第百十八話・最終話 Just like starting over!
とうとう最終話です!
長い間、灯と享の小さな恋の物語をご覧頂きまして有難うございました。
この後、二人はどうなるの?って思って頂いてますか?
もしかしての未来のお話。
ちょっとだけ"あかりんとTallのそれから"として、アフターストーリーを別枠で展開する予定です♪
第一話目は10月9日(金)の夜8時に投稿しまーす♪
引き続きお楽しみ頂ければ嬉しいです╰(*´︶`*)╯
優月菜
「あ、いたた」
丘の上にある高級ホテル。
今日、灯と享はそこのチャペルで結婚式を挙げる……らしい。
と言うのも、分刻みのスケジュールを今日の今日、先程聞かされて、今、ドレスの確認の為に衣装室の鏡張りの個室にいる灯。
今日のこの日に付き人として、ついてくれる女性が含み笑いをしながら言う。
「何年ぶりかの再会でって、ご新郎様から、お恥ずかしながらとお伺いしましたが……これまた分かってての感じですかね?」
もちろんドレスは今日初めて見るが、あつらえたかの様に灯にぴったりのマーガレットが地模様の総レースのウェディングドレス。
それは肩が丸出しでバストラインを強調する様にウェストがしまっており、下に行くほどドレープが広がり裾は後ろに長くなっている。
先に下着だけにされて、コルセットをつけ、その上からガウンを着せられた。
多分そのドレスで隠されると思われる部分は、享がつけた口づけ跡だらけだったからだ。
「今日、結婚式だって事も昨日聞かされた上に……あの、初めてだったんで……」
「え!?お付き合いは十年以上と伺いましたけど?」
「…….幼馴染なんです。そう言う意味では、実は私の歳の長さの付き合いで……でも離れてた時期が八年位あって、大人になってから再会して意識しあってからの、また一年ほどで離れ離れになるまでの前後が四年半。ようやくって言いますか……これは、彼と私の信念と言いますか……約束もあって」
「まあ、一途な……でも、ここに来て我慢の限界だったって訳ですね?ご新郎様の方が」
「アメリカの人なんですけど、昨日、私の大学卒業を待ってたと突然訪ねて来まして……迎えに来たと言われてプロポーズをされ受け入れたら……いきなり……どんな事が起きるのか知らなかった私の責任でもあります……いたた」
付き人さんは小さく笑いながら呟く。
「それで昨日、バスト部分だけ二十センチ幅出しとご連絡頂いたと言う訳か……」
灯は享が思ったより成長した部分はあった模様。
そんなやり取りが付き人さんとあった事は全く知らない灯だった。
「そうそうお席にクッション増やしますね!何かお辛い時はご遠慮なく!」
「有難うございます」
灯は昨日の夜のことを思い出し、顔を赤くしながら、その痕跡を残した享に、ちょっと腹が立っていた。
『今日の式も勝手に決めたくせに、こんな状態じゃ、半日も持たないよ』と泣きそうだった。
「こちらも、ご新郎様からのお預かりものです」
アクセサリーがビロードのトレーに乗せられて運ばれて来た。
上に乗っているのは、素晴らしく豪華なネックレスとティアラ、それにイヤリングだった。
「ご新郎様のお母様のお形見だそうですよ。代々、受け継がれて来たそうです」
「そうですか……初めて聞きました。まさか本物じゃないですよね?」
「鑑定士な訳じゃないですけど、イミテーションだとしても、かなり精巧なお造りですわね……」
『まさか……』
「お化粧とヘアセットの後でドレスのお気付を致しますので、お先にお隣の化粧室にご移動下さい」
「はい、有難うございます」
灯は係の人に誘導されて移動する。
そして……
「ご新郎様が選んだドレスとアクセサリーが、ご新婦様によく似合って!ご趣味がいいこと。あとはこの長手袋にお手をお通しお願いします」
「あ、はい、有難うございます」
『確かにマーガレットのレースはありだし、素敵なデザインだけど、ドレス一つ選ばせて貰えないって……』
「あ!そう言えばドレスはオートクチュールだそうですね!もう本当に羨ましい限りです」
「オートクチュール?」
「特注ですよ!もちろんご新郎様も併せてのお作りだそうです」
「え?」
「しかもチャペルの後のガーデンパーティーには、ご家族、ご親戚、ご友人方だけで500人お近いお集まりだとか」
「は!?」
「希代の派手婚ですわ!」
チャペルの扉の前。
紋付き袴のさすが神主の崇が待っていた。
『お義父さんと腕組んで入場なんだっけ』
説明を思い出す。
灯は思わずあたりを見回した。
少し離れた柱の後ろに人影。
「お父さん!」
灯は思わずポックリの様なパンプスに翻弄されながらも、そちらに駆け寄った。
料亭でぐじの松かさ揚げ以来、数回、食事デートを重ねた孝一と灯。
まだ少し、お互い遠慮があるも、あの頃のわだかまりはとっくになくなっていた。
「来てくれたんだ!Tallが呼んだ?」
「そうなんだよ。でもな、一眼だけ灯の花嫁姿を見させて貰ったら帰ろうと思ってな」
「でもモーニング着てる、ふふふ」
「その、なんだ。享くんが用意してくれてて」
孝一とそんな話をした時、崇が近寄って来ていた。
その崇と目を合わせた孝一は思わず頭を下げる。
崇も慌てて頭を下げると孝一に
「こんな可愛く賢いお嬢さんを娘として育てさせて頂いて有難うございます」
「いや、とんでもない。こちらこそ、こんな真っ直ぐな女性に成長させて頂いて有難うございます」
何度も頭を下げ合う二人に灯は笑った。
灯の付き人さんが声をかける。
「そろそろご新婦様ご入場です!扉の前にお父様とお並び下さい!」
灯は、紋付袴の崇を右手で、モーニング姿の孝一を左手で双方の腕を取ると、扉の前に進むと慌てる"父"二人を押さえつけるように、
「扉が開いたら一礼!顔を上げたら右足から!一歩ずつ揃えて止まって、次は左足から繰り返し!」
と、言い聞かせた。
灯のヴェールを下ろす、この状況が分かっていたかの様な付き人さん。
「では、ご入場です」
三人は、開け放たれた扉を前にして灯が言った通りに一礼。
灯はもちろん少し頭を傾け、少しだけ腰を下げるお姫様挨拶。
参列者は少しざわついているも、顔を上げた灯には、何メートルか先に見えたシルバーグレーのガウンの様な長めの上着にスカーフの様なタイを結んで、まるでどこかの殿下の様にキラキラした享が笑いを堪えているのが見えた。
その上着は同色で、オートクチュールの灯のドレスとお揃いのレースで縁取られている。
『あいつ!』
そしてバージンロードを進むと崇と孝一から享に灯の手が受け渡された。
ヴェール越しに、嬉しそうな満面の笑みをたたえている享が見えた。
思わず灯は真顔のまま、その笑みを無視すると、享は"あれ?"と言う顔をする。
そしてお馴染みの牧師様による、誓いの言葉が始まった。
まずは享に
「横溝享さん、この女を妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命のある限り、堅く節操を守ることを誓いますか?」
「はい、誓います」
牧師様は次に灯に向かい
「宮守灯さん、この男を夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命のある限り、堅く節操を守ることを誓いますか?」
灯は何も言わない。
享が灯の方を盗み見るが、ヴェールで隠れた灯の表情は伺い知ることが出来ない。
少し参列者が騒めく。
神父はゴホンと咳払いを一度すると、
「誓いますか?」
とだけ繰り返した。
享は不安になって灯の方を向かずに声を掛けた。
「灯?具合悪い?」
灯は何かブツブツ言ってる。
「あかりん?」
「何から何まで一人で決めて……勝手に誓って……こっちにだけ恥ずかしいも思いさせて」
「灯、ごめん。ドレスもアクセサリーも思った通り、すごく似合ってる。勝手に決めてごめん。でもとっても綺麗だよ。だからお願いだ、僕に愛を誓ってくれ」
「誓って下さいでしょ?」
享は笑いながら、灯の横にひざまづくとその左手を取り、
「愛を誓って下さい」
と手にキスした。
牧師様も参列者も唖然とする中、灯は前を真っ直ぐ見ながら言った。
「仕方ないなぁ……Tall立って。牧師様、申し訳ございませんが、もう一度だけ、お尋ね下さい」
「あぁ、では……誓いますか?」
「はい、誓います」
牧師がホッとした様に、
「では、指輪の交換を」
近くに控えていた琢磨が二人の指輪を乗せたリングピローを差し出す。
享がまず指輪を取り、灯が左手の手袋を抜き取った薬指にその銀色に光るプラチナの結婚指輪を婚約指輪の上に重ねた。
『何だこれ?ここにもダイヤ入ってる』
プラチナの指輪に埋め込まれたダイヤがキラキラと煌めく。
灯は、もう呆れを通り越して諦めの境地だった。
『どれだけキラキラ好きなんだか……』
そして灯もリングピローから指輪を取る。
この指輪は内側にダイヤが嵌め込まれているようだ。その指輪を享の左手の薬指にはめると同時に享が灯のヴェールを超高速で捲り上げると灯を抱きしめて唇を重ねた。
参列者からは拍手喝采と口笛まで飛び出す始末。
「……では誓いのキスを……二人は神の御前で晴れて夫婦となりました」
牧師はもう順番無視の二人を正すこともせずに淡々と責務をこなす事にしたらしい。
「では、神のご加護があります様にアーメン」
牧師が立ち去るも、二人はキスを交わし続ける。
チャペルの鐘が鳴り響く。
僕達、私達の始まりはこれから!
Just like starting over!!
〜The end〜




