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65話 「ラカ・クヌ・ナク集団の戦い」③

20160425公開

 とんでもない量の情報が私の意識をかき乱す。

 ラカのようなリーダーが居ない限り、1つの群れと言っても、実は1頭1頭微妙にベクトルが違うし、速度も違う。

 例えば、今、正面左の群れの一番後ろを走っている大きな恐竜もどきは前の仲間に接近し過ぎて、慌てて速度を落とそうと足を突っぱねている。それに衝突を避けようとして右足に重心を移していた。当然だけど追随しようとしても加速するまでにタイムラグが発生して、ベクトルを揃える為に更にシンクロがずれる。

 その影響は後続の群れにも及ぶ。

 そして私はその隙に付け込む。


≪3拍後、今度は左に戻して≫





≪落伍した味方はどれくらいだ!?!≫

≪コチラノムレニハイナイ。ウシロデ『ワカイノ』ガ3、『チイサイノ』ガ57、ハンノウナイ≫

≪もう1回行けるな? もう1度、突っ込むぞ≫

≪ワカッタ≫


 俺は更に戦果を増やすべく、反転を千恵ちゃんに伝えた。


≪孤立した集団にもう1度突っ込む! 進路は任せる≫

≪りょーかい、てんちょーさん! ラカ、左回り300、3、2、1、今≫


 何度か練習をしたとはいえ、実戦では初めての群れ単位の集団機動で不安も有ったが、『敵獣』たちは上手く連動して『鋒矢ほうしの陣形』を保ったまま半径300㍍の回頭をこなしてくれている。

 その途中で矢柄の部分に当たる後方の『害獣』の戦列を確認する。

 『ラカ・クヌ・ナク』が報告して来た数よりも被害は大きい。

 ざっと見た所、落伍した数以外でも1割は傷んでいる。

 やはり、もう1度の突入が限界と思っていた方が良さそうだった。

 しかし、ヘルメットも被らずにこの速度で乗馬をしていると、汗ばんだ顔に当たる風が気持ちいい。

 愛馬とも言える『益獣ポニー』だが、臆病過ぎるという理由で軍馬になれなかったから『ラカ・クヌ・ナク』に怯えるかと思ったら、意外な事にすぐに受け入れてくれた。最初に逢った『敵獣』が『敵獣ドッグ』の『ラカ・クヌ・ナク』だったのが良かったのだろう。その後に次々とやって来る『害獣』や『敵獣』に怯える事も無かった。

 そして、気が付けば、周り中を『敵獣』で固められている中で走っているこの状況だ。

 それなのに、いつもと同じように駆けてくれている。

 そろそろ、名前を付けて上げてもいいかも知れない。

 まあ、これまで名前を付けなかったのは、付けた途端に死んでしまう様な気がしていたからだが・・・

 これが俗に言う『フラグ』ってヤツだっけ?

 


≪旋回止め、直進、5、4、3、2、1、今! 速度増し、速駆け足、今!≫


 視線を左前方に向ける。視線の先330㍍ほどにはさっきまで戦っていた『害獣』の集団が居る。

 俺たちが喰い破った後ろ1/3の集団は、襲撃を受けた事で大幅に落ちた速度を取り戻して前方の集団に追い付こうとして速度を上げた様だが、こっちの方が速い。

 それと、さっきまでと違って、バラけて来ている。群れを形成する数も10頭未満の群れが目立つ。

 増速に付いて行けない群れも発生していた。


≪速度増し、速速駆け足、今!≫


 千恵ちゃんは群れの速度を更に上乗せした。

 現在の速度は『害獣』が持続して出せる速度の限界の一歩手前の時速30㌔を超えたあたりだ。

 俺はもう一度後ろを見た。『敵獣』の集団の後ろに見える『害獣』全頭がちゃんと付いて来ている。

 少なくとも足回りを痛めている『害獣』は居ない様だ。


≪速度増し、戦速駆け足、今!≫


 千恵ちゃんは突入前に更に前方に出る事でぶつかる角度を大きくする為に更に加速した。  

 俺たちによって分断されていた『害獣』の集団は、速度を落とした先行する集団に合流というか、追い付いたものの、数を減らした事で密集隊形を取れなくなっている。はっきりと言って間延びした隊列にしかなっていない。

 言い換えると、突入する隙間が沢山有るという事だ。

 速度が時速43㌔を超えた辺りで、遂に再突入の命令が出た。


≪左回り250、5、4、3、2、1、今≫


 旋回半径を小さくして直進の区間を作って、最後の加速をするのだろう。

 女子中学生とは思えない指揮ぶりだ。 


 千恵ちゃんは、俺が知る、地球に居た頃とは全くの別人になっていた・・・

お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m



 新たにブックマークをして頂いた方には、執筆意欲を増やして頂いた事に感謝を m(_ _)m

 また以前にブックマーク並びに評価をして頂いた方には、これまで支えてくれた事に感謝を m(_ _)m

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