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『群青の風』サイド

「はっはっはっ、見せつけてやろう、僕の風魔法を!」

『吹き荒べ、嵐が如く。切り裂け、刃が如く』

「『テンペスト』!」


 激しい竜巻が十数体のゴブリンを吸い込んでいく。風の中に閉じ込められたゴブリン達はなす術なく倒されていった。ゴブリン達の断末魔を聞き流し彼は笑う。


「はっはっはっ!他愛もない」

「流石です!」「すごいです!」


 彼──ハーガのパーティメンバー……もとい彼の取り巻き達がすかさす褒め称える。

 『群青の風』というパーティは言ってしまえばこの男のワンマンチームだ。彼の為に盾となるタンク二人と荷物持ちが二人。全員が彼の部下である。

 ハーガは元々貴族の子息であり、とある事件に関わった為に紆余曲折あって冒険者になった。本人はその事に少々不満を抱いているようだが、実際には非常に温情のある措置だ。そんなことも知らず貴族としてのプライドが捨てられなかった為にろくに仲間も集められなかった。彼の部下達も元々仕事よりも貴族に取り入り甘い汁を啜ろうとしていた者ばかりなので依頼に付いてきてはいるものの戦闘はろくに出来ない。そんな歪なパーティだった。


 彼らはずんずんと進む。派手な魔法を使い、ゴブリンの悲鳴を聞きながら。






 突如、彼らの前に凄まじい音と共に何かが落ちてきた。それは彼らを見下ろす程大きい人型の魔物だった。


「な、なんだ!?」「でかい……!」「ひ、ひぃ」


 ここにいるもの達は誰も知らないがこの魔物はゴブリンジェネラル。通常のゴブリンと違い大きな体躯と膂力が特徴で武器もそれに合わせ巨大な物──大斧を彼ら目掛けて振るう。

 間一髪でそれぞれが回避し、大斧が地面に食い込む。それをチャンスと見てかハーガが得意の風の魔法を詠唱し始める。


『吹き荒べ、嵐が如く。切り裂け、刃が如く』

「『テンペスト』!」


 ゴブリン達をなぎ払った竜巻を起こす魔法。それがゴブリンジェネラルに容赦なく食らいつく。砂埃が舞い、その巨体をあっという間に覆い隠してしまう。


「ハァ、ハァ……どうだ!」

「さ、流石ハーガ様です!」「すごい……」「これなら……」


 取り巻きが反射的におべっかを使う中、ハーガも会心の手応えを感じていたのだが……


 そもそも風魔法は、広範囲の攻撃や敵を吸い込む、といった大多数の敵に対して特に強力な魔法である。対して、強力な一個体を相手にする際はあまり有効ではない。つまり───


「グオオオオォォォオオオ!!」


 雄叫びによって砂煙が吹き飛ばされ、視界が晴れたそこには、所々裂傷はあるもののほとんどダメージを受けていないゴブリンジェネラルがそこにいた。


「あ、あぁ……」


 誰も、動けない。魔物の目がそんな彼らを視認し、一番手近な者に視線を固定する。そして、


──ゴシャッ


 振り抜かれた得物、地面を揺らす程の衝撃、そしてナニかが潰され撒き散らされた赤い液体。壁役として(といっても賑やかしが主な仕事だった為にレベルは高くない)が原型すら止めずに地面のシミになった。

 



「う、うわあああぁぁぁ!」


 全員が錯乱し我先にと逃げ出す。そんな彼らを楽しくいたぶれそうだと嗤いながら追いかけるゴブリンジェネラル。


 まず同じく鎧を着ていた為に足の遅くなった盾役がやられた。次に、荷物を持っていた為に遅くなった荷物持ち達がやられた。

 恐怖に駆られながらハーガは逃げる。

 自分の部下が手を伸ばし、助けを求めるのを無視し、自分が助かる為に。

 彼は気付かない。

 自分を見つめるゴブリンジェネラルが、わざと彼を逃がしたことを。

 より多くの餌を得るために、自分が利用されているのだと────。



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