53話 「ラカ・クヌ・ナク」
20160412公開
なに、あれ?
人間って、あんなに速く動けるの?
チエッチが好きだと言っている織田店長の戦いは一方的なものだった。
私たちが炎弾を当ててもけろりとしている化け物を、いたぶるかのようにライフルに付いている剣で突っつき回している。
店長自身は1度も攻撃を受けていない。
半年前の戦いを見たから、確かに強い事は知っているけど、ここまで強かったっけ?
で、今はなんか『敵獣』と睨み合っている。
横でチエッチがなんか怖い事を言っていたけど、化け物がいきなりお辞儀をする様に首を降ろしたのでみんなも言葉を止めた。
≪どういう事だ? 種類は? 具体的な数は?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。最初に『益獣』の亜種が3種類、計1万頭強が3日前に上陸。『害獣』の亜種が2種類、計2千頭強が昨日上陸しました≫
≪理由は分かるか?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。正確な理由は不明。ただし、この島に『益獣』と『害獣』が存在していた事から、以前にも起こった現象の可能性は高いと推測≫
まあ、化石発掘なんてしていないから、詳しい事は分からないだろう。
第一、人類の入植地候補地を探査した時に、土着生物が居ない地を探したが皆無だった為に次善の場所としてガラパゴス諸島の様なこの島が選ばれていた。
島嶼化によって他の生息地よりも身体が小さくなっている『害獣』との摩擦が最少で、尚且つ新規に他の土地からやって来る可能性が低いという前提だったが、残念ながら想定が崩れたという事だ。
それよりも、この情報がどの様な意味を持つのかが問題だ。
≪『害獣』の亜種の情報は教えてくれるのか?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。『敵獣』相当の体長を持つ亜種が1500頭弱、『敵獣』の2倍の体長を持つ亜種が500頭強です≫
1500頭と500頭?
過去最大と思われる目の前の『敵獣』でさえ体長が6㍍ほどだ。
それよりも更に大きい体長8㍍級が500頭?
≪現在はどんな行動を取っているんだ?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。2つの集団はほぼ半分ずつに分かれて、東西から内陸部に向けて移動中です。『害獣』は途中で出遭う『益獣』と『害獣』を捕食し、『敵獣』にさえもしばしば襲い掛かっています≫
≪『敵獣』は対抗出来ているのか?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。同サイズ相手には有利ですが、大きいサイズには2倍の体格差は埋められずに捕食されています≫
≪『西の国』及び『中の国』に接触するまでの時間は?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。『益獣』の集団が3日後、『害獣』の集団が4日後と推測しています≫
≪急ぎ、3国のトップに伝えろ。知らなければ下手すれば真剣に人類が滅びるぞ≫
≪採集サンプルMale-3の要請を確認。実行します・・・ 実行しました。3国ともに対策会議の開催を求めています≫
≪ナジド王を議長にして至急『中の国』で開催させろ。どっちにしろ俺は間に合わん≫
≪採集サンプルMale-3の要請を確認。伝達終了。ところで目の前の彼女が意思疎通を希望しています。如何しますか?≫
思わず、目の前の『敵獣』を見た。
雌だったのか? 雄雌の区別なんて全然つかない。
≪分かった。一旦、停戦を結ぶ≫
≪採集サンプルMale-3の提案を確認。伝達終了。承諾するとの事です≫
返事はすぐに来た。
それと同時に『敵獣』が首を下げた。
≪今の仕草は意味が有るのか? 人間と同じ意味合いが有るか?という意味だが。それとそれ以外にも意味が有るのかも知りたい≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。 ・・・同じ意味合いです。また、今の角度は群れの中では同じ立場に居る者への返答との事です≫
≪なるほど。固有名は有るのか?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。 ・・・人間の発音では再現が難しいですが一番近い言葉を填めると『ラカ・クヌ・ナク』、意味合い的には指導する先駆者となります≫
やはり目の前の『敵獣』は特別なのだろう。
≪もしかして「始祖」なのか?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。 ・・・彼女が知る限り先に『敵獣』になった『害獣』が居た様ですが、どうやら死んだようです≫
≪そうか。お互いの呼び名を決めよう。俺はノブナガでいい≫
≪採集サンプルMale-3の提案を確認。 ・・・彼女はフルネームを希望しています≫
≪漂着した『益獣』と『害獣』の情報を伝える事は可能か? 可能なら伝えてくれ≫
≪採集サンプルMale-3の要請を確認。可能です。 ・・・・・伝達終了。急いで仲間の許に戻ると言っています≫
≪教えてくれるならどれだけの数が残っているかを聞いてくれ≫
≪採集サンプルMale-3の要請を確認。 ・・・・・今回の戦いで失った数の倍との事です≫
2000頭の半分としても1000頭。馬鹿でかい『害獣』が250頭か。
対する『ラカ・クヌ・ナク』が率いるのが『害獣』が1000頭に『敵獣』が100頭と言ったところか。
強引に数値化する。この島の『害獣』を1として『敵獣』は20とする。漂着した『敵獣』サイズの『害獣』は体重と比例するとして8といったところか・・・ 巨大『害獣』も体重を基にすれば64。
更に強引に合計すれば、『ラカ・クヌ・ナク』陣営が1000+2000で3000。
対する侵攻側は8000+16000で24000。
戦力比8倍をひっくり返すのは通常では無理だ。
ただし、『ラカ・クヌ・ナク』は野生の『害獣』とは比較にならない指揮能力を持っている。
ゲリラ戦と各個撃破に徹すれば、かなりの時間を稼げそうな気もする。
だが、勝てるか?と言えば無理だろう。
俺は『ラカ・クヌ・ナク』の表情を見た。
ヤツもこちらをじっと見ていた・・・・・・・
お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m
*このまま「戦記」ジャンルで行くのが良いのか、それとも「ファンタジー」か「SF」ジャンルに替えるのが良いのか、悩んでいます・・・・・




