64話 「ラカ・クヌ・ナク集団の戦い」②
20160424公開
≪みんな、準備はいいか?≫
≪行けます≫
織田店長の呼び掛けにちゃんと答えられた事は、私にとっては成長の証しだ。
これから始まるのは命を掛けた戦いだ。
多分、私は同世代の子よりも過酷な経験をしている。
しかもここまで『死』を覗く様な経験をする子は居ないだろう。
もっとも、チエッチは私の更に上を行く・・・・・
≪千恵ちゃん、タイミングは任せる≫
≪りょーかいです、てんちょーさん・・・・・ 5,4,3,2,1,今です≫
いつの間にかチエッチはこの集団で不動の地位を築いていた・・・
≪2拍後、ちょい進路を右に振って≫
≪ワカッタ≫
≪3拍後、今度は左に戻して≫
≪ワカッタ≫
俺と石井青年は、千恵ちゃんが『ラカ・クヌ・ナク』に指示する進路を参考に、騎乗する『益獣』に進路を足で叩いて指示しながら(これは『西の国』の騎兵では当たり前のテクニックだったので2人の『益獣』も躾けられていた)、列の真ん中付近にいる『巨大害獣』を片っ端からハチキュウで射撃していた。
もちろん、揺れる馬上(便宜的にそう言っている)故に命中率は低い。1回引金を引くと3発の連射をする3点制限点射を選択しているが、3回に2回は外れている。
だが、それでも効果は出始めていた。
ヤツラにしたら未知の集団が横から突進して来ている状況だから警戒心が最大になっている。
実際に目に入る全ての『巨大害獣』がこちらに上の目を向けていた。
そこに、いきなり初めて経験する痛みが襲うのだ。
自分が攻撃されている事も、その攻撃をして来ているのが俺たちだという事は何となく分かるが、手段が分からない為に混乱するなというのが無理な相談だ。
徐々に俺たちの射撃を受けなかった個体と受けた個体の連携が乱れて来た。
≪あとは加速しながら真っ直ぐ! てんちょー、このままぶつかります!≫
≪全員、しっかり掴まっていろ!≫
返事は同時に来た。
密集した2列で前縁を形成する『大型敵獣』の戦列がヤツラの列の横ッ腹にぶつかった。
1番外側を走っていた『大型害獣』の群れの隙間に先頭の『大型敵獣』が頭を下げた格好で強引に鼻面を突っ込んだ様に見えた一瞬後に右手を振って最初の犠牲者を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた『大型害獣』は隣のヤツにぶつかったが2頭ともすぐに見えなくなった。
同じ様な光景が前縁部全域で起こっている。
揺れる馬上から見てると、味方の『敵獣』が密集する事で作る“肉体の絨毯”がところどころ盛り上がっていて、その盛り上がりが前から後方に流れて行く。“よく足を取られずに乗り越えるもんだ”とどこかで思いながら意識を『巨大害獣』の集団に戻すと、今では全頭が顔をこちらに向けていた。
≪士長、連射に切り替える! 弾種は炎弾!≫
≪了解!≫
この勢いを維持出来るなら『巨大害獣』の集団に接触するまで20秒ほどだ。それまでに可能な限り削る。消費されるピコマシンは2.5倍になるが、進路上の『巨大害獣』を排除する事を優先する。
炎弾の連射で、『巨大害獣』の集団に接触するまでの間に2/3を無力化出来た。
≪でかいのが来るよ! ラカ! みんなに気合を入れて!≫
≪ラカ?≫
≪ラカって先駆者って意味でしょ! 長いの、あんたの名前は!≫
≪ワカッタ≫
残った1/3は連携が取れない為に個々の力で立ちふさがったが、俺たちの集団の前縁部の勢いに対抗出来ずに、それまでの『大型害獣』と同様の運命を辿った。
多少勢いが落ちたものの、『巨大害獣』の集団を突破した俺たちは再度勢いを増して、一気に突き抜けた。
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