寧々
いっつも病院で一人。
お母さんもお父さんも来てくれる。だけれどお友達は、段々来るのが減って来た。
「お母さん、私も恋愛、したいよ。」
病室のベッドから、窓の向こうのお空を見上げて呟いた。
そしたらお母さん、泣いちゃった。泣かせてばかりでごめんなさい。
幸せ笑顔。本当はその表情をさせてあげたいのにな。
「これで恋愛してみない?」
ある日お母さんがゲームを買って来てくれた。
『恋は音楽と共に』。お母さんが言うには、ネットで『恋歌』って呼ばれてるんだって。
私は毎日、そのゲームで遊んだ。いろんな男の子との恋愛。擬似恋愛だけど、まるで自分が動いて、恋愛してるみたいで、楽しい。
クリアしたら、お母さんが二作目だよって、同じ学園を舞台にしたゲームをまた買って来てくれた。
"リベンジ"だって。二作目って意味かな?ってお母さんに聞いたら、そうかもねって、お母さんが笑ってくれた。
リベンジで、私は天野勇に出会った。元気いっぱいの男の子。
照れ屋さんで、笑顔が素敵な人。こんな人と恋愛出来たらなぁって、私は天野勇のお話を何回もプレイした。彼の幸せ笑顔は、私を幸せにしてくれるんだ。
だけどね、ゆるゆる弱ってた私の身体に、終わりがやって来た。
「生まれ変われたら…健康な身体で、恋だって、出来たらいいね。」
泣きながら笑ったお母さん。
私が笑顔を好きって知ってるから、笑ってくれた。
最後に見たのは、大好きな両親の、泣き笑いの顔。
お母さんが願ってくれた生まれ変わり、本当に起こった。
しかも私は、天野勇と同じ名前の男の子とお隣さん。顔も天野勇に似てて、かっこ良くて面倒見が良い、笑顔が素敵な人。
「寧々、また転ぶぞ!」
「大丈夫だよー!あいたっ」
派手に転んだ私に駆け寄ってくれるゆうくんは呆れ顔。
抱き起こされて、服のホコリを払われた。
「まったく。寧々も高校生になんだから、もっとしっかりしろよ?」
「気を付ける!」
えへへって笑ったら、しょうがないなって顔でゆうくんは笑ってくれる。ゆうくんのこの笑顔、大好き。
高校は、私はゆうくんといたくて同んなじ所に決めた。なんとなく、聞き覚えのある学校の名前だったのは、なんでだろ?
その謎は、入学式の日に解けた。
入学式の日は、朝からもやもや変な感じ。
私が着た制服、知ってる。
制服姿のゆうくんも、見た事ある。
学校行ったら、思い出した。
ゲームだ!『恋歌』だって!
大変!ゆうくんはこの学校で幸せになるんだ!ゆうくんの幸せ笑顔の為に、お手伝いしなくちゃって思った。
でも結局ゆうくんは、ヒロインと恋、しなかった。
「寧々。」
今のゆうくんは、私をとろんて甘い顔で見つめてくるの。
「キスして良い?」
キスする時、いつも聞かれる。
何回しても、ドキドキ苦しい。
恥ずかしくて、いいよって声は出せなくて、こくんて頷いて返事をする。
そしたらゆうくんの顔が近付いて来て、彼の唇が私に触れる。
少しカサカサしたゆうくんの唇。だけどあったかくて、柔らかい。
照れ屋のゆうくんは、少し触れるキスで真っ赤。
私も真っ赤。
お互いの真っ赤な顔を二人で笑う。
前世で憧れてた彼。
今は目の前にいて、触れられる。
恋人になったゆうくんは、毎日私を幸せ笑顔にしてくれて、ゆうくんも幸せそうに、笑ってくれるんだ。