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「ルイーズ様のドレス、瞳の色とお揃いでとてもお似合いですわ!リボンはビロードですのね!ドレスより少し濃い色ですけれど、ルイーズ様のブロンドの髪に合っていてすごく素敵!!今日のドレスは自分で選んだんですの?いつもはどのようなドレスが多いのかしら?ルイーズ様の髪と目のお色なら、どんなドレスも似合いそうだわ!!」

「え、えぇと……」


目の前には、興奮した様子でまくし立てる黒髪の美少女。薔薇園に到着するなり繰り出されたカミーユの質問攻撃にたじろいでいると、アランが苦笑を浮かべなから助け舟を出してくれた。


「カミーユ、そんなに一度に質問したらルイーズ嬢が答えにくいだろう?ルイーズ嬢のことが気に入ったのは分かるけど、彼女は逃げて行くわけじゃないんだから、もう少し落ち着いたらどうだい」

「ま、まぁ…それもそうですわね…」


少しバツが悪そうに口ごもるカミーユ。やっぱりこういう表情をすると可愛いなぁ、なんて思いながらルイーズはフォローしてくれたアランにお礼を言った。


「アラン様、私が答えやすいように助けてくださってありがとうございます」

「いや、礼には及ばないよ。レディが困っていたら助けるのは当然だし、そもそも妹が失礼を働いているのがいけないのだからね」

「お兄様、失礼だなんて!」


プリプリと怒る妹に「まぁまぁ、言葉のあやというやつだよ」なんてウィンクしているアランがイケメンすぎる…。前の世界だとどう見てもまだ小学生だよね?ホント末恐ろしいわ… しかも公爵家嫡男とかどんだけ……。


心の中で白目になってしまったルイーズの両手を、カミーユ様がしっかりと握った。


「それで、先ほどの答えはどうですの、ルイーズ様?」

「あ、はい…ドレス選びのことですよね。…私は普段は動きやすい服装のものが多いです。色は…あまり派手な色は好きではないので、クリーム色とか水色が多いですね。ドレスはいつも母と一緒に選んでいます」

「そうなんですのね!では、今日のドレスのお色は珍しいのかしら?」

「はい。今日は初めてのお茶会なので、普段選ばない色にしようと母が」


今日のルイーズのドレスは、瞳の色に合わせたブルー。髪は2つに分けてハーフアップにして、両サイドを濃紺のリボンで結んでいる。髪の色が薄いので、濃い色の方が映えるだろうという母の意見だった。


「わたくしの今日のドレスはどうかしら?ルイーズ様の意見が聞きたいわ!」


期待いっぱいの眼差しで答えを待つカミーユに、どう答えたものかと思案する。今日の彼女のドレスは、薄いベビーピンクとコーラルピンクのグラデーション。ドレス自体はとても可愛いのだが、いかんせん黒髪と瞳の緑色に合っていない。


おべっかを使うことはいくらでもできるけど、それはせっかく友達になりたいと言ってくれた彼女に失礼な気がした。


「そうですね…カミーユ様の今日のドレスはとても可愛らしいと思います。ただ、髪と瞳の色がはっきりしていらっしゃるので、同じピンクでももっと濃い色の方がお似合いだと思います。あとは、赤や瞳の色と同じエメラルドグリーンなどもいいと思います」

「……そうなのね。どのメイドも似合うと言うからこれにしたのだけれど……」


身分の高い令嬢あるあるだな、と思ってしまった。逆らうと何があるか分からないから、皆イエスマンになってしまう、という例のアレだ。ショックを受けているカミーユにルイーズが何と言おうか考えていると、アランが取りなすように声をかけた。


「カミーユ、いいことを聞いたじゃないか。今度ドレスを選ぶときはそういった色を選んでみたらどうだい?」

「…えぇ、そうしてみますわ」


(すかさずフォローを入れるアラン様、女性への対応もバッチリですね!)


「すみません…失礼だとは思ったのですが、多分メイド達はご主人であるカミーユ様に意見できないと思いましたので…」

「そうですわね…ルイーズ様、ありがとうございます!」

「いえ、とんでもありません」


カミーユは見た目はキツそうだけれど、きちんと他人の意見を聞くことができるいい子だと思う。知らず笑みを浮かべていたルイーズに、アランが微笑んだ。


「ルイーズ嬢、妹に正直な意見を言ってくれてありがとう。……君のドレス、僕もとてもよく似合っていると思うよ」


優しげに細められたグレーの瞳で見つめられて、ドギマギしてしまう。前世ではもう少し大人だったはずなのに、転生してからずっと子供だから精神年齢もひっぱられているのだろうか?


「…ありがとうございます」


小学生相手になんだか悔しくてなるべく優雅に見えるように笑みを浮かべると、おや、という表情で目を眇められ、さらに笑みを深められてしまった。


(……もしかして対応間違えた!?)


内心慌てているルイーズに気づいているのかいないのか、アランはさりげなく話題を変えてきた。


「ところで、ルイーズ嬢とジャック殿はおいくつなのかな?見たところカミーユ達と近いように思うのだけれど」

「私はもうすぐ8歳、弟は7歳になります」


ルイーズ達姉弟は2人とも夏生まれなので、あと少しで誕生日を迎える。ルイーズの答えを聞いて、カミーユが少し残念そうな顔をした。


「ルイーズ様はわたくしより1つ歳上なのですね。学園では同級生かと思っておりましたのに…」

「カミーユ様はジャックと同い年なのですね」

「そのようですわね」

「…でも、2年間はご一緒できますわ」

「そうだね。ジャック殿とジョアンが同学年なら心強いじゃないか、カミーユ」

「えぇ、それはそうですけれど…」


近くのベンチに座って話に花を咲かせているジャックとジョアンをチラリと見ながらも、まだどこか不満げなカミーユ。その姿に苦笑しつつ、アランがルイーズに微笑んだ。


「僕はルイーズ嬢より2つ上だから、1年間は学園で一緒になるね」

「そうなのですね。よろしくお願いします」

「こちらこそ。今から楽しみだな」


ニコニコしているアラン様を見ながらルイーズは考える。どうして公爵家の兄妹にこんなに気に入られたんだろう?


公爵と伯爵では身分に差があることは、謙遜ではなく事実だ。友人を選ぶ場合、常識的に考えてあまり身分に差がない方がいい。公爵家と伯爵家の令嬢が友人同士だなんて、他の貴族からはさぞかし不自然に見えることだろう。


ロッシュブール公爵が反対していなかったとはいえ、もしこの先友人づきあいを続けさせてもらうのならば、初めにはっきりさせておいた方がいい気がした。


「あの、カミーユ様…1つお聞きしてもいいでしょうか?」

「えぇ、何かしら?」


コテンと小首を傾げる美少女。本当に可愛いなぁ。


年下の女の子とはいえ、相手は公爵令嬢。失礼な言い方にならないよう慎重に尋ねる。


「…カミーユ様は私のことを前からご存知でしたか?」

「いえ、知りませんでしたわ」

「そうですか…。では、どうして初めて会った、しかも身分の低い伯爵家の私と友達になりたいと思われたのですか?」


うーん、そうね…とカミーユは顎の下に手を当てて首を捻った。アランは興味深そうに妹達の会話を聞いている。数秒ののち、カミーユが何かを思いついたようにパン!と両手を合わせた。


「───勘、ですわ!」

「え?」


(まさかの第六感発言ですか?)


フフンと得意げに腰に手を当てているカミーユに、思わずルイーズは聞き返してしまった。


「カミーユ……それではさすがに分からないんじゃないかな?」

「そうですか?…うーん……」


苦笑いのアランに首を傾げつつも、カミーユは自分の言葉で説明しようと再び口を開いた。


「…わたくしルイーズ様を初めて見たときに、何て素敵な瞳の色だと思いました。髪もとても綺麗で…いわゆる"ひとめぼれ"というやつですわ!ぜひお話ししてみたいと思ったのですがお兄様達に止められて…困っていると、お父様にレーヌ伯爵のご息女なら大丈夫だろうとお許しをいただいたのです」

「そうだったのですね…」


自分ではありふれた色だと思っていた瞳の色を褒められて、なんとも複雑な気分になる。「それに…」とカミーユが続けた。


「少し前に、歳が近い令嬢がいるからとお兄様達と一緒にオルセー侯爵家のお茶会に行ったのです。侯爵令嬢の他にもご友人が2人ほどいらっしゃったのですが、皆さんわたくしよりもお兄様やジョアンとばかりお話ししたがって……たまにわたくしに話しかけてきても、わたくしの家のことやお兄様達のことばかり聞いてくるのですわ。……でもルイーズ様はちっともそんなことなかった。ちゃんとわたくしとお話ししてくださって……。わたくしとても嬉しかったのです!!」

「カミーユ様……」


公爵家はこの国にそもそも3つしかなく、さっき謁見室に向かう家族を見ていた限りではロッシュブール家以外には歳が近い子供がいる家はなかったように思う。すなわち、ルイーズ達くらいの年齢の子供の中では、王家を除いてはこの兄妹が1番位が高いのだ。


しかも美形の兄弟に囲まれているときたら…カミーユと純粋に友達になりたくて近づく令嬢はなかなかいないのかもしれない。少し考えただけでもカミーユの孤独感が想像できてしまい、ルイーズは一瞬言葉を失った。


それでも、自分を選んでくれたことは単純に嬉しいと思えた。そのことをちゃんと伝えなくては。


「……カミーユ様、理由を教えてくださってありがとうございます。私と友達になりたいと思ってくださってとても嬉しいです。私などでよければ、これからも仲良くしていただけますか?」

「えぇ…もちろん!ありがとう、ルイーズ様!!」


ルイーズの両手を取って本当に嬉しそうに笑うカミーユを見て、ルイーズも嬉しくなった。


「お手紙を書いてもいいかしら?」

「えぇ、もちろん!」

「よかったら我が家にも遊びに来て欲しいわ!」

「はい、父がいいと言えば」

「お父様に頼んでみるわ!」


キャッキャと盛り上がるルイーズ達に、アランが声をかけた。


「よかったね、カミーユ。…せっかくだから、同級生になるジャック殿とも話をしてきたらどうだい?ジョアンとはすっかり打ち解けたみたいだし、見たところ穏やかな少年みたいだけど。どうかな、ルイーズ嬢?」

「はい、そうですね。ジャックは姉の私から見ても明るくて話しやすいと思います」

「うん、やっぱり。…僕はこれからルイーズ嬢と少し薔薇園を歩いて来るから、行っておいでカミーユ」

「…分かりましたわ、お兄様」


口調は柔らかいのに有無を言わさない様子のアランにカミーユが頷いた。……なんだか一瞬黒いものが見えたような…?


「またここに戻って来るから、それまで3人でいるんだよ。…では行こうか、ルイーズ嬢?」

「…はい」


さすがに二度目は手を取らないわけにはいかない。すっと差し出された手にルイーズが恐る恐る手を添えると、アランは満足げに微笑んでゆっくり歩き始めた。


お読み下さりありがとうございます。

次回でお茶会終了の予定…多分…

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