといいな。

でももしこのままだったら——


私はイケメン大学生の体で、少しだけ、笑ってみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。