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月光に照らされて




ギッ.......ギッ......

寝静まった夜中に、旅館の渡り廊下を歩いていると、床が鳴る音が響いた。

輝さんも私も無言で喋らなかった。

ただ手を繋いで、歩いていた。

すると、灯りが先に見えて目的の女子トイレの前にやって来て、私はそのまま通りすぎた。



「あ、あの!おひいさん!お手洗いを通りすぎましたが!?」



小声で、輝さんが驚きの声を上げる。



「輝さん行きたかった?」



「い、いえ。口実でしたか.......」



「期待してる?」



「そ、そんな事は......はい」



否定しながらも、最後はモゴモゴとなる輝さん。

可愛いなあ.......。

私よりも、ずっと背が高くて美人な輝さんだけど、今は無性に可愛らしく感じた。

輝さんが、繋ぐ手に力が少し入ったので、私も握り返した。


渡り廊下を少し歩くと、中庭にたどり着いた。

私は歩く足を止めて中庭に出る。



「綺麗なお月様ですわね」



月光が輝さんの顔を照らしていた。

綺麗だなあ......。

と、心底見惚れてしまっている私だった。

可愛らしいと思ったり、綺麗だと思ったり、いやもう輝さんの幅が広いんだよな!



「おひいさん。月の光りに照らされて、優美ですわ」



にっこり微笑まれてしまった。



「まったく同じ事考えていたんだけどなあ.......」



「あら、嬉しい」



輝さんなら、こういう称賛は受けなれているだろうから、余り表情を崩さない。



「そんな事ありませんわよ?おひいさんからのお言葉は、一番誰よりも響きますわ」



「ほんとに?」



「ええ、おひいさん。あ、あの、手を離してもらってもよろしいでしょうか?」



輝さんの言葉は本当だった。

握った手のひらは熱くなり、手汗もかいていた。

私は、手を離さない。



「だーめ♪」



輝さんの手のひらに、顔を近付ける私。

輝さんは予期したのか、表情が崩れた。



「だ、駄目.......ん!」



手のひらに舌を這わせると、輝さんがビクリ!

と体を震わせた。



「ん。しょっぱい」



「おひいさん、意地悪ですわ......」



輝さんの細い瞳が潤んでいた。

その瞳を見ると、私はゾクゾクした。

いとおしい.......。

輝さんがそのまぶたを閉じる。

私は、輝さんの頬に手をやり顎を固定する。

私の心臓の音が速まり、ドキン、ドキンと胸が鳴る。



「誰ですか?そこにいるのは?」




ぴょいっ!

と、距離を一気に離す私。

すっごい反射神経を見せる。



「い、いや~お手洗いはどこですかね?先生!」



「貴女達、お月見もよろしいですが、いい加減なさい。お手洗いなら行き過ぎです」



「そ、そーですか!ありがとうございます先生!おやすみなさい!」



「はい、おやすみなさい」




輝さんの手を引いて、その場を離れる私。

めっちゃ、ドキドキした!

あっぶなー!

なんで、あのタイミングで女史来るかなー!?

ありえんのですよ!

ふと、後ろの輝さんを見ると、ムー!

と、頬がふくれていた。



「そんな顔しないで輝さん......私も、やるせないのは同じだから......」



なるほど......。

お預けを食らうのは、こんな感じなのか.....。

先程までの胸の高まりが変化して、無性にムラムラしてくる。

このまま、寝ろってか?

寝れるハズねーよ!!


遠くから、犬の遠吠えが聞こえた──





続く












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