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1話 部活紹介ができない。

 高校生の新学期といえば、何を差し置いても彼らが気にするのはクラス替えだ。これを確認しない事には、どの部屋に登校するかも定まらない。

 男は親友と呼び合える仲になった仲間と、また一緒に一年間過ごせるだろうかと期待に胸を膨らます。

 はたまた意中の彼と離れ離れになるかもしれない、と危惧する女子もたくさんいるだろう……もしかしたら新たな出会いを期待して……


「フェードイン、終わったか?」


 どうでもいいけどフェードインって言葉、フェードアウトに比べてあんまりメジャーじゃないよね。


「本当にどうでもいいな……」


 始業式、クラス替え、部活紹介などなど、新学期にはいろんな『入り』があるけど、どうしようか?


「部活紹介以外終わってるが……」


 じゃあ人類がイナゴの佃煮を初めて作った歴史的瞬間から始めるわ。


「部活紹介しろよ……ってか佃煮関係ねーじゃん!」

「あの……その、だな、佐渡。今ホームルームなんで少しだけ静かにしてれないか?」


 新担任にそういわれて、佐渡帝はようやく我に返った。そして謝る事も恥じる事もなく、頬杖をついて窓の外を眺めだす。


「まぁ……みんな知ってると思うけど、彼はね、佐渡 帝君はイリーガルの影響であんな風に未知の存在と会話するらしいから。みんな気にせず仲良くしてあげてください」


「あいつが例の……」とか「AA+っめちゃくちゃ凄いんでしょう?」なんてガヤガヤする教室の中、当人は黙って桜を眺め続ける。

 佐渡は窓際、一番後ろの席だ。一つ前の備前は知らん顔で前を向いていた。ちなみに恣意的なこの席順は、当たり前だが偶然なんかじゃない。神様特権で細工された結果だ。


「備前、今日の放課後部室だからな」

「分かってるから話しかけないでよ。私まで変な人だと思われるじゃない」

「事実、変な人じゃねぇか……」

「いいから。部室行くから」




 そんなこんなで放課後。四人は(めずらしく時間通りに)ちゃんと集合した。部長がこう切り出す。


「今日の議題は二点。両方とも新入生の勧誘についてだ!」


「どうしたの? 春休み前に新勧の話は終わったんじゃないの?」と和泉が尋ねる。すると今度は周防が、

「それなんだがな、どうやら校長達がくだらん画策をしているらしいんだ」と答える。


「その通り。どうやら俺等の『常識部』に監視役として新入生を送り込むらしい」


 この部の正式名称は『常識と良識を学ぶ会』だった。その意味に似つかわしくない連中が集まったばかりか、実のところ部ですらない。


「そいつの処遇をどうするか話し合おうと思ってる」

「殺せばよくね?」と備前はそっけなく答える。


 周防が「うんうん、そうだそうだ」と言わんばかりに首を縦に振った。


和泉「でも僕たちって現状四人だよね? 年度明けには二年生以下で五人以上にしてほしいって校長先生言ってなかったっけ?」

周防「それが奴らの魂胆なんだろ。こんなとこに好き好んで入部する奴はいない。まあそんな奴がいたら疑ってかかっとけばいいだろ」

備前「廃部にするような事はできないでしょ。私達がバラバラになって一番困るのはむこうなんだから」

部長「まあ、そういうこった……ってなんで俺だけ名字じゃねぇんだ!? つか途中から急に会話形式変えんなよ」


 一同無視。


和泉「僕らが前に話した勧誘対象なんてどうせいないしね。ロボットにアルパカにサイクロプスにドイツ軍人に……」

周防「おい部長、二つ目の議題ってなんなんだ? 俺はそっちの方が嫌な予感がしてるんだが」


部長は気を取り直して「実はその通りなんだ、そしてこの議題に取り組むにはある前提条件がある」と指を組んで真剣な表情で続ける。


部長「色々もったいぶってアレなんだが……とりあえずみんな武器や凶器になりそうなものがあったら、机の上に出してくれないか?」

和泉「なんで?」

部長「二つ目の案件はな。暴動や革命を引き起こすトリガーになり兼ねない、重要な話になると思う。詳しくは話せば分かるはずだが……」


 退屈そうに聞き流していた備前が、スカートのポケットをまさぐった。


備前「早くしなよ、これでいいの?」


 机をスライドして、部長の前に献上されたのはスタンガンらしきシロモノだ。


部長「周防とユッキーも出してくれ」

周防「俺は持ってねーよ」

和泉「僕も……」


 全員の視線がユキに集中する。


部長「あのなユッキー。俺たちもう一年も一緒にいるんだ。隠し事はやめようぜ」

和泉「ななな、なんの事かさっぱり……だお」


 隣にいた備前がここぞとばかりに、すかさず和泉を抱きしめる。


備前「ユキをいじめんなよ! 怯えてカミカミで『だお』とか言ってるじゃんか!」


 いつもなら緩んだ顔で許してしまう部長も、今日だけは真剣な表情を崩さない。


部長「今日の話は冗談じゃすまねぇかもしれねぇんだ。オラを信じて、隠し事は止めてくんねぇか」

和泉「わ、分かったよ……これでいいの?」


 モジモジしながら白旗を上げた和泉の上着のポケットから出てきたのは十徳ナイフだった。

 しかし今日の部長は攻撃の手を緩めない。


部長「もういい、ユッキーはちょっと立て。備前、悪いがユッキーの身体検査をしてくれないか? これは部長命令だ」

備前「え! 部長命令じゃあ仕方ないなあ」


 備前は指をウネウネとくねらせる。


和泉「ちょっと……やめてよ。部長にそんな権限あるなんて聞いた事ないよ……」

部長「女の子同士だ。遠慮する事はないさ」

和泉「いや……僕女の子じゃ……やめてよ」


《しばらくお待ちください》


 出て来たのはズボンから自動式の銃が一丁。ズボンの反対側からサバイバルナイフが一本。リュックから形の違う手榴弾的なモノが2つ。それに……

「サブマシンガンってすごい重たいんだな」


 今、周防が持っている物騒なアイテムもリュックの中から……弾薬、弾倉多数。和泉はあられもない姿になっていた。


和泉「ひどいよ……何もここまで」


 佐貫は全てを回収して、それをいったん和泉のリュックに詰めた。リュックはもう張り裂けそうになっている。


「さて。ユッキーには悪い事をしたが、ここで本題に入らせてもらおう。何を隠そう、先日集めた新歓費用についてだ」


 新歓費用とは新入生の歓迎コンパやイベント、部活動紹介で使用するお金の事だ。事前に部員から一万ずつ、さらに部費から4万、計8万円を集めていた。


「アレな。無くした」

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